総統府に宿泊 「台湾は知れば知るほど面白い」 作家・片倉佳史、真理夫妻

 外国人観光客に台湾文化や魅力を発信するための企画「来去総統府住一晩(総統府に一泊しよう)」(中華文化総会が実施)キャンペーンは2019年に始まる。世界で初めての国家元首官邸での宿泊を開放するという試み。

 この年は、日本人としては台湾ブロガー・フリーライターのCAM(キャム)さんこと石井三紀子さんが当選。10月に総統府に1泊し、後日、YouTubeに下記の動画をアップしている。

◆來去總統府住一晩(台湾総統府に泊まろう) 中文・日本語字幕 

 今年も4月から6月末の募集期間に28ヵ国から100組近くの応募があり、あまりの多さに10組から15組に増やしたという。日本からは2組が当選し、1組は日本人Youtuberで「しおりのなんとなく日常」のしおりさんで、9月に宿泊。もう1組は台湾在住の片倉佳史(かたくら・よしふみ)さんと真理さんで、10月18日に宿泊。

 片倉さんと言えば、本会でも「台湾の達人・片倉佳史さんと行く台湾200%満喫の旅」を10回以上実施し、本会の千葉県支部での連続講演や、恒例の「日台共栄の夕べ」講演していただくなど、本会会員などにもおなじみの台湾在住作家。1997年に渡台、今年で26年目となる。

 著書も多く、『旅の指さし会話帳』をはじめ『台湾に生きている「日本」』『古写真が語る 台湾 日本統治時代の50年』『台北・歴史建築探訪 日本が遺した建築遺産を歩く』『台湾のトリセツ』など、台湾を知るためには必読と言ってよい著作が少なくない。奥さんの真理さんも台湾の食文化にめっぽう詳しい。ご夫妻での共著に『台湾探見 Discover Taiwan─ちょっぴりディープに台湾(フォルモサ)体験』もある。

 宿泊した翌10月19日、台湾の中央通信社がインタビューしてYouTubeにアップ。また記事として報道した。「台湾にはホスピタリティーの精神があふれている」「そこに支えられて今の自分たちがいる」と話していることを紹介している。お二人とも「知ったかぶり」をせず、台湾の酸いも甘いも知ったうえで、台湾への感謝の心というのだろうか、台湾への「報恩」の姿勢は一貫している。

—————————————————————————————–総統府に宿泊 「台湾は知れば知るほど面白い」 作家・片倉佳史、真理夫妻【中央通信社:2023年10月28日】https://japan.focustaiwan.tw/culture/202310280001

◆動画:片倉夫婦入住總統府 鍾愛熱情寶島|中央社影音新聞(5′08″)*日本語 

(台北中央社)さまざまな分野で影響力を持つ外国人を北部・台北市の総統府に1泊招待するイベントで、台湾在住の日本人作家、片倉佳史、真理夫妻が18日、宿泊した。19日には中央社の取材に応じ、「知れば知るほど面白い」と台湾の魅力を語った。

 同じ大学の先輩と後輩の関係だった2人。旅行を通じて台湾に引かれ、移り住んだ。在住歴は20年を超え、執筆だけでなく、講演活動やテレビ・雑誌などの台湾取材のコーディネートにも携わる。

 だが、2人は文化や歴史、自然など、詳しいことについては「知らなかった」と口をそろえる。そんな状態でも「台湾の人たちはいろいろなことを教えてくれた」、「とても親切だった」と佳史さん。「台湾にはホスピタリティーの精神があふれている」とし「そこに支えられて今の自分たちがいる」と話す。

 長年にわたる滞在を通じ、多くの台湾人と触れ合った。佳史さんに忘れられないエピソードを聞くと、離島の澎湖でオートバイに乗っていた際、ガソリンがなくなり、困っていたところ、通りかかった台湾人がホースを買いに行き、自分の車のガソリンを分けてくれたことを挙げた。ガソリン代を渡そうとすると「困った時はお互いさま。次誰か困っていたら助けてあげてね」と言われ、感動したと目を細める。

 2人は食文化にも精通。バリエーションが豊富だとその魅力を語る。前日には台北市の高級ホテル「パレ・デ・シン」(君品酒店)内の中華料理店「頤宮」で食事をした。佳史さんは、広東料理だったとしながらも「台湾のテイストが入っていて、進化したもの」とし、その独自の進化について「台湾が世界に誇れるもの」だと絶賛。また台湾で一般的な食材であるタロイモを挙げ、名産地とされる中部・台中市大甲産や南部・高雄市甲仙産が特においしいと太鼓判を押し、小さい島の中に存在する地域性も台湾の特色だとした。

 今回日本統治時代に建設された総統府に宿泊したことについて佳史さんは、外国人が宿泊できるようにした発想力やセンスは「現在の台湾だと思う」と指摘。「歴史はもちろんのこと、今の台湾を勉強して、台湾の人たちが将来何をしようとしているのかということを見させてもらった」と語った。

 真理さんも「部屋の中に台湾の若い人たちがつくったブランドのインテリアやアメニティーがたくさんあって、泊まるだけで台湾のデザインを知られて、面白かった」と多くの発見があったとした。

 真理さんは台湾の若者との交流の中で「台湾人は台湾の土地に対して自信がないという話をよく聞く」という。だが「本当に多様な文化があるので、もっと自信を持ってほしい」と願う。佳史さんは「文化や自然、歴史に対する自信を基にもっと大きなものを作ってもらえれば、面白くなるのでは」と話し、さらなる魅力の増大に期待を寄せた。

(編集:齊藤啓介)

※この記事はメルマガ「日台共栄」のバックナンバーです。


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