韓国メディアが「台湾に学ぼう」と発信  黒田 勝弘(産経新聞ソウル駐在客員論説委員)

産経新聞ソウル駐在客員論説委員の黒田勝弘氏の記事は、韓国の現状を日本に引きつけて書かれているのでよく読む。

本日の産経コラム「ソウルからヨボセヨ」では、日本ゴルフ協会が戦前の1941年に行われたゴルフの日本オープンで優勝した韓国人選手の公式記録の日本名「延原徳春」を、韓国名「延徳春」にし国籍も韓国にしたことを紹介しつつ、戦前のオリンピックについて、次のように指摘していた。

<韓国人11人が日本選手団で出場しているという。

もちろん台湾人もいた。

あの時代、英国選手団にインド人、フランス選手団にベトナム人、オランダ選手団にインドネシア人がいたのだろうか? 日本が誇っていい歴史である。

戦前の日本には欧米に比べて人種差別がほぼなかったことを示し、日本人にとっても、台湾や韓国の人々にとっても、日本の統治時代の歴史を知る示唆に富む記事だった。

◆日本統治時代に活躍 「韓国人プロゴルファー第1号」が話題 「失われた名前」回復続く 【産経新聞:2025年8月16日】 https://www.sankei.com/article/20250808-PZVCJGRJNVORDHS2664DSN77CQ/?803178

少し前の記事でも、韓国メディアが「日本統治時代に関する台湾の歴史観を紹介しながら韓国を自己批判」する記事を掲載したことを紹介し、「韓国とは真逆に日本統治時代を高く評価している台湾に『学ぼう』」などという記事は韓国では初めてではないか」と紹介し、「この報道は画期的」とも高く評していた。

下記に全文を紹介したい。

8月23日、韓国の李在明大統領が石破茂首相と首脳会談を行うために初来日する。

はてさて、李大統領は未だに慰安婦問題は解決されていないと主張している。

どのような首脳会談になるのか注目したい。


韓国メディアが「台湾に学ぼう」と発信 日本統治の「禍」「悪」に焦点当てる教育に警鐘黒田勝弘 ソウル駐在客員論説委員【産経新聞:2025年8月8日】https://www.sankei.com/article/20250808-PZVCJGRJNVORDHS2664DSN77CQ/?803178

先日、韓国の新聞に台湾からの韓国人記者の記事が出ていた。

韓国のメディアで台湾に支局を置いているところはほとんどないので珍しい。

しかもその記事は「台湾の実用的歴史観を見ろ」と題し、日本統治時代に関する台湾の歴史観を紹介しながら韓国を自己批判していた。

これも珍しい。

いや、韓国とは真逆に日本統治時代を高く評価している台湾に「学ぼう」などという記事は韓国では初めてではないか。

韓国としては今年は日本支配から解放80年、それに日韓国交正常化から60年。

この報道は画期的である。

記事は6月27日付の朝鮮日報に掲載されたリュ・ジェミン台北特派員の手になるもので、台南市にある台湾歴史博物館を訪れその展示内容に大変驚いたという。

日本統治時代について韓国の公式歴史観では否定されている「植民地近代化論」で紹介されていたからだ。

記者はこう書いている。

「(日本統治時代に)台湾の教育、公衆保健、交通インフラなど社会各分野の水準がいかに高くなり、農林漁業の生産がいかに飛躍的に増加したかといった内容が堂々と展示されていた。

(公立の)博物館にこんな内容が展示されてもまったく問題にならないという事実は信じがたいことだった」

日本統治時代の近代化の“功”はまったく無視、否定され、ことさら“禍”あるいは“悪”ばかり語られ、教育されている韓国とはまったく逆だからだ。

筆者(黒田)も先年、台湾博物館を訪れた際、台湾の発展に貢献した偉人として児玉源太郎総督や後藤新平民政長官の銅像まで展示されているのに驚いたことがある。

韓国で日本統治時代の朝鮮総督というと、今でもドラマや映画で抗日テロや暗殺の対象として極悪人イメージで描かれるのが一般的だからだ。

記事は台湾でのそうした歴史展示について「2025年のいまなお“反日”や“抵抗精神”に焦点をあてている韓国とは違ってきわめて実用主義的な歴史認識だ」「歴史を振り返るとき、功と禍を正確に区別して指摘することができる議論の場が韓国より広く形成されている事実がうらやましかった」とし、ついでに台湾における「国父・蒋介石」の評価、展示でも一方的な肯定や否定にならないよう努力がうかがわれる、としている。

「実用主義」というのは韓国で「現実主義」に似た意味としてよく使われる。

李在明(イジェミョン)大統領も就任後、しきりに使っている。

とくに外交でそれを強調しているが、野党時代の反日主義者イメージを払拭するためでもある。

今回の台北発の記事のオチも、李政権に対し「偏狭で硬直した態度だけにこだわる政権ではないというメッセージを伝え、お互い違いを尊重する大統合を目指すために台湾の事例を検討してみてはどうか」という注文になっている。

台湾への記者派遣の意味を朝鮮日報に聞いたところやはり“台湾有事”への関心だという。

韓国では中国に対しては近年、横暴イメージから警戒心が広がっている。

李氏は野党時代「中国にもシェシェ(謝謝)、台湾にもシェシェといっておけばいいではないか」などと無責任なことを公言していたが、どういう「実用主義」を発揮するのか気になる。

韓国で台湾発の報道が増えれば対中国観もより多様になるだろう。

今回の記者派遣はまだ支局開設など常駐ではないようだが健闘を期待したい。

(ソウル駐在客員論説委員 黒田勝弘)。

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