台湾にとっても大事な「海洋基本法」の早期制定を!

読売新聞社説が「これまでなかったことの方が不思議だ」と指摘

 旧臘29日、海洋政策の強化を目的に与党が検討している「海洋政策大綱案」と「海洋基
本法案」の全容が判明した。今年の通常国会でこの法案は成立する見込みだが、この法案
の発表を受けて、読売新聞の31日の社説が「その指針や実行体制を定める法律が、これま
でなかったことの方が不思議だ」と指摘している。

 日本は、中国による石油・ガス田開発や尖閣諸島への上陸問題、あるいは北朝鮮による
工作船の侵入に対して適切な対応ができず、国益を損なってきたばかりか、主権侵害をい
たずらに見過ごしてきた経緯がある。読売の社説が指摘する通りで、まさしく「これまで
なかったことの方が不思議」なのだ。

 海洋基本法は日本にとって、ひいては台湾にとっても、非常に大事な法律となる。

 すでに日本は、平成17年4月に「アジア海賊対策地域協力協定」に署名し、同年9月に発
効している上に、それに伴って昨年11月29日に発足した「海賊情報共有センター」の事実
上のトップである事務局長をとっている。このとき日本政府は、国連代表部公使を務める
伊藤嘉章氏を事務局長の候補者に内定し各国に支持を要請したことからも、日本がこれま
でになく積極的にマラッカ海峡の安全航行のために行動したことが印象的だった。

 確かに「マラッカ海峡は年間約9万隻の船舶が往来し、世界貿易量の4分の1が通過すると
いわれ、日本にとって中東原油の80%以上が航行する重要なシーレーン(海上交通路)」
(11月30日付「産経新聞」)なのだから、日本が積極的になるのも当然だろう。

 日本のシーレーンをたどれば、マラッカ海峡の次は台湾海峡だ。マラッカ海峡の安全航
行を期するなら、台湾海峡も同じことだ。ここを紛争の海にしてはいけない。海洋基本法
の成立が待たれるのも、歯止めとしての背景があるからであり、海洋国家にふさわしい体
制と戦略を整えるためにも、早期制定に期待したい。
                     (メルマガ「日台共栄」編集長 柚原正敬)


「海洋基本法」制定目指す 資源開発へ政策一元化
【2006年12月29日 共同通信】

 エネルギーや漁業資源開発といった国の海洋政策の強化を目的に与党が検討している「
海洋政策大綱案」と「海洋基本法案」の全容が29日、判明した。海洋政策を総合的に推進
するため内閣府に「総合海洋政策会議」を置くことや、「海洋政策担当相」ポストの新設
を明記。国土交通、経済産業、農水各省などに分かれる縦割り行政の弊害を除去し、政策
の一元化を図るのが狙いだ。
 自民、公明両党は来年の通常国会に議員立法で法案を提出し、政治主導で法整備を目指
す。
 大綱では、中国や北朝鮮を念頭に「隣接国による石油・ガス田開発や工作船の侵入に適
切な対応ができず、国益を損なっている」と指摘。早期に基本法を制定し、国の態勢強化
を図るべきだと指摘した。


海洋基本法 なかったことの方が不思議だ
【12月31日付 読売新聞】

 エネルギーの9割、食糧の6割を海外に依存する日本にとって、海洋政策は国の存立に
直結する。その指針や実行体制を定める法律が、これまでなかったことの方が不思議だ。

 海洋基本法案が年明けの通常国会に提出される見通しとなった。自民、公明、民主3党
の議員でつくる研究会が法案の「概要」をまとめた。海洋政策の「基本計画」策定や、内
閣への「総合海洋政策会議」創設、「海洋政策担当相」の任命などを盛り込んでいる。

 1994年の国連海洋法条約発効で、沿岸国は経済上の主権的権利が認められる排他的経済
水域(EEZ)や大陸棚を設定できるようになった。

 韓国は、13省庁にまたがる海洋担当部局を統合し、海洋水産省を新設した。中国は、国
家海洋局に海洋関係の権限を集中した。いずれも、一元的な海洋政策の展開が目的だ。

 だが、日本は省庁ごとの縦割りの対応が目立つ。知床半島に重油まみれの海鳥の死骸(
しがい)が流れ着いた問題は、環境省が国の窓口となった。相手がエチゼンクラゲだと、
農林水産省の担当だ。漂着ゴミの処理に至っては、流れ着く先が海岸か漁港かで担当省庁
が異なる。

 東シナ海のガス田問題にしても、中国が開発に着手したのは10年以上前だ。外務、防衛
、経済産業の各省庁はそれぞれの部局で、開発が進行していることを承知しながら、黙っ
て見過ごしてきた。

 政府全体で問題意識を共有していれば、生産開始間近に慌てて開発中止を求めるような
失態は防げただろう。

 研究会の法案概要が海洋政策会議や海洋担当相の新設を盛り込んでいるのも、海洋政策
の“司令塔”不在の現状への強い危機感からだ。

 東南アジア各国と日中韓など15か国は海洋政策を協議する「東アジア海域環境管理パー
トナーシップ」を、来年度から独自の事務局を持つ地域協力の枠組みに発展させる予定だ。

 現在は国土交通省が窓口だが、資源開発や環境対策など国交省の所管外のテーマも議題
にのぼる会議だ。省庁の縦割りを引きずって国際的動向から取り残されるような事態は避
けねばならない。

 科学的データがあれば可能な大陸棚の延伸も、データ提出の期限まで2年余りとなった
。海上保安庁が海底の地形調査を進めているが、延伸申請に向けた準備にも本腰を入れる
必要があろう。

 これまでの遅れを一刻も早く取り戻して、海洋国家にふさわしい体制と戦略を整える時
だ。海洋基本法案は、通常国会で成立させるべきである。


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