エルドリッヂ氏には李登輝学校研修団でも講師をつとめていただいたことがありますが、米国が現在、台湾との関係強化を積極的に進め、「台湾旅行法」を制定し、間もなく「2019年国防授権法」も成立させようとしているこのタイミングで提案していただいたことに敬意を表します。
ご存じのように、本会が「政策提言」として日本版・台湾関係法、すなわち「日台関係基本法」の制定を求めて「我が国の外交・安全保障政策推進のため『日台関係基本法』を早急に制定せよ」を発表したのは、5年前の2013年3月のことでした。
安倍晋三総理をはじめ関係大臣などへ送り、李登輝元総統をはじめ台湾の要人にもお送りしています。安倍総理も「政策提言は受け取った」(平成28年5月20日「答弁書」)と明確に答弁しています。
しかし、安倍総理はこのとき「政府として、御指摘のような法律の制定を、これまでに検討したことはない」とも答弁しており、この2年間でも進展は見られません。
エルドリッヂ氏も「残念ながら、日本政府はこの提言に対して具体的なことは何もしていないようだ」と慨嘆しつつも、果敢に台湾との関係強化策を進めるトランプ政権が米国にあり、中国が台湾を侵攻するだけの武力を持つ前に「日本はいまこそ行動するときではないか」と安倍政権を叱咤激励しています。そして「機は熟した。秋の臨時国会ではぜひ法律制定について議論してほしい」と求めています。
なお、文中に出てくる自民党青年局長をつとめる鈴木馨祐(すずき・けいすけ)衆院議員は4年前の2014年3月、日台若手議連幹事長代理をつとめていた松本洋平(まつもと・ようへい)青年局長などと訪台し、李登輝元総統を訪問したおりに「日本は『日台関係基本法』を制定すべき」と諄々と諭されたそうです。
後日、本会から日台関係基本法に関する資料を届けた際に、李元総統から日本の国内法制定についての話が出てくるとは思わず驚いたと感想を述べていましたが、日台関係基本法の制定が必要だと考えるようになったきっかけは李元総統にあったそうです。
米国の台湾関係法が米国の国益と合致しているように、日台関係基本法の制定は日本の国益のためであり、米国や台湾の国益とも合致しています。合致しないのは中国だけです。
日本は台湾を「基本的な価値観を共有する重要なパートナーであり、大切な友人」(安倍晋三総理の2015年7月29日「参院・平和安全法制に関する特別委員会」答弁)と位置づけています。しかし、台湾に関する法律は一本もありません。基礎となる法律をもっていないのです。
台湾との関係を「非政府間の実務関係」としていることは、安倍政権も歴代政権と変わりませんが、この実務関係の基礎となる法律が1本もないのです。日本の国益を守り、米国の台湾政策と整合性を保つためにも、「日台関係基本法」を制定する必要があります。
中国はなんとしても外洋へ進出をはかろうとして、邪魔になる台湾を自国領として統一することでその目的を果たそうとしています。それが「中国の夢」です。
エルドリッヂ氏が指摘するように「中国が台湾を侵攻するだけの武力を持つ前」のいまこそ、日本は「戦略的あいまいさを終えて意図を明確にする」ため、国内法として日台関係基本法を制定するときなのです。