ん)氏が代表をつとめる「台湾歌壇」が、今回の東日本大震災に際して、日本を励ました
いと3月に開いた歌会(かかい)に献詠の短歌を持ち寄り、募金までしていただいていたこ
とを、献詠の短歌46首とともに紹介した(4月23日、第1298号)。
台湾歌壇のホームページは、その献詠の短歌を掲載している。何度読んでも、心が締め
つけられる。台湾の人々の日本へのまなざしと、共振するその心に打たれた。
その中の5首(下記)を月刊「正論」7月号でも紹介したが(「李登輝元総統からのメッ
セージ 大丈夫、日本は必ず復活する」)、ある講演でこれらの短歌を紹介していたら、絶
句してしまったこともある。本会会員の中には、これらの短歌をコピーして知り合いに送
っていた方が何人もいた。
国難の地震(なゐ)と津波に襲はるる祖国護れと若人励ます 蔡 焜燦
一瞬にて村諸共に影消ゆる遥かより謹みて黙祷捧げむ 黄 培根
神あらば心の祖国の災難をとくとく鎮め幸ぞ賜はれ 林 禎慧
荒れ狂ふ津波に退避報道す大和女(やまとおみな)の勲雄雄しき 李 錦上
雪の夜は如何に過すや校舎にて竦(すく)む避難者よ我も眠れず 黄 振聲
共鳴したのは日本人ばかりではなかった。台湾で日本語を学ぶ大学生も心を揺り動かさ
れた。高雄市の義守大学応用日本語学科が年1回出している短歌・俳句の雑誌「Eucalyptus」
(ゆうかりぷたす=ユーカリ)が、東日本大震災の被災者らを励ます短歌の特集を組んで
発刊したことを、昨日の読売新聞が伝えている。
この記事への反響も大きい。「寄付金だけでなく心づくしに感謝いたします。ありがとう」
「台湾の人達の思いやりと労わりに感動。復興したら台湾に行きたい」と素直に感謝する
ものや、「同じ統治された韓国は怨の民族、台湾は恩の民族、どうこの違い」「台湾人と
中国人はDNAがかなり違うの?」といった中国や韓国と比較するもの、また「マスコミ
よ、友好国と敵国の真実を隠蔽せずに報道しろ」と、矛先を報道に向けるものなど様々だ。
記事では5首しか紹介していないが、この反響だ。東日本大震災を機に、日本人の台湾を
見るまなざしに大きな変化が出てきている。台湾との距離が縮まっている。この変化をも
たらしたのは、台湾の人々の真心だ。
◆ 台湾歌壇
http://www.taiwankadan.org/
耐える被災者へ、台湾から贈る120首
【読売新聞:2011年6月20日】
http://www.yomiuri.co.jp/feature/20110316-866918/news/20110620-OYT1T00083.htm
台湾・高雄市の義守大学応用日本語学科が年1回出している短歌・俳句の雑誌が、東日
本大震災の被災者らを励ます短歌の特集を組んだ。500部を発行し、宮城、岩手県などに200
部送るという。
台湾には、日本統治時代に日本語教育を受けた人や日本語を学ぶ学生を中心に、短歌・
俳句の愛好者は多い。特集には「台湾歌壇」のメンバーら62人の120首が掲載され、同歌壇
の蔡焜燦代表は「国難の地震と津波に襲はるる祖国護れと若人励ます」を寄せた。
「未曽有なる大震災に見舞はれど秩序乱れぬ大和の民ぞ」「天災に負けずくじけずわが
愛友よ涙も見せず鬼神をば泣かす」など、耐え抜く被災者への感動を詠んだものが多い。
福島第一原発の事故現場で働く作業員への称賛の歌も。「原子炉の修理に赴く男の子らの
『後を頼む』に涙止まらず」「福島の身を顧みず原発に去りし技師には妻もあるらん」
「大正生まれ昭和育ちの我ならば日本大災難にこころのしずむ」と日本語世代ならでは
の歌も寄せられた。義守大の担当者は「頑張れという気持ちがこもったものばかり。心の
支えになれば」と話している。
(台北、源一秀、写真も)
写真:震災の短歌特集を組んだ台湾・義守大学応用日本語学科発行の雑誌「ゆうかりぷた
す」=源一秀撮影