日本版台湾関係法の制定を急げ(下) 林 建良(台湾独立建国聯盟日本本部中央委員)

台湾独立建国聯盟日本本部の中央委員で本会常務理事の林建良(りん・けんりょう)氏
が日本政策研究センター(伊藤哲夫代表)が発行する月刊誌「明日への選択」5月号の「一
刀論断」欄で「日本版台湾関係法の制定を急げ─中国の勢力拡大を防ぐ第一歩」を発表し
ている。

 林建良氏はすでに本会の機関誌『日台共栄』4月号の巻頭言で「日本版『台湾関係法』の
制定を」と題して発表し、それを本誌でも掲載したが、この「明日への選択」では、アメ
リカが「台湾関係法」を制定した意図を解説しつつ、さらに詳しく問題点を指摘し、日本
と台湾の法的根拠を欠く「歪んだ外交実態」をえぐり出している。

 通常、「明日への選択」の「一刀論断」欄は見開き2ページだが、5月号は特別バージョ
ンで3ページにわたっている。3回に分けてご紹介したい(今回が最終回)。

 なお、林建良氏のプロフィールは本誌編集部で作成し掲載したことをお断りする。ま
た、クオリティが高いと好評の「明日への選択」は年間購読もできるが、1冊でも購入でき
る。お申し込みは日本政策研究センター(電話03-5211-5231/FAX03-5211-5225)まで。

 また、最終回になっての掲載となってしまったが、アメリカが1979年4月10日に制定した
「台湾関係法」(発効は1979年1月1日)の邦訳を下記にPDF版で紹介したい。

◆台湾関係法
 http://www.ritouki.jp/data/TaiwanRelationsAct.pdf

◆日本版「台湾関係法」の制定を 林建良(日本李登輝友の会常務理事)[2012/3/31]  http://melma.com/backnumber_100557_5527838/

◆日本政策研究センター
 http://www.seisaku-center.net/


日本版台湾関係法の制定を急げ(下)─中国の勢力拡大を防ぐ第一歩

                   林 建良(台湾独立建国聯盟日本本部中央委員)

【明日への選択:平成24年5月号「一刀論断」】

◆法的根拠を与えるアメリカの台湾関係法

 同じく台湾と外交関係を持たないアメリカはどのように台湾に対処しているのだろう
か。アメリカは1979年に台湾の中華民国政権と断交後、時間をおかずに国内法である台湾
関係法を制定した。

 なぜ国際法ではなく国内法なのか。筆者は1999年にハワイで開催した世界台湾同郷会の
会議において、アメリカが台湾に関する法律を設定することは台湾に対する内政干渉にな
らないか、という質問をリチャード・ブッシュ米国台湾関係協会理事長にぶつけてみた。

 彼は、台湾と断交したからといって、台湾は中国の一部になったわけでもなければ、消
えたわけでもなく、アメリカにとって台湾は重要な存在であることには変わりがない。だ
から国交のない台湾にどう対処していくのかの法的根拠が必要だ。これはアメリカの国益
の観点から制定した法律であり、アメリカ国民に対する義務を持つ国内法になるのだと答
えた。これは日本にも通じる道理であろう。

 アメリカの台湾関係法は全18八条で構成されており、主な目的は台湾との接触に法的根
拠を与えることだ。

 その主な柱は4つある。台湾の平和と安定がアメリカの国益に合致することの明文化(第
2条B項)。台湾との関係を中断することなく1979年以前に締結した条約にそのまま効力を
持たせる(第4条)。台湾への防衛性武器供与と台湾の安全を守ることの義務付け(第3条)。
台湾に関する事務を議会の監督下で行うこと(第14条)。

 このようにアメリカの対台湾政策は、国益に基づいて立法されており、議会の監督の下
で行われている。

◆日本の安全に直結する日本版台湾関係法

 日本には台湾との外交を遂行するために法的根拠が不可欠で、日本版台湾関係法の制定
が急務であるとの識者の声もある。実際に2005年、平成国際大学の浅野和生教授が「日台
関係基本法」の試案を発表した。法的根拠のない外交の難しさを体感していた当時の許世
楷駐日台湾代表はこの試みを高く評価している。浅野氏の試案はあくまでも現在行ってい
る日台問の外交業務の法案化に過ぎないが、現存の民間ベースの取り決めを法案化するこ
とにこそ重大な意義があるのだ。

 日本版台湾関係法の制定が必ず中国の強い抗議にあうことは簡単に予想が出来る。日本
に有益なことであれば、いつでも中国は必ず反対するのだ。靖国問題であろうと憲法改正
問題であろうと中国は常に異議を唱え、その都度日本は萎縮して国益に反する方向に引っ
張られる。

 だが、中国が強大になったからこそ、日本版台湾関係法の必要性が更に高まる。中国の
台湾併合の野心が日に日に高まっており、台湾が中国のブラックホールから抜け出すこと
も以前より困難になっている。このままでは台湾が中国の一部になるのはもはや時間の問
題だ。そうなると中国の潜水艦が自由に台湾の東海岸から太平洋を通って日本の裏庭に進
出し、日本国の命運も完全に中国に扼される。

 こうした事態を防ぐ第一歩が、台湾と一国レベルで連携出来るようにする法的整備であ
ることは言うまでもない。日本の台湾関係法制定は台湾人にとっても絶大な励ましにもな
り、台湾は歓迎している。勿論それが出来るかどうかはひとえに日本人の覚悟にかかって
いるのだ。                                                                        (了)


林建良[りん・けんりょう] 1958(昭和33)年9月7日、台湾・台中市生まれ。1987(同
62)年、日本交流協会奨学生として来日。東京大学医学部博士課程修了。医学博士。2001
(平成13)年6月、在日台湾同郷会会長の折、日本において在日台湾人の外国人登録証明書
の国籍記載「中国」の「台湾」への改正をめざした「正名運動プロジェクト」を発足。
「台湾正名運動」の発案者。現在、メルマガ「台湾の声」編集長、日本李登輝友の会常務
理事、台湾独立建国聯盟日本本部中央委員、在日台湾同郷会顧問、日光日台親善協会顧
問。主な著書に『日本よ、こんな中国とつきあえるか?─台湾人医師の直言』(並木書
房、2006年)、漢文版『母親e名叫台湾─「正名運動」縁由』(一橋出版社、2003年)な
ど。


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