これに対抗して米国は9月25日、昨年9月に上院に提出されていた「台北法」案が動き出し、上院の外交委員会で可決された。
本誌前号でお伝えしたように、この法案は、台湾に不利となる行動をとった国に対し、外交関係のレベルの引き下げや、軍事的融資などの支援の一時停止または変更などの措置をとる権限を米国務省に与えるという内容だという。
世界で唯一、台湾への武器供与を定める「台湾関係法」ならびに「台湾に対する『6つの保証』」を台湾との関係の基礎とする米国ならではの法案で、もちろん米国の国益のためでもあるが、台湾への側面からの強力な支援となる法案だろう。
台湾と国交を結ぶ太平洋の国交国は、マーシャル諸島共和国、ナウル共和国、パラオ共和国、ツバルの4カ国となり、断交ドミノは次にツバルが続くのではないかと見られていた。
しかし、伝えられるところによれば、ツバルのカウセア・ナタノ新首相は9月23日に台湾との外交関係を維持する考えを表明し、マーシャル諸島も25日、ハイネ大統領が「われわれは皆、中国による領有権拡大の試みを目にしてきた。これは民主主義国にとって大きな懸念だ」と述べる声明を発表し、「台湾の人々と政府への深い感謝」を示す決議を採択して台湾との外交関係を維持する考えを表明したという。
とはいえ、これで断交の懸念がなくなったわけではない。台湾の総統選で現職の蔡英文総統が再選される可能性が高まっている現在、中国の選挙介入は強まることはあっても弱まることはない。
9月25日、台湾の総統府は「年末までにさらに1〜2カ国との断交に追いやられる恐れもある」とする、国家安全会議がまとめた報告書の要約を公表したという。この報告書では「選挙が迫る最も敏感なタイミングに、両岸(台湾と中国)間の経済や貿易を厳しく制限する可能性がある」とも指摘しているという。中央通信社の記事を下記に紹介したい。
ちなみに、国家安全会議(National Security Council:NSC)は安全保障政策を決定する総統府直轄の機関で、国家安全会議議長は総統が務め、副総統、行政院長、副院長、内政部長、外交部長、国防部長、財政部長、経済部長、行政院大陸委員会主任、参謀総長、国家安全会議秘書長からなる。
秘書長には外交部長だった李大維氏が就き、副秘書長には葉國興、陳文政、蔡明彦の3氏、諮詢委員には施俊吉、李?財、傅棟成、陳俊麟、林成蔚、郭臨伍の5氏が就任している。詳しくは下記ホームページから確認されたい。
◆国家安全会議 https://www.president.gov.tw/NSC/management.html
—————————————————————————————–総統選前にまた「断交」の恐れ 総統府機関が指摘 中国が選挙介入【中央通信社:2019年9月27日】
(台北 27日 中央社)台湾で来年1月に行われる総統・立法委員(国会議員)選への介入を狙い、中国が今後取ると想定される措置や策略について、総統府直轄機関、国家安全会議(国安会)は23日、専門チームによる会議を召集した。総統府が25日に公表した国安会による報告書の要約によれば、年末までにさらに1〜2カ国との断交に追いやられる恐れもあるという。
中国は、独立志向を持つ与党・民進党から再選を目指す蔡英文総統への圧力を強めている。台湾は今月16日にソロモン諸島と、同20日にはキリバスとの断交を余儀なくされた。
国安会は報告書で、台湾の選挙や政治の流れに影響を与えるのに経済的な措置が最も有効だと北京当局は考えていると言及。選挙が迫る最も敏感なタイミングに、両岸(台湾と中国)間の経済や貿易を厳しく制限する可能性があるとの考えを示した。旅行客や留学生の訪台、中国企業の台湾への投資に規制をかけたり、代表的な台湾企業に政治的な立場の表明を迫ったりする恐れがあるという。
台湾社会の対立をあおるため、政治工作を仕掛けてくる可能性も指摘。第三極を取り込んで民進党の票を奪おうとしたり、情勢を左右するような安全保障にかかわる事件を発生させたりすることが考えられるとしている。
会議では、想定されるあらゆる可能性や対策が話し合われた。国安会の李大維秘書長は席上で、経済をもって政治に干渉する中国の行為を政府は決して座視しないと述べ、強力な対策を取って経済の耐性を強める方針を示した。
(温貴香/編集:楊千慧)