日本李登輝友の会メールマガジン「日台共栄」より転載
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1>> 【地図帳問題】 東京書籍が中学校社会科地図帳の表記を訂正!
先般5月末、本会会員の方から、中学校教科書検定年の平成17年に、台湾の玉山(新高
山)の標高の表記について、帝国書院と東京書籍に対し、台湾政府の見解と最新の測量結
果などを考慮して、これまでの「3997m」から「3952m」と改めて欲しいと要望、帝国書
院はこの要望を受け入れ、平成17年検定済から「ユー山 3952」と改めましたが、東京書
籍は昨年の検定でも応じないので訂正を求めて欲しいという依頼を受けました。
また、帝国書院も東京書籍も、出典として国立天文台が編纂している『理科年表』を使
用しているので、国立天文台にも訂正を要望して欲しいと依頼されました。
確認してみますと、帝国書院は平成13年検定済の地図帳では「ユイ山 3997」と表記し
ていましたが、平成17年検定済では「ユー山 3952」と表記し、もちろん、平成23年検定
済でも「ユー山 3952」と表記していました。しかし、東京書籍はいま中学生が使ってい
る平成23年検定済でも「ユイ山 3997」と表記していました。
そこで、最新の『理科年表』(平成24年版)が届いた先週はじめ、本会は柚原正敬事務
局長名で東京書籍と国立天文台にも訂正要望を呈しました。
昨日、東京書籍から「回答」が届き、すでに今年度の高校地図帳の採択用見本本から
「3952m」に改めており、中学校地図帳も来年度の供給本から改めるとのことです。下記
に東京書籍の「回答」をご紹介します。
ただ、昨年7月、その会員の方が改めて東京書籍に要望したところ、東京書籍から届いた
「回答」には「(地図帳編纂については)例えば世界の山のランクなどになりますと、各
国別ではなく同一の出典に基づく必要があり、国立天文台編集の『理科年表』を用いてい
る」とあり、玉山の標高についても『理科年表』に基づいて3997mと表記しているから訂
正できない、という理由が記されていました。
しかし、今回の回答では、訂正する理由として「台湾で発行されている地図や,イギリ
スなど諸外国の地図などを確認・検討した結果,『3952』とすべきであると判断」したと
あります。先の「訂正できない理由」はいったいどうなってしまったのでしょうか。「同
一の出典に基づく必要」はなくなったのでしょうか、なんとも不可解で不透明な「理由」
です。
それはともかく、会員の方の「最初の一歩」に感謝申し上げます。正当な理由を提示す
れば、教科書記述も訂正させられるという「大きな一歩」かと、勇気が沸いてきます。あ
の頑固な東京書籍が教科書記述を訂正したことの意味は小さくありません。これも台湾正
名運動の一つの成果かと思います。
まだ回答の届かない国立天文台には、この東京書籍からの「回答」を送付して改めて訂
正を要望する所存です。
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平成24年6月15日
日本李登輝友の会 御中
東京書籍株式会社
編集局 中学社会編集
ご指摘を頂戴いたしました件につきまして
拝啓
短夜の候,貴会ますます御隆昌にてお慶び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り厚
く御礼申し上げます。また,この度はご指摘を頂戴いたしましてありがとうございます。
ご指摘を頂戴いたしました「ユイ山(玉山)」の標高につきまして,以下の通りお答え
申し上げます。
ご指摘の通り,今年度供給しております,弊社の中学校社会科地図帳では,「ユイ山」
の標高を「3997」と表記しております。
しかしながら,台湾で発行されている地図や,イギリスなど諸外国の地図などを確認・
検討した結果,「3952」とすべきであると判断し,既に,今年度の高等学校の教科書採択
にお使いいただく,高等学校用の地図帳の見本本から,標高を「3952」に改めておりま
す。
中学校社会科地図帳につきましても,来年度から供給いたしますものから,「3997」を
「3952」に改める予定にしております。
以上,簡単ではございますが,ご指摘につきましての回答とさせていただきます。今後
とも弊社地図帳等にご指導,ご鞭捷を賜りますよう,お願い申し上げます。
敬具
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2>>【地図帳問題】国立天文台への『理科年表』玉山の標高表記などを巡る訂正要望
台湾・玉山の標高表記についての本会会員の指摘と依頼に基づき、本会は東京書籍と国
立天文台に「訂正要望」を送付、上述したように、東京書籍からは「朗報」が届きまし
た。
中学校社会科地図帳の出典とする国立天文台が編纂している『理科年表』では「ユイ
シャン(玉山)〔新高山〕 台湾 中国 3997」(586頁「世界のおもな高山(1))」と
あり、これに基づいて地図帳を作成しています。
ここには、2つの大きな誤りがあります。1つは玉山の標高ですが、さらに大きな誤りは
台湾を中国と記していることです。
そこで、本会は6月13日、柚原正敬事務局長名をもって、林正彦・国立天文台長宛に
「『理科年表』における台湾・玉山の標高表記などを巡る訂正要望」を送付しました。国
立天文台からの「回答」はまだ届いていませんが、ここに「要望書」を公開することで、
改めて国立天文台に訂正を求めることと致します。
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『理科年表』における台湾・玉山の標高表記などを巡る訂正要望
前略 失礼します。
私ども日本李登輝友の会は作家の阿川弘之を会長として平成14年に設立、文化交流を主
とした日本と台湾の新しい関係を構築することを目的として活動している民間団体です。
私は設立以来、常務理事と事務局長を兼任する柚原と申します。
さて、国立天文台様が編纂者として丸善出版(株)から刊行されている『理科年表』の中
の記述を訂正していただきたくご連絡いたしました。
実は中学校用社会科地図帳には2種類あり、一つが帝国書院の『中学校社会科地図』、も
う一つが東京書籍の『新しい社会科地図』です。共に平成23年3月30日付で文部科学省の検
定に合格しています。
ところが、日本統治時代に「新高山」と呼ばれた台湾の玉山の標高の表記が異なってい
て、帝国書院は「ユー山 3952」、東京書籍は「ユイ山 3997」と表記しています。同じ
山であるのに、その差が45メートルもあります。
これは、いったいどちらが正しいのでしょうか。中学生が両方の地図帳を使うことはな
いと思いますが、玉山の標高が試験に出題されたら、正解はいずれになるのでしょうか。
そこで本会なりに調べてみましたところ、東京書籍は平成17年検定済、平成13年検定済
の地図帳でも同じく「ユイ山 3997」と表記していました。
一方の帝国書院は、平成17年検定済では「ユー山 3952」と表記し、その前の平成13年
検定済では東京書籍と同じく「ユー山 3997」と表記していました。つまり、帝国書院は
平成17年検定のときに訂正したことが分かりました。
そこで、さらに帝国書院はなぜ訂正したのかを確認したところ、帝国書院は国立天文台
様が編纂した『理科年表』を出典としていたそうですが、「台湾政府の見解と最新の測量
結果であることを考慮いたしまして、弊社地図帳では3952mに変更」していたことが判明
しました。
ちなみに、台湾政府の見解とは、1978年に台湾の聯勤測量署が三角測量によって算出し
た3952m、また最新の測量結果とは、2003年に内政部土地測量局がGPS衛星定位測量法
などを用いて測量した3951.798mを指すとのことです。
観光ガイドブックで定評のある昭文社やJTBも、台湾の観光ガイドブックではその標
高を3952mと表示しています。また、本会の台湾在住会員で玉山に気象台を建設した方に
確認しても、玉山の標高は3952mと答えています。あまり参考にならないかもしれません
が、インターネットのフリー百科事典「ウィキペディア」でも標高は3952mと表示してい
ます。
一方、東京書籍の「3997m」という表示は何を出典にしているかと確認しましたら、帝
国書院と同じ『理科年表』です。
そこで、昨年11月に発行された『理科年表』の最新版(平成24年版)で確認すると、案
の定「ユイ シャン(玉山)〔新高山〕 台湾 中国 3997」(586頁「世界のおもな高山
(1)」)と記述していました。平成17年版以降を確認しても同じ記述です。
しかし、「3997m」という標高は、今から55年も前の1957年、アメリカ遠東陸軍製図局
が計測して公表した数字だそうで、なぜ最新情報を網羅する『理科年表』において、玉山
の標高だけ誤った古い標高を記しているのか理解に苦しみます。また、帝国書院が訂正の
決断を下して平成17年検定済から「ユー山 3952」と改めていることに鑑みても、国立天
文台様が『理科年表』を訂正しないというのは不可思議でなりません。
東京書籍の見解は、地図帳編纂については同一の出典に基づく必要があり、世界の山の
ランクは『理科年表』に基づいているので、玉山の標高についても『理科年表』に基づい
て3997mと表記している、というものです。
しかし、誤った標高を掲載して困るのは次代を担う中学生です。地図帳という教科書
は、最新の研究成果を取り入れて記述することが求められています。
つきましては、国立天文台様編纂の『理科年表』の玉山の標高を、台湾政府の見解と最
新の測量結果に基づいて「3952m」と訂正するよう要望します。
また、『理科年表』では、玉山の所在として「山地名・島名」を「台湾」、「国名」を
「中国」と記しています。しかし、台湾は中国(中華人民共和国)の領土の一部ではあり
ません。これまで一度たりとも中華人民共和国の統治を受けたことはありませんし、この
表記は日本政府の見解にも合致していません。
見方によっては、玉山の標高表記問題より、台湾を中国と表記することの方が問題とも
言えます。
つきましては、日本と国交のない台湾ですので、この7月9日から実施される在留カード
(法務省)や外国人住民票(総務省)に倣い、「国名」欄は「国名・地域名」に改めると
同時に「台湾」と表記し、また「山地名・島名」は「台湾山脈」等と改めていただきます
よう要望いたします。
『理科年表』は大正14(1925)年2月からの刊行だそうで、平成24年版で第85冊にもなる
という長きにわたって刊行されてきたことに改めて敬意を表します。しかし、このような
「誤記」は、老舗『理科年表』の信頼性を揺るがしかねません。ご賢察のうえ訂正いただ
きますようお願いします。
では、ご多忙のことと存じますが、ご返答は書面で、できるだけ速やかにお送りいただ
きますようお願いいたします。 早々