台湾、金門島。150平方キロメートルのこの小さな島には、台北の松山空港から中国大陸
に向かって約1時間のフライトで着く。中国・厦門までの距離はわずか10キロメートル。
金門は美しい島である。夜明けは朝霧と共にやってくる。島には石獅爺という魔除けの
像が所々に立ち、高梁畑が広がり、渡り島が羽を休める安息の地。古くからの関南建築の
家屋、南洋で財を築いた華僑たちの館…島人は、豊かな魚介類と郷土料理と高梁酒に酔
う。落日の夕焼けは湖面を赤く染めていく。対岸には蜃気楼のように厦門の夜景が浮かん
でいる。
金門島は戦いの最前線にあった島である。第二次世界大戦後、国共内戦が始まり、敗走
する国民党軍と追撃する共産軍の間で決戦となった。1949年10月の古寧頭戦である。
金門島に3万人の共産軍が押し寄せたが、国民党軍が撃退。以来、国民党軍は10万の兵を
この島に配備する。毛沢東は「台湾解放」を目指し、蒋介石は「大陸反攻」を掲げて対峙
する。1958年8月23日、共産軍は対岸から600門の大砲で金門全域を砲撃。国民党軍も応戦
(823砲戦)。共産軍は数週間にわたって48万発の砲弾を撃ち込んだ。それから1978年末ま
で双方の軍は宣伝弾を撃ち合っていた。
金門でこの砲弾を材料に包丁を作る職人がいる。呉増棟さん(56歳)。3代目にあたる。
呉さんの祖父の代には厦門で農具や漁具を作り、父が金門で販売していた。父の代になる
と金門に移住。そして父が島にある砲弾を使って包丁づくりをはじめた。呉さんの少年時
代の記憶は戦時体制と重なる。
金門は1992年まで軍事管制が敷かれ、島民の生活は戦時体制として大幅に制限、要所に
は地下坑道が作られた。呉さんの今日までの人生は、金門の苦難の歴史と重なる。
そして今、「砲弾は僕にとって空からの贈り物だ」と語る呉さん。大陸から船で30分な
ので、現在は、台湾人だけでなく大陸からも大勢の中国人観光客が訪れる。彼らは呉さん
の工場を見学し、こぞって包丁を買い求めていく。
◆映画「呉さんの包丁─戦場からの贈り物」公式サイト
http://cr21.web.fc2.com/hocho/hocho.html
◆公開日(2013年8月23日「金門島823砲戦55周年」の翌日から)
・8月24日〜8月30日 11:00〜
・8月31日〜9月6日 17:50〜
・9月7日〜9月13日 9:50〜
*その後、横浜・名古屋・京都・大阪などで順次上映
◆渋谷・ユーロスペース2
渋谷区円山町1‐5 KINOHAUS 3F(劇場)
TEL:03-3461-0211
*渋谷・文化村前交差点左折
http://www.eurospace.co.jp/few_days.html
◆入場料金
一般:1700円/大学・専門学校生:1400円/会員・シニア:1200円/高校生:800円/中
学生以下:500円
・製作:クリエイティブ21
・テーマ音楽作曲・演奏:彩愛玲(ハーピスト、祖父は台湾人声楽家)
・語り:三宅真衣(愛知県出身。俳協の若手俳優として活躍中)
・カラー/ハイビジョン撮影/120分
◆映画に関するお問い合わせ
クリエイティブ21
〒160-0008 東京都新宿区三栄町16
TEL:03-3226-5290 03-3226-5292
E-mail:creative21@joy.ocn.ne.jp
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