国共内戦の最前線の島で、1958年8月23日の「八二三砲戦」からまもなく55周年を迎える
金門島のドキュメンタリー映画「呉さんの包丁」(林雅行監督)の試写会が8月8日、東京
都内で行われた。
映画の中で「呉さん」として登場する呉増棟さんは、金門島で有名な包丁鍛冶職人。呉
さんの包丁がユニークなのは、金門島に撃ち込まれた砲弾を原料としていることだ。
1958年8月23日に中国大陸の人民解放軍が金門島に向けて突如砲撃を開始し、国民党軍が
応戦した「八二三砲戦」と、その後約20年間にわたって中国大陸から宣伝弾が撃ち込まれ
たことにより、金門島には多数の砲弾が転がる。
この砲弾に目をつけたのが呉増棟さんの父で、実弾の破片や宣伝弾の砲弾そのものを再
利用して、包丁作りを始めるようになった。やがてこの包丁が金門名物として有名にな
り、時代は変わって今では中国大陸からの観光客もその包丁をお土産として購入するよう
になった。
同映画では、呉さんの生い立ちを振り返りながら、金門島が歩んできた歴史を映し出
し、戦争のための「砲弾」から料理の道具である「包丁」に生まれ変わらせる呉さんの包
丁に込めるメッセージを追う。
試写会で挨拶した林雅行監督は、「金門島は日本の旅行ガイドブックにもなかなか載っ
ておらず、日本人にほとんど知られていない」と述べ、映画「呉さんの包丁」が「八二三
砲戦」から55周年の翌日にあたる2013年8月24日より、東京・渋谷「ユーロスペース」で公
開されることを説明し、金門島で生きる人々への理解が深まることに期待を示した。
映画「呉さんの包丁」の詳細は、以下のウェブサイトをご参照ください