茨城県で台湾産果物を給食に出す自治体は20に 最初の取り組みは笠間市

 2018年2月に2020年東京オリンピック・パラリンピックのホストタウンに登録した茨城県笠間(かさま)市は2019年7月24日、台湾の農業委員会農糧署と「食を通じた文化交流と発展的な連携強化に関する覚書」を締結しました。これにより11月1日に笠間市内の全小学校、中学校、義務教育学校の給食に台湾産バナナが約5,800本提供され、以降、毎年11月に笠間市内の小・中学校や幼稚園の給食でバナナが提供されるようになりました。

 この笠間市の動きは、県庁所在地で台湾の飛虎将軍廟に祀られている杉浦茂峯命の出身地である水戸市や、大洗旅館組合と新北市温泉観光協会が「連携に関する覚書」(2019年9月2日)を締結している大洗町などにも波及し、小・中学校で給食に台湾産バナナが出されるようになっています。

 最近ではさらに44市町村ある茨城県全体に広がり、年末までには台湾産果物を給食で出す自治体は20に達する見通しだそうです。

 この背景には、笠間市の山口伸樹(やまぐち・しんじゅ)市長の英断があったようです。

 山口市長は、笠間市が東京オリンピック・パラリンピックのホストタウンに登録してから半年後の2018年8月23日、台湾に職員1人と現地職員2人の「笠間交流台湾事務所」を開設しました。

 当時は、台湾が福島県や茨城県など5県産品の輸入を禁止していて、茨城県の農産品や食品などは台湾に輸出できない状態でしたが、そのような状況にもかかわらず笠間市は積極的に台湾との交流を図っていこうとする姿勢を打ち出し、「笠間交流台湾事務所」開設一周年を記念して台湾の農業委員会農糧署と覚書を締結したそうです。

 台湾が5県産品の輸入を解禁したのは2022年2月21日。東日本大震災による福島第1原発事故後から11年後のことでした。

 山口市長は台湾との交流に熱心で、日本にとっての台湾の重要性を深く理解しているところから、5県産品の輸出がいずれ解禁されることを見越してホストタウンとなり、「笠間交流台湾事務所」を開設し、また「覚書」も締結したのだと思われます。

 市長として5期目をつとめる山口市長は2019年6月から茨城県市長会会長をつとめ、また、2021年に日台共栄首長連盟(会長:宮元陸・加賀市長)が設立されるやすぐ会員として入会、現在は幹事をつとめています。

 茨城県の学校給食に台湾産果物が出されるようになった要因として、台北駐日経済文化代表処の謝長廷代表の積極的な自治体行脚によるバックアップや、茨城県の大井川和彦知事が県を挙げて台湾との交流に取り組んでいることも背景として見逃せませんが、山口市長の積極的かつ先見性を備えた台湾との交流姿勢が茨城県の市町村首長にも伝わり、台湾産果物を給食で出す自治体が増え続けているようです。

—————————————————————————————–台湾産果物を学校給食に 茨城県内の採用自治体、秋には3分の1以上に=農糧署長【中央通信社:2023年5月12日】https://japan.focustaiwan.tw/society/202305120001

 (台北中央社)茨城県内の一部自治体の学校給食では近年、バナナやパイナップルなどの台湾産果物が提供されている。行政院(内閣)農業委員会農糧署の胡忠一(こちゅういち)署長は11日、今年11月までには県内の3分の1以上の自治体が学校給食に台湾産果物を採用する見通しだと明らかにした。

 パイナップルの対日輸出に関する記者会見で述べた。会見には胡氏の他、農糧署と「食を通じた文化交流と発展的な連携強化に関する覚書」を結んでいる茨城県笠間市の山口伸樹市長も出席した。

 農糧署は2019年、笠間市と同覚書を締結。同年から、毎年11月にバナナなどの台湾産果物が市内の小中学校や幼稚園の給食で提供されている。

 胡氏は山口市長から伝えられた話として、台湾バナナを給食に採用する県内の自治体は今年11月には15に増える予定だと明らかにした。県内には44市町村があり、年末までには台湾産果物を給食で出す自治体は20に達する見通しだという。

 胡氏によれば、昨年には新たに台湾産パイナップルやブンタン、マンゴーが、今年1月にはインドナツメが県内の給食で出されたという。

 今年のパイナップルの輸出量は10日現在で1万3878トンに達しており、このうち日本向けは1万2578トンに上る。胡氏は、現在は毎日200〜300トンを輸出しているとし、2万トンの年間目標の達成に自信を示した。

 今月17、18日には笠間市と大洗町の9の学校で計3360人の子供に台湾産パイナップルが提供される。

(楊淑閔/編集:名切千絵)

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