6月6日、中国国民党に所属する韓國瑜・高雄市長のリコール(解職請求)が投票数の97.4%占める賛成票93万9,090票という圧倒的賛成投票によって成立した。反対票は2万5,051票(2.6%)しかなかった。これによって、韓國瑜氏は台湾史上初のリコールによる市長解職という不名誉を着ることになった。
このリコール運動を牽引してきたのは、若者たちを中心とする市民団体の「Wecare高雄」や「公民割草行動」などで、1月の立法委員選挙において台中市で当選者を出したミニ政党「台湾基進」(陳奕齊主席)も中心的役割を担った。彼らは、太陽花学運(ひまわり学生運動)の次の世代に当たる。昨年12月下旬、「光復高雄」(高雄を取り戻せ)というスローガンを掲げ、50万人もの参加者を集めて韓市長の罷免を求める大規模なデモを行ったのが台湾基進だ。
台湾では、リコールが成立するハードルはかなり高い。まず高雄市の全有権者の1%=約2万3,000人分以上の署名を集める「提議」、次に約23万人分以上(10%)の署名を集める「連署」、そして最終的に、賛成票が反対票を上回り、有権者の4分の1=約58万5,000票を超えなければならない「住民投票」を突破する必要がある。この3段階を全てクリアしてはじめてリコールは成立する。
リコール成立直後、台湾基進のフェイスブックには「罷韓宣告成功!台灣的下一??」(韓國瑜罷免成功を宣言します! 台湾の次の一歩は?)と題するレポートを掲載している。彼らの目的が台湾の「去中国化」、つまり「脱中国化」であることを明瞭に謳っている。また、リコール運動を牽引した若者4人を「罷韓四君子」とし、彼らが涙ながらに罷免成功の感想を述べる動画もアップしている。
◆台湾基進フェイスブック:党罷韓宣告成功!台灣的下一??[6月6日18時58分] https://m.facebook.com/login.php?next=https%3A%2F%2Fm.facebook.com%2FStatebuilding.tw%2F&refsrc=https%3A%2F%2Fm.facebook.com%2FStatebuilding.tw%2F&_rdr
韓國瑜市長のリコール成立は、2018年11月下旬の統一地方選挙で当選した韓市長がその半年後に総統選挙出馬を表明し、市政を投げ出したという批判や不満を、蔡英文氏が総統再選を果たした要因のひとつでもあった香港情勢が後押ししたことも見逃せない。
総統選は香港の逃亡犯条例改正案反対デモが後押しし、今回の住民投票は国家安全法の香港導入に反対するデモが後押しした。
香港デモも総統選挙も韓國瑜市長リコールも、共通するテーマは「脱中国」。高雄の若者たちは「脱中国」を合言葉にリコール運動を牽引し、住民投票では、韓氏が高雄市長に当選した得票数89万2,545票を5万票近く上回る賛成票が投じられた。いかに高雄市民が韓市長の辞任を求めていたか、この高い賛成票が示している。
正式な結果は投票終了後7日以内に中央選挙委員会によって公表され、韓市長は遅くとも6月12日までに市長を解職される。また、補欠選挙は9月12日までに実施され、その間は行政院から代理市長が派遣される。
ちなみに、補欠選挙には韓氏に高雄市長選挙で敗れた陳其邁・行政院副院長が立候補すると言われている。陳其邁氏は今般の武漢肺炎問題で活躍した閣僚の中心的人物。当選はほぼ確実視されている。
6月6日、「Taiwan Voice」は林建良氏(日本李登輝友の会常務理事、日米台関係研究所理事)による解説をアップしている。とても分かりやすい解説だ。併せてご紹介したい。
なお、韓市長のリコール成立後、中国国民党の今後の行方を暗示するかのような事件が起こった。韓市長を全面的にバックアップしてきた中国国民党所属の高雄市議会議長の許崑源氏が自宅の17階から飛び降り自殺したのだった。韓市長は、政治家引退とも受け取れる「政治は一時的なもの、今後も生活を続けなければならない」と述べたと報じられている。
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