松下泰士・元自衛艦隊司令官の台湾セミナーはユーモアを交えた充実の2時間

 5月28日の「第69回台湾セミナー」は、自衛艦隊司令官だった松下泰士氏を講師にお招きして「台湾有事は日本有事」をテーマに開催し、64枚のパワーポイント原稿を駆使した盛りだくさんの内容で、ときにユーモアを交えた約2時間の講演はまたたく間に過ぎた感がありました。

 講演は「1.台湾と私」「2.台湾の重要性」「3.台湾有事は日本有事となるか」「4.中国の台湾侵攻はあるか」「5.敵を知る」「6.戦わないための戦える国づくり」の6項目からの解説で、松下氏は「台湾有事は日本有事だが、いかなる形でも中国が覇権主義をとる限り併合させてはならない」と述べるとともに「ただし、台湾が大陸を併合するのは歓迎します」などとクスリと笑わせるものですから、その話しぶりに聴き入ってしまいました。

 印象的だったのは「経験的対中国心得」で、今でも悔やまれるのは「日中中間線のガス田付近を航行するな」の命を受けて従っているうちに、中国は今や17基ものガス田をつくってしまったことで、「刺激しないという発想は禁物」であり「サラミ戦術の餌食」になるという教訓を得たことだったと話されました。

 一方、逆に成功した事例として、2013年11月に中国が設けた防空識別圏(ADIZ)を挙げられました。

 中国は、防空識別圏を飛行する場合は航行飛行計画提出の義務がある、ADIZを飛行する航空機は当局の指示に従う、規則に従わない場合は防御的緊急措置を講ずるとしていて、当初、飛行計画を提出すべきか悩んでいたが、米軍も日本も従来どおりの飛行を続けていたら、いつの間にか「ADIZを飛行する航空機は当局の指示に従う」という条項を削除していたそうです。そこで、中国による言葉の脅しに怯んではならないという教訓を得たそうです。

 また、これまでの経験から「中国に対応する上で最も重要なことは毅然とした態度を堅持すること」「中国は強いものには弱く、弱いものには限りなく強いので、中国には屈しないという強い信念と、対決する気迫を持って対応すること」などを学んだと話されました。

 松下氏は最近の国会で、台湾との情報交換について制約はないとした外務省答弁や自衛隊法と海上保安庁法の矛盾と指摘されている問題点について防衛省が「矛盾していない」と答弁したことなどを紹介するとともに、台湾有事で恐れていることとして「北朝鮮、ロシアに何らかの方法で介入させるような、必ず複合事態になること」「激しい反基地闘争が起こること」「1発のミサイルで日本が怯むこと」「台湾がハイブリッド戦の段階で降伏すること」を挙げ、注意を喚起しました。

 最後に、「プーチンを惨めに退場させる」ことと書かれたパネルが映し出され、「いまはともかく台湾有事を抑止するためにはこういうことですかね」と紹介すると、会場にはまたしても笑いが広がり、大きな拍手とともに講演は幕を閉じ、質疑応答に移りました。

 当日は、台湾紙の「中央通信社」「自由時報」、日本の「世界日報」も取材に見えました。下記にご紹介します。 ◆中央通信社:因應台灣有事 日退將:台日應交流作戰計畫[5月29日] https://www.cna.com.tw/news/aopl/202205290184.aspx

◆自由時報:日應為「台灣有事」做準備 退將:包括作戰計畫、情報交流與撤僑[5月29日] https://news.ltn.com.tw/news/world/breakingnews/3942944

◆自由時報:日退將?日政府 與台情報交換[5月30日] https://news.ltn.com.tw/news/politics/paper/1520074

—————————————————————————————–「複合事態」に備えよ 台湾有事テーマに講演会【世界日報:2022年5月29日】https://www.worldtimes.co.jp/japan/20220529-162094/

 日台の交流を促進する民間団体「日本李登輝友の会」は28日、都内で台湾有事に関する講演会を開いた。登壇した元海上自衛隊自衛艦隊司令官の松下泰士氏は「台湾有事の際は必ず北朝鮮やロシアが何らかの方法で介入する『複合事態』になる」と指摘。「台湾有事は日本有事だ」と強調した上で、第3国の介入を前提にした備えが必要だと訴えた。

 さらに松下氏は、有事の際に米軍基地などへの激しい反対運動や、中国の武力に怯む世論などが起こる恐れがあると警告。それらを念頭に、法整備や継戦能力の向上、海上保安庁との連携などを進めていくべきだと話した。

 また、憲法9条に自衛隊を「戦力」と表現して盛り込み、9条の2を新設して「前条に規定する戦力は、我が国の権益を拡張する手段としては、永久にこれを放棄する」と記す私案を提案した。

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