かし90年代前半は、日本において「台湾の鉄道ファン」は珍しい存在であり、その台湾で
はさらに珍しく、鉄道に関する書籍もほとんどありませんでした。
その原因は、台湾は91年まで「準戦時下」にあり、人員や兵器、食糧などの輸送にあた
る「兵站(へいたん)」である鉄道の写真撮影は制限されていたからです。自由に写真が
撮れなければ鉄道誌は発行されず、ファンも増えません。
ところが90年代後半、写真撮影の制限が緩和されたことにより、「台湾の鉄道ファン」
が大幅に増加しました。テレビで台湾を取り上げた番組が増え、旅行ガイドにも「鉄道の
旅」が取り上げられるようになりました。
当時からそのような番組に情報を提供したり、旅行ガイドに鉄道関係の記事を執筆して
きたのが、台湾在住のフリーランス・ライターで、今般刊行された『台湾鉄道の旅』(JTB
キャンブックス)の著者、片倉佳史(かたくら・よしふみ)さんです。
「鉄ちゃん」こと「鉄道ファン」と言っても実際はいろいろな分野に分かれます。本書
は最も多数派である「撮り鉄」向き、といえます。車両や施設、資料的な事柄は最小限に
留める一方で、写真はテンコ盛りです。実際、よくもまぁこんなに撮り歩いたものだと心
底感心します。
また、本書は鉄道に特化した観光ガイドでもあります。ワンポイントアドバイスあり、
B級グルメガイドあり、ミニ歴史紹介もありますので、「鉄ちゃん」じゃない人にも自信
を持ってお勧めできます。
最後に「台湾鉄ちゃん」からの注意事項。
鉄道の撮影制限は実質なくなりましたが、やはりマナーと常識を忘れてはいけません。
車両基地や工場、電気設備などを撮影する場合は、必ず現場関係者の許可をとるように!
間違って軍事施設を撮影してしまうと、警察に連行されることもあります。ご注意を!
日台鉄路愛好会幹事 片木 裕一
◆著 者:片倉佳史
◆書 名:台湾鉄道の旅
◆版 元:JTBパブリッシング
◆定 価:1,785円(税込み)
◆発 売:2011年7月29日
http://www.rurubu.com/book/detail.aspx?isbn=9784533083327
*片倉佳史氏のHP「台湾特捜百貨店」ではさらに詳しく内容を紹介しています。
http://katakura.net/