外交関係を有しない日本と台湾の交流では、日常的に双方の窓口機関である日本台湾交流協会と台湾日本関係協会が「非政府間の実務関係」を担っているが、謝長廷・台北駐日経済文化代表処代表が指摘するように「本来あるべき当局間対話を補完する議員外交がより一層重要」であり、局面を変えたり突破するのが議員外交だ。
今年は、5月3日から自民党青年局の小倉將信局長(当時)ら5議員が訪台したことを皮切りに、7月には25日から鈴木馨祐・衆議院議員、27日からは石破茂・元防衛庁長官と浜田靖一・元防衛大臣、長島昭久・元防衛副大臣、清水貴之・参議院議員の4議員、8月は22日から日華議員懇談会の古屋圭司・会長と木原稔・事務局長の2議員、10月の国慶節には日華議員懇談会所属の19議員、そして12月には10日から萩生田光一・自民党政調会長、26日から世耕弘成・自民党参議院幹事長と、33人の国会議員が台湾を訪問した。
林芳正外務大臣は、日本台湾交流協会設立50周年に寄せた祝辞で「台湾は、日本にとって、自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的価値を共有し、緊密な経済関係と人的往来を有する極めて重要なパートナーであり、大切な友人」(2022年12月26日発行『交流』12月号)と述べている。
このように台湾を位置付けたのは安倍晋三総理であり、それは2016年5月20日、奇しくも蔡英文氏の2度目の総統就任式当日に出された書面による「答弁書」においてだった。奇しくも、というよりこの日を狙ってと言った方が正しいだろう。
訪台した萩生田・政調会長は安倍元総理の名代として李登輝元総統の墓参を果たし、世耕議員も、蘇貞昌・行政院長との会談で「安倍元総理は、この日本と台湾の関係を非常に重視をしてきた政治家でありました。我々は、この安倍元総理のご遺志を継いで、日台関係をさらに発展させていかなければならないという決意を強く持っております」(日テレニュース)と強調したと報じられている。
この発言について、安倍総理の後継者をアピールする狙いがあるとも伝えられているが、本誌ですでに指摘したように、日台関係は政局ではない。日本を守るために、友邦台湾を守るために、日本が一丸となって取り組まなければならない関係構築の問題だ。
安倍元総理の願いを我が願いとして日台関係を深化させ、中国に台湾侵攻を思い止まらせ、台湾海峡の平和と安定を実現する役回りを死に物狂いで果たそうとする国会議員が現れて欲しいものだ。
—————————————————————————————–自民・世耕氏が台湾を訪問、行政院長と会談 「安倍氏の遺志継ぎ関係発展を」【産経新聞:2022年12月27日】https://www.sankei.com/article/20221226-QF23TSKTOJNXDBEEUL2JMP4WW4/?957729
【台北=原川貴郎】自民党の世耕弘成参院幹事長は26日、台湾を訪れ、台北市内で蘇貞昌行政院長(首相に相当)と会談した。両氏は緊迫する台湾海峡情勢を踏まえ、日台連携の重要性を確認した。世耕氏は28日までの滞在中、蔡英文総統や頼清徳副総統と会談する予定で、日本と基本的価値を共有する台湾に「寄り添う姿勢」(世耕氏)を明確にする考えだ。
世耕氏は蘇氏との会談で、7月に死去した安倍晋三元首相が日台関係を重視していたことに触れ、「安倍氏の遺志を継ぎ、関係をさらに発展させていかなければならない」と強調した。中国が台湾への軍事的圧力を強める中、日本政府が国家安全保障戦略など新たな「安保3文書」を閣議決定したことをめぐり、世耕氏は台湾が迅速に評価したことに謝意も示した。
蘇氏は「権威主義国家が拡張する今、われわれこそ手を携えて、地域の繁栄と平和、安定を守り抜くべきだ」と訴えた。台湾の環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への早期加入に向けた支援も求めた。
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