松原遠く…と歌い始める文部省唱歌「海」や「われは海の子」「浜辺の歌」など、四
方を海に囲まれた日本には海辺の光景を歌った名曲が数多い。海が身近な存在であった
ことの何よりの証しだろう。しかしいま、それらはあまり歌われなくなり、海への意識
も遠くなった。
このほど成立し7月にも施行される海洋基本法は、総合的な海洋政策を進めていく要
諦(ようてい)である。海への意識を喚起し、国際的には周回遅れとされる海洋戦略を
早急に構築してほしい。
「海洋国家」であるはずなのに、これまで基本法制定には強い関心は払われてこなか
った。統括省庁もなく担当大臣もいない。国としての海洋戦略は何もなかったに等しい。
いま、日本の周辺海域には多くの国家間問題が存在する。中国とは東シナ海のガス田
開発、韓国との竹島付近での海域調査、ロシアとの北方領土、そして北朝鮮の工作船暗
躍、台湾も含む近隣諸国との漁業問題などだ。
国際社会は1994年、海洋の保護と有効利用を目的に国連海洋法条約を発効させた。
条約は、沿岸12カイリの領海と200カイリの排他的経済水域(EEZ)をその国の管理海
域とすると定めた。アジアでいち早く反応したのが中国と韓国だ。海洋問題の責任官庁
を設けて戦略としての海洋政策を推進、ガス田開発や海域調査は条約への素早い対応に
ほかならない。
ところが、日本では海洋問題の管轄は、資源開発が経済産業省、漁業は農林水産省、
港湾整備は国土交通省など8省庁に分かれて、対応は後手にまわった。有事の際の海上
自衛隊と海上保安庁の役割分担も判然とせず、海洋国家とはいえない状態が続いている。
基本法では、海洋基本計画策定を義務付け、首相を本部長とする総合海洋政策本部を
設置、海洋担当相を置くとする。政策本部で国家戦略としての海洋政策が推進されるが、
従来の縦割りが存続するようだと機能しない。
政策遂行には国内法整備に加え、情報収集や調査分析が不可欠となる。国際会議で各
省庁からの担当者がめまぐるしく代わるようでは、ますます蚊帳の外に置かれてしまう。
日本を真の海洋国家に変えるためにも、専門家の育成を含めた体制づくりが急務だ。
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