2013政策提言:我が国の外交・安全保障政策推進のため「日台関係基本法」を早急に制定せよ

国交のない日本と台湾は、日本側は「交流協会」、台湾側は「亜東関係協会」をそれぞ
れの窓口として「非政府間の実務関係」を維持している。日本はその出先機関として台湾
に「日本交流協会台北事務所」を設け、台湾は「台北駐日経済文化代表処」を設けている。

 いずれも大使館とほぼ同様の機能や権限を持つものであるが、台湾は外交部(外務省)
が所管する機関であるのに対し、日本は外務省と経済産業省の所管である「公益財団法
人」という「民間機関」であり、所掌業務は、人員、船舶、航空機の出入国、在留、経
済、投資等の国家主権に関わる事項に限られ、政府間の接触は外務省の方針により制限さ
れている。

 このように「民間機関」を通じて経済、社会、文化など必要最小限の実務関係が維持さ
れているとは言え、日本政府はこれらの項目以外の分野の交流は抑制している。

 日本は米国のような「台湾関係法」を制定していないため、日台関係は一切の法的裏付
けがないという不安定の中で辛うじて「実務関係」を維持している状態であり、当然のこ
とながら日台両国の交流に安全保障分野は含まれていない。

 このような状態は実質上の外交放棄であって、国家として無責任との謗りは免れない
が、その原因は台湾との交流を規定する基本となるべき法律がないことに帰結する。

 日台間の交流に確たる法的基盤がなければどのような事態が予測されるであろうか? 
極論すれば日本政府が中国からの抗議を極端に恐れた場合、日台間の交流が途絶する可能
性すらある。

 最近の中国は、急速な経済発展に支えられて海軍力を中心とした軍事力の拡大を図りつ
つ強引な海洋進出を試みており、アジア・太平洋地域の平和と安定にとって最大の脅威と
なっている。具体的な戦略として、中国は東シナ海と南シナ海を「中国の海」として囲い
込み、さらに兵力を太平洋へ展開させることを狙っている。

 一方、我が国にとって、中国海軍の外洋進出の出入口にあたる南西諸島の防衛は、中国
の意図を抑止する上で最も重要な課題の1つであるが、中でも列島線の南端に位置する台湾
の帰趨が対中戦略の成否の鍵を握っていることを見落してはならない。

 このような情勢の中で、安倍晋三首相は1月18日、ASEAN外交に臨む「5原則」を公
表し、日米同盟の強化や法の支配の重要性を訴え、海洋進出を強める中国を牽制する方針
を示した。

 5原則は、1)自由や民主主義、基本的人権など普遍的価値を拡大すべし、2)公共財で
ある海洋は力ではなく法が支配すべきで、アジアと太平洋に重心を移しつつある米国を歓
迎、3)自由でオープンな経済によって貿易や投資の流れを進め、日本とASANが共に
繁栄、4)文化の繋がりの充実、5)未来を担う世代の交流促進という原則で成り立って
いる。

 このように安倍政権の外交・安全保障政策の基本は、日米同盟を基軸に価値観を共有す
るASEAN等の諸国と協力して中国の独善的な行動を抑止し、地域の平和と安定を図る
ことにある。

 重要なことは、この5原則においては台湾についての直接の言及はないものの、これらの
原則の推進において、台湾を除外しては実現できないことが明らかなことである。

 このような認識の下に、岸田文雄外務大臣も交流協会の台湾情勢誌「交流」1月号の「交
流協会設立40周年を祝して」と題する祝辞の中で、「台湾は、我が国との間で緊密な経済
関係と人的往来を有する重要なパートナーです」と日本の台湾に対する位置づけを明確に
示し、また「日台間の深い友情と信頼関係を支えているのは、民主、自由、平和といった
基本的価値観の共有」であると述べ、安倍政権の台湾政策と新しい外交5原則との整合性を
示した。

 台湾は自由、民主主義、人権、法治といった基本的価値観を我が国と共有する民主主義
国家であり、台湾人の圧倒的多数は中華人民共和国とは別個の存在である独立した現状の
維持を望んでいる。台湾が自由と民主主義を基調とする国家であり続けることは我が国に
とって重要な国益であり、台湾人の意に反して台湾の現状を力で変える試みには断固とし
て反対すべきである。

 台湾の戦略的価値を理解する上で重要なことは、台湾周辺海域の安定が我が国のシーレ
ーンの安全確保だけではなく、確実な対米核抑止力獲得を狙って南シナ海への展開を図る
中国ミサイル潜水艦の配備阻止、即ち米国の核の傘の信頼性の確保に関しても重要であ
り、台湾の協力なしには実現不可能という現実である

 今後は、いかにして日米同盟と台湾の協力を実現し、強化するかがアジア・太平洋地域
の平和と安定、ひいては我が国の安全保障の鍵を握っていると言えよう。

 我が国のシーレーンと南シナ海を扼する要衝に位置する台湾の戦略的価値は、日米同盟
の将来、ひいては我が国の命運を左右すると言っても過言ではなく、我が国の安全と地域
の平和にとって、日米同盟と台湾の協力は不可欠である。

 一方、米国は1979年の断交に際して台湾関係法を制定し、台湾を中国とは別個の存在と
することで、台湾との外交を行うための法的根拠を与えている。また、同法において「同
地域の平和と安定は、合衆国の政治、安全保障および経済的利益に合致し、国際的な関心
事でもあることを宣言する」(第2条)と明文化するとともに、防御的な性格の武器や役務
の台湾への供与(第2条B項)及び台湾有事の際には米国政府がしかるべき行動をとる(第
3条C項)ことを義務付けている。

 現在、日米同盟に基づく米国のプレゼンスによってアジア・太平洋地域の安全が保障さ
れている。台湾関係法により台湾は実質的に米国の同盟国となり、我が国とも間接的な同
盟関係にある。

 日本と台湾は運命共同体とも言うべき関係にありながら、我が国は戦略的に重要な台湾
及びその周辺海域の防衛について、中国への過剰な配慮から米国の台湾関係法と台湾の
人々の親日感情に甘えるばかりで、主体的な関与を避け、責任を回避してきた。

 今後、さらに緊張が高まることが予想される台湾周辺において、我が国が負担と犠牲を
避けて無責任な態度をとり続ければ、日米同盟の絆が弱まることは避けられず、その結果
アジア・太平洋地域の平和と安定が失われ、ひいては我が国の国益が大きく損なわれるこ
とは必定である。このような事態を防ぐには、我が国においても同盟国である米国の台湾
政策との整合性を保つ必要があり、そのための法律の整備は急務である。

 我が国が毅然とした対中政策を打ち立てるには、台湾との基本関係を定める法律が不可
欠であり、安倍首相が「外交5原則」で示した構想を実現するためにこそ、下記の項目を骨
子とする「日台関係基本法」の制定を急ぐべきであると考える.

                  記

1)緊迫するアジア・太平洋地域において、我が国と台湾の関係は、もはや現行の経済、
  社会、文化などに限定した民間の実務関係だけで律することは極めて困難となってお
  り、交渉相手としての台湾の地位を法的に明確に規定するとともに、台湾との総合的
  な外交を行うための根拠法規を定める必要がある。

2)我が国の国益増進及びアジア・太平洋地域の安定と繁栄のために自由、民主主義、人
  権、法治等の共通の価値観を基に、平等互恵を原則とする日台間の関係を発展させる
  ことを目的とする。

3)平和的手段以外によって台湾の将来を決定しようとする試みは、いかなるものであ
  れ、我が国及びアジア・太平洋地域の平和と安全に対する脅威となるものであり、我
  が国にとっての重大関心事であることを宣明する。

4)我が国は、「台湾関係法」に基づく米国と台湾の関係を支持するとともに、海洋を
  「力」ではなく「法」が支配する自由で開かれた「公共財」として保障するため、日
  米同盟を主軸に台湾と協力する。


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