ようやく海洋立国としての推進体制が整う。遅きに失した感は否めないが、実効性の
ある組織を構築し、戦略的な海洋政策を企画、立案、遂行しなければならない。
自民、民主、公明3党の議員立法による海洋基本法が圧倒的多数の賛成で成立した。
7月にも施行される。
基本法は、海洋政策を総合的、計画的に策定し実施する国の責務を明記し、海洋基本
計画の策定を義務づけた。
海洋政策を推進するため、内閣官房に首相を本部長とする「総合海洋政策本部」を設
け、「海洋相」を新設する。
海洋政策本部が“司令塔”となって海洋政策を国家戦略として体系化し、一元的に遂
行できるようにする。それが基本法の狙いである。
政府は、一体となって海洋戦略を立て直し、日本の海洋権益を最大限活用するための
手だてを講じる必要がある。
ただ、海洋政策本部には、全閣僚が参加する。事務局も各省からの寄せ集めとなる。
外務、文部科学、農林水産、経済産業、国土交通、環境、防衛など省の縦割りの弊害が
、そのまま持ち込まれるようであっては、到底、海洋政策本部は機能しまい。
首相、海洋相は、強力なリーダーシップを発揮し、各省の利害調整を図り、東シナ海
でのガス田開発、竹島周辺の海域調査問題などにも戦略的に対処しなければならない。
海洋基本法とともに、日本の排他的経済水域(EEZ)におけるガス田開発や試掘な
どの安全確保を目的とする海洋構築物安全水域設定法も成立した。
国土交通相が、海洋の掘削施設から半径500メートル以内の範囲で「安全水域」を設定
し、許可を得ていない船舶の侵入を禁止できるようにするものだ。
日本のEEZ内で企業による試掘作業が中国側から妨害された時、海上保安庁がそれ
を排除するための根拠となる。
1994年発効の国連海洋法条約はEEZ主権国に「安全水域」設定を認めている。中国
など主要国は安全水域への入域を禁止する国内法を整備しているが、日本は海洋政策を
統括する省庁がなかったこともあって、それを怠ってきた。
先に温家宝・中国首相が来日した際の日中共同プレス発表には、「双方の海洋法に関
する諸問題についての立場を損なわないことを前提として」、共同開発を進めるとある。
海洋基本法、海洋構築物安全水域設定法の成立で中国との交渉を進める環境も整った。
これを日中間の懸案を解決する契機にしてもらいたい。