禁輸の福島など5県産品からストロンチウム90未検出を台湾政府が公表

 去る5月14日、台湾が輸入を禁止している5県(福島県、茨城県、栃木県、群馬県、千葉県)産食品(酒類を除く)について、台湾の衛生福利部食品薬物管理署が国立台湾大学に委託して実施したサンプル検査の結果、放射線物質ストロンチウム90は検出されなかったと公表した。

 この検査結果について、日本台湾交流協会台北事務所は下記のコメントを発表した。

<本調査は衛生福利部食品薬物管理署が国立台湾大学に委託して実施されたものであり,台湾の研究グループが107(2018)年度「日本産食品サンプリング検査及び調査研究」において検査した301サンプルの中から31サンプル(乾燥きのこ,茶,玄米,牛乳,干し柿,いわし,白菜,小麦粉,アイスクリーム,たまねぎ)を抽出し,当該サンプルにストロンチウム90が含まれているか検査したところ,いずれのサンプルも未検出であったという結果が得られており,この成果を関係機関に提供し,民衆へのリスクコミュニケーションを進めることとしております。>

 日本はこれまで台湾側に「科学的根拠に基づいた判断」を求めてきたが、蔡英文政権の対応は遅く、政治判断を下さないままに中国国民党が2018年11月の公民投票にかけたところ禁輸継続賛成が多く、政府自身が解決する術を失ってしまった。

 台湾政府はようやく昨年夏、検査結果から放射能物質のセシウムは検出されなかったと発表し、今年また「ストロンチウム90について専門家から懸念されていることが分かったため、リスクが高いと思われる食品について19年に調査を改めて実施。3つの機関で分析されたが、いずれも検出されなかった」と発表するに至っている。

 公民投票の結果拘束は2年。今年の11月までだが、政府自身が公表したこの結果について、蔡英文政権はどう対応するのだろうか。

◆日本台湾交流協会台北事務所:日本食品の安全性 https://www.koryu.or.jp/publications/foodsafety/

◆衛生福利部食品薬物管理署 108年度(2019年度)計画成果報告書 file:///C:/Users/YUHARA/AppData/Local/Microsoft/Windows/INetCache/IE/3GAX11R7/108%E5%B9%B4%E5%BA%A6%E3%80%8C%E6%97%A5%E6%9C%AC%E9%A3%9F%E5%93%81%E6%AA%A2%E9%A9%97%E8%88%87%E8%AA%BF%E6%9F%A5%E7%A0%94%E7%A9%B6%E3%80%8D.pdf

—————————————————————————————–日本産食品「ストロンチウム90」検出されず 専門家「理解促進を」【中央通信社:2020年7月13日】

 (台北中央社)台湾が輸入を禁止している福島など5県産食品に関する衛生福利部(保健省)食品薬物管理署の2019年度のレポートがこのほど公開された。これによれば、放射線物質ストロンチウム90は検出されなかった。同署から委託を受けて調査を実施した台湾大の姜至剛教授が12日、中央社の取材に応じ、禁輸継続を決めた国民投票の結果について、市民が科学的な考えを信頼していないことが背景あるとの見方を示した。レポートでは情報透明化など理解促進の必要性を指摘している。

 台湾は2011年3月の東京電力福島第1原発事故以降、福島、茨城、栃木、群馬、千葉の5県で生産、製造された食品の輸入を禁止。18年11月下旬に投開票された国民投票では、禁輸継続賛成が約779万票を集め、反対の約223万票を大きく上回った。可決された事項は、投票から2年間変更できないことになっているが、今年11月下旬にその期限を迎える。

 姜教授によれば、5県産食品に含まれる放射性物質のセシウム134や137の量が基準値を下回ることは18年の調査で証明されたが、ストロンチウム90について専門家から懸念されていることが分かったため、リスクが高いと思われる食品について19年に調査を改めて実施。3つの機関で分析されたが、いずれも検出されなかった。

 レポートでは、人々の関心が高い健康への影響や安全性の問題などについて、抽象的な数値だけでなく、一般人が理解しやすいよう、レントゲン検査や飛行機に搭乗した際の被ばく線量など具体的なものに置き換えての説明が必要だと指摘。産官学の資料をまとめた上での情報透明化や、原産地表示の徹底などによる消費者の権利確保についても呼び掛けた。

(張茗喧/編集:楊千慧)

※この記事はメルマガ「日台共栄」のバックナンバーです。


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