陳其邁・行政院副院長が高雄市長選に出馬 後任に沈栄津・経済部長が就任

 中国国民党所属の韓國瑜・高雄市長が高雄市民によるリコールで不名誉な市長職解任に追い込まれたことを本誌でお伝えした際「(2018年11月の高雄市長選挙)で韓氏に敗れた陳其邁・行政院副院長が立候補すると言われている。陳其邁氏は今般の武漢肺炎問題で活躍した閣僚の中心的人物。当選はほぼ確実視されている」と伝えました。

 補欠選挙は8月15日に行われますが、案の定、陳其邁氏が高雄市長選挙に出馬することになりました。陳其邁氏は6月17日に蘇貞昌・行政院長に辞任を申し出、19日に正式に発効しています。

 同時に、陳其邁氏の後任に沈栄津・経済部長を充て、沈栄津・経済部長の後任に王美花・経済部次長を充てる人事も発表されました。

 陳其邁氏も沈栄津氏も、蔡英文総統が5月20日に行われた2期目の総統就任式の演説で「台湾のマスク需給をコントロールしたナショナルチーム」を讃えた、そのナショナル・マスクチームのキーパーソンです。

 台湾の武漢肺炎感染第1例は、1月21日に陽性が確認された武漢で働いていた女性でしたが、中央感染症指揮センターを設置したのはその前日の20日で、WHOのテドロス事務局長が緊急事態宣言を見送った1月23日には、指揮センターを三級から二級行政機関に格上げして、陳時中氏を指揮官に任命しています。

 この中央感染症指揮センターは2月27日にはさらに一級行政機関に格上げされていますが、指揮センター設置以前、陳其邁氏は「何かあれば、私が責任を取る」と省庁横断システムを立ち上げ、それぞれの役割分担を明確にして迅速に決定が下されるよう導いています。

 また、台湾が春節(旧正月)休暇に入る直前にマスク不足に陥ることを察知し、大晦日に当たる1月24日にマスク生産を管轄する沈栄津・経済部長と連絡を取り、マスクを輸出禁止とし、春節休暇中にもかかわらず60台のマスク生産機械を発注して業者に分配し、生産を委託、全てのマスクを政府が買い上げる専売制としたのでした。

 マスクの輸出禁止を決定し、60台のマスク生産機械を発注して業者に分配、生産を委託したのは沈栄津・経済部長の担当でした。

 1月当時、台湾のマスク生産量は日産180万枚。これを1,000万枚に高めるために60台のマスク生産機械を発注したのですが、通常なら半年ほどかかるところを1ヵ月で成し遂げ、その後も生産ラインを増やし、4月からは各国に寄贈できるまでに増産体制を整え、現在の日産2,000万枚に至っています。

 蘇貞昌・行政院長も「1ヶ月以内にマスクの生産機器60台の組み立てを完成し、新型コロナウイルスの封じ込めに大きく貢献している」と、沈栄津氏の働きぶりを讃えています。

 なお、高雄市長の補欠選挙に出馬する陳其邁候補の選対本部幹事長には1月の立法委員選挙で3選を果たした趙天麟・立法委員が就いたそうで、韓國瑜・前市長をリコールした若者たちも支持するでしょうから、盤石な選挙戦となる模様です。

—————————————————————————————–沈栄津氏が副首相に、ポストコロナの経済振興目指す【台湾国際放送:2020年6月19日】https://jp.rti.org.tw/news/view/id/92577

 行政院(=内閣)の副院長(=副首相)だった、陳其邁氏が、与党・民進党の公認候補として台湾南部・高雄市の市長補欠選擧に立候補するため、17日に行政院副院長を辞任しました。行政院は19日、経済部の沈栄津・部長が陳其邁氏の後を受け継いで副院長になることと、経済部の王美花・次長が経済部長に昇格することを発表しました。

 行政院の丁怡銘・報道官は、蘇貞昌・行政院長が沈栄津氏を副行政院長として起用した理由について、「経済部で38年間も勤務している沈栄津氏は、2017年8月1日に経済部長に就任して以来、産業のイノベーションやエネルギー構造の高度化を積極的に推進している。今年新型コロナウイルスが蔓延した際、『マスクのナショナルチーム』の組織に積極的に取り組み、1ヶ月以内にマスクの生産機器60台の組み立てを完成し、新型コロナウイルスの封じ込めに大きく貢献している。蘇貞昌・行政院長は、沈・副院長は今後、経済振興を促す手助けになることを期待している」と説明しました。

 一方、王美花・次長の部長への昇格について、丁怡銘・報道官は、「王・次長は、経済部で39年間も勤務し、関連業務に精通している。法律専攻の王・次長は、産業関連の法規の調整には独特な見解がある。『公司法』などの改正に成功した。国家の経済発展に大きな貢献がある。世界各国との経済・貿易面における協力関係の促進を担う王・次長は、『新南向政策』、台湾と米国、台湾とEU(ヨーロッパ連合)などの貿易交渉に積極的に取り組み、投資と人材を誘致するための訪問団を複数回組織して海外を訪問し、国内の投資に新たなエネルギーをもたらしている。また、新型コロナウイルスが猛威を振るっていた際、対策本部で防疫物資部門の責任者を兼務する王・次長は、大きな貢献を果たした」と紹介しました。

 丁怡銘・報道官は、蘇貞昌・行政院長は、この2人は、ポストコロナの台湾経済振興のために努力するよう期待していると伝えました。

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