【台湾情勢】台湾六大市長選挙の現段階

【台湾情勢】台湾六大市長選挙の現段階

宮崎正弘の国際ニュース・早読みより転載

 台湾六大市長選挙、国民党が各地で苦戦の様相
   連戦の息子、連勝文(台北市長候補)は不人気、党の集票マシンも迷走中

 11月29日の投票日まで一ヶ月を切った。
台北、新北(もとの台北県)、台中、桃園(今回から政令指定都市)、台南。そして高雄の六大市長選挙は事前の予想に反して、国民党が大苦戦を強いられている様相である。

 第一の理由は馬英九総統の不人気である。
 第二は台北市長候補に代表されるように、大陸との融和をはかる中華思想の体現者、連戦(国民党名誉主席)のあまりに無原則的な妥協路線に多くの国民が反発しており、党内がガタガタ、とても挙党一致体制にはない。
 第三が王金平(国会議長、本省人)と党内の対立が続き、集票マシンが円滑に動かないようである。

 10月24日、台北市内では奇妙なデモが展開された。
「同性愛者同士の結婚を認めよ」と同性愛者、その支持者、そして駐在外国人が加わってデモは65000名に膨れあがったのだ。

野党・民進党は蔡英文・党首も蘇貞昌・元首相も「賛成」を表明していた。
土壇場のデモ前日、与党国民党の台北市長候補の連勝文がフェイスブックで、「賛成。国際的傾向であり、この国際基準に従うべきだろう」とおっとり刀で書き込んだ。デモの盛り上がりに便乗したのだが、翌日、この書き込みが消されていた。
党内の反対勢力が、つよく抗議した結果と見られる。

首都の台北市は外省人が多く退役軍人や公務員が集中して住むため、台北は国民党の鉄票で固められた地盤であるとされてきた。

国民党の集票マシンがつねに機能しているため、いかに連勝文という不人気な二世(彼は連戦国民党名誉主席の息子)でも、当選は堅いと見られてきた。

ところが事前のムードは対立候補無所属の何哲文がかなりの差を付けてリードしていることが事前世論調査で判明している。

何は医者、無所属だが、民進党が支援しており、先月、東京で開催された講演会でも数百人の支持者があつまって気勢を挙げた。
日本に暮らす台湾籍の人々も投票日には帰国して投票する(台湾は不在者投票も、外地での投票もない)。

▼連戦の息子、おもわぬ不人気に焦り

焦る国民党は29日、蒋介石親子の眠る御廟に詣でて、必勝を近く。
連勝文は、桃園県の慈湖にある蒋介石親子の墓地に花輪を捧げ、「軍人恩給の増加(毎月二万元を二万五千元とする)する」などを訴えた。
たまたま慈湖に観光で来ていたツーリストは中国大陸からで、「連勝文、頑張れ」を激励されたそうな。

アメリカン・エンタプライズ研究所(AEI)のミカエル・マズザ研究員の調査では、いまや台湾と香港で「わたしは中国人だ」と認識する国民が激減しており、「香港と台湾が中国の一部だ」という考え方をアナクロニズムと答える(台北タイムズ、10月30日)。

ちなみに台湾での世論調査では「わたしは台湾人」とする回答が60・4%、「中国人であり台湾人である」とするのが32・7%、そして「わたしは中国人だ」と答えたのは僅か3・5%だった。

世界が懼れる中国共産党に真っ正面から戦いを挑んだ香港の学生の、物怖じを知らない世代の出現は、「ひまわり学生運動」として先輩でもある台湾学生に共通した傾向である。

こうした若者等の新しい運動形態が、国民党有利という世論を変えたとみて差し支えないのではないか。


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