自民党の外交部会に台湾を巡る外交や安全保障の政策を議論する「台湾政策検討プロジェクトチーム(台湾PT)」が2月10日に新設され、座長には外交部会長をつとめる「ヒゲの隊長」こと佐藤正久(さとう・まさひさ)参議院議員(前外務副大臣)、副座長には青年局長や外務副大臣をつとめた鈴木馨祐(すずき・けいすけ)衆議院議員が就き、事務局長には法務大臣をつとめた山下貴司(やました・たかし)衆議院議員が就いている。
当初、自民党の外交・国防の両部会長と台湾側とで議員レベルの2+2(外務・防衛担当者協議)を開催する「一段高みの議員外交」(佐藤座長)をめざしていると伝えられていた。
また、4月末までに提言をまとめるとも報じられていたが、3月の日米安全保障協議委員会(2+2)や4月の日米首脳会談、5月のG7外相会議、つい最近の日EU首脳協議でも相次いで「台湾海峡の平和と安定」が強調されたことを踏まえ、佐藤座長は自らのブログで、第一次提言案について「『台湾の危機はわが国自身の危機である』。提言にこのように文言を入れ、台湾海峡の安定化の為、抑止力の強化につながる様々な取り組みを提案している」(5月28日)と述べている。
具体的には「日台関係を他の国々との外交関係と同じように当局担当者の連絡を恒常化させたり、日米台の安全保障対話のチャンネルを確立したり、日台間の貿易協定の検討など、日台関係をこれまで以上のレベルに格上げする。また従来から言われている世界保健機関(WHO)始めとした国際機関への台湾加入を後押しする。そして、現在コロナ新規感染者大幅増で苦しんでいる台湾に、日本が確保したワクチンを提供する」ことなどを盛り込んでいるそうだ。
下記に紹介する毎日新聞は「閣僚を含む当局間の日常的な接触、出張を含めた交流強化」も提言していると報じていて、本会のこれまでの「政策提言」と重なるところもあるようだ。
提言は、6月11日からイギリスで開かれるG7首脳サミットに間に合うよう政府に届けられるという。
米国が台湾関係を強化できる基礎は「台湾関係法」という国内法と、それに付随する「「台湾に対する『6つの保証』」を連邦議会で可決していることにある。そこで、日本には台湾に関する法律が1本もないことを踏まえ、本会は「日台交流基本法」の制定を提言してきた。
「日米台の安全保障対話のチャンネルを確立したり、日台間の貿易協定の検討」はたまた「閣僚を含む当局間の日常的な接触、出張を含めた交流強化」にしても、それらをしっかり担保する国内法がなければ、砂上の楼閣と言っても過言ではない。台湾政策検討プロジェクトチームがどのような第一次提言を出すのか注目したい。
—————————————————————————————–台湾の国際会議参加を後押し 自民外交部会、提言案を了承【毎日新聞:2021年5月28日】
自民党外交部会などは28日、台湾有事の際の在留邦人の退避や台湾との交流強化などの検討を求める提言案を大筋で了承した。
提言案では台湾とは自由、民主主義といった基本的価値観を有するとして、世界保健機関(WHO)や国際民間航空機関(ICAO)など台湾が出席できない国際会議への参加を後押しするよう求めた。また、在留邦人退避や国民保護など台湾有事の際の対応を早急に検討することや、閣僚を含む当局間の日常的な接触、出張を含めた交流強化を提言した。日本が確保した英アストラゼネカ社などのワクチンの一部を台湾に提供することの重要性も強調した。
日本は台湾との外交関係はなく、日本政府は台湾との関係を「非政府間の実務関係として維持していく」との立場をとっている。一方、中国による台湾への圧力が高まっていることから、党外交部会が今年2月に台湾政策検討プロジェクトチーム(PT、座長=佐藤正久参院議員)を立ち上げ、検討を重ねてきた。【佐藤慶】
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