台湾と国交を結ぶ17カ国のうち太平洋の島国は、キリバス、マーシャル諸島、ナウル、パラオ、ソロモン諸島、ツバルの6ヵ国。2017年10月にマーシャル諸島、ツバル、ソロモン諸島を訪問しているから、パラオとナウルは初めてとなる。
パラオは1999年に台湾と国交を結んでいる。ナウルはそもそも台湾と国交を結んでいたが、2002年7月に台湾と断交して中国と国交を結ぶも、2005年5月に台湾と再び国交を結んでいる。マーシャル諸島は1998年に台湾と国交を結んでいる。
このことを伝える日本経済新聞は「中国にとっては日本から小笠原諸島、グアム島をつなぐ防衛ライン『第2列島線』に位置する重要性があり、インフラや観光投資を通じ影響力を拡大している」と、台湾が警戒感を強めている背景を説明している。
実は、日本も同じく警戒感を強めている。安倍総理は3月8日、来日したパラオのレメンゲサウ大統領と会談し「パラオが台湾と外交関係を有することを踏まえ、軍事的な海洋進出を強行する中国を念頭に、自由で開かれたインド太平洋の実現が重要とする認識で一致した」(産経新聞)と報じられている。
そこで日本はパラオに対し、産業振興や海上の安全確保に向けたインフラ整備に対する4億円の資金協力を約束している。
そもそもパラオは、第一次世界大戦後の1920年、国際連盟からパラオを含む日本のミクロネシア(南洋群島)委任統治が認められ、委任統治領として日本が統治していたところで、大東亜戦争の激戦地でもあった。戦後70年の2015年4月に今上陛下が皇后陛下を伴われて訪問、同島で慰霊祭に臨まれている。
海を表す青地に月を表す黄色い丸の国旗は、日本の国旗にちなんだという親日国。1994年10月1日に独立を果たし、初代大統領のクニオ・ナカムラをはじめ日系人が多く、6代目となる現在のレメンゲサウ大統領も祖母の父が日本人だ。
外務省のホームページによれば、パラオに「軍隊はない。コンパクトに基づき,パラオの安全保障・国防上の権限と責任は米国が有する。有事の際には米軍による土地利用が認められている」という。コンパクトとは米国と当該国との自由連合盟約のことで、米国は国家としての独立を承認して経済援助をするが、安全保障も米国が統轄するという盟約のことをいう。
日本は現在、太平洋島嶼国との関係強化を推進中で、今年の2月8日に関係省庁局長で構成する「太平洋島嶼国協力推進会議」の第1回会合が開いている。また、パラオには4億円、ナウルには昨年12月、港湾整備を目的とした無償資金協力として8.5億円を約束している。マーシャルにも2016年までに約155億円を無償資金協力として提供している。
台湾が国交を結ぶ太平洋の島国6ヵ国をはじめ太平洋の島嶼国歌は、いずれも米国と日本の関係が強い。そこに台湾がさらなる関係強化を推し進めようとしている。その点で、日本、米国、台湾の息は一致している。
米国に対峙する覇権国家をめざす中国は太平洋の島嶼国家にも触手を伸ばそうとしている。台湾との新たな断交も企図する中国の野望を砕くためにも、台湾を応援したいものだ。
◆首相官邸HP:日・パラオ首脳会談等【3月8日】 https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/201903/08palau.html
台湾の蔡総統、太平洋3カ国歴訪へ 断交阻止へ関係強化【日本経済新聞:2019年3月12日】
【台北=伊原健作】台湾の外交部(外務省)は12日、蔡英文総統が21〜28日の日程で、外交関係のあるパラオ、ナウル、マーシャル諸島の太平洋の3カ国を歴訪すると発表した。パラオとナウルを訪問するのは2016年の総統就任以来初めて。中国の圧力を背景に台湾は外交関係を相次ぎ失っており、直接訪問で関係をつなぎ留める狙いとみられる。
外交部によると蔡氏は外遊先で3カ国の国家元首とそれぞれ会談し、ナウルでは両者の友好関係などをテーマに議会で演説する。呉●(かねへんにりっとう)燮・外交部長(外相)は4日に立法院(国会)で「一部の友好国で動揺があるのを把握している。中国の干渉は増えており、今年は友好国の争奪戦になる」と警戒を強めていた。
独立志向を持つ民主進歩党(民進党)の蔡政権は、中国大陸と台湾が一つの国に属するという「一つの中国」原則の受け入れを拒み、中国側は台湾への外交圧力を強めている。蔡政権の発足以降、台湾と外交関係を結んでいた5カ国が相次ぎ台湾と断交して中国と国交を樹立し、台湾の友好国は17カ国まで減っている。
台湾の友好国全17カ国のうち太平洋の島国は6カ国を占め、中南米(9カ国)に次ぐ重要地域だ。中国にとっては日本から小笠原諸島、グアム島をつなぐ防衛ライン「第2列島線」に位置する重要性があり、インフラや観光投資を通じ影響力を拡大している。台湾側は各国との関係維持に腐心している。