福島など5県産食品の輸入解禁を 泉駐台代表、台湾に呼び掛け

 2011年3月の東日本大震災以来、台湾は5県(福島県、茨城県、栃木県、群馬県、千葉県)産の酒類を除くすべての食品について輸入停止措置を講じています。

 これに対し、日本政府や日本台湾交流協会台北事務所をはじめ謝長廷・台北駐日経済文化代表処代表なども「科学的根拠」を示して解禁すべきだと訴えてきましたが、残念ながら2018年11月24日の公民投票において中国国民党が提案した禁輸継続が賛成多数を占め、2年間はこの措置を解除できないことが決まりました。

 日本台湾交流協会台北事務所の前代表の沼田幹夫氏も、沼田代表の後任の泉裕泰氏も、科学的根拠を基に早期の輸入禁止解除を訴えてきました。

 いかに公民投票で住民の意思が禁輸継続であろうと、科学的根拠が優先されるべきは論を俟ちません。科学的に放射能などの影響はないと証明されていれば、台湾政府は特別措置を講ずるのが当たり前です。

 実は、すでに台湾政府自身が5県産品には放射能などの影響がまったくないという科学的根拠を示しています。衛生福利部食品薬物管理署が昨年8月と今年5月の2度にわたり、いずれも放射能は検出されなかったとする検査結果を公表しています。

 泉裕泰代表は8月26日、台日の農水産物貿易に関するシンポジウムに出席、改めて「科学的データに基づいて早期に輸入規制をなくすよう呼び掛けた」そうです。

 中央通信社は泉代表の呼び掛けを伝えるとともに、農業委員会の陳吉仲主任委員が取材に対して「台湾が5県産食品の輸入を停止した後、日本の台湾向け食品輸出は減少するどころか反対に増加していると指摘。5県産食品の禁輸は台日貿易の障壁にはならないと強調した」と報じられていますが、この発言はいただけません。

 理由は簡単です。福島などの5県産品を輸入していたらもっと日本の台湾向け食品輸出が伸びていたことは容易に想定されるからです。台日貿易の障壁にはならないというこの発言は詭弁です。自己保身の発言でしかなく、5県産品の禁輸を続けている理由になりませんし、福島県などの生産者をないがしろにする発言です。中国人によくありがちなこういう自己弁護発言が日本側を傷つけているのではないでしょうか。

 むしろ、陳吉仲主任委員は、2018年の公民投票前にしっかりした検査結果を出さなかったことを反省すべきで、泉代表も早期解除に努めたいとする発言を聞きたかったのではないでしょうか。お互いを思いやる心をもって発言してきたのが日本と台湾の関係です。陳吉仲主任委員の発言は誠に残念です。

—————————————————————————————–福島など5県産食品の輸入解禁を 泉駐台代表、台湾に呼び掛け【中央通信社:2020年8月26日】

 (台北中央社)日本の対台湾窓口機関、日本台湾交流協会の泉裕泰台北事務所代表(大使に相当)は26日、台湾が2011年から実施している福島など5県産食品への輸入停止措置について、科学的データに基づいて早期に輸入規制をなくすよう呼び掛けた。台北市内で開かれた台日の農水産物貿易に関するシンポジウムに出席し、あいさつで述べた。

 台湾は2011年の東京電力福島第1原発事故発生以降、福島、茨城、栃木、群馬、千葉の5県産食品の輸入を禁止している。2018年11月の国民投票では、禁輸継続が賛成多数で可決された。可決された事項は投票から2年間は変更できないと定められているが、今年11月下旬にその期限を迎える。

 シンポジウムに出席した行政院(内閣)農業委員会の陳吉仲主任委員(閣僚)は取材に対し、国民投票を尊重するため、期限を迎える11月24日までは5県産食品の問題を解決できないと言及。経済・貿易関連の問題を処理する際に根拠としている原則として、(1)消費者の食品の安全を確保(2)産業界が影響を受けない(3)科学的根拠が必ずある(4)国際規範を参考にする─の4つを挙げた。

 また、台湾が5県産食品の輸入を停止した後、日本の台湾向け食品輸出は減少するどころか反対に増加していると指摘。5県産食品の禁輸は台日貿易の障壁にはならないと強調した。

 日本農林水産省が財務省の貿易統計を基にまとめた農林水産物・食品の輸出に関する統計によれば、台湾向け輸出額は2011年が591億円であるのに対し、2019年は904億円となっている。

(江明晏/編集:名切千絵)

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