「明日への選択」5月号より転載
台湾独立建国聯盟 日本本部中央委員 林 建良
日本の台湾に対する姿勢は二通りある。一つは台湾をかつての同胞として情を持って接し、一つは中国の目線に合わせて接すると言うものだ。
したがって台湾を一つの独立した実体とみている国民が多くいるにも関わらず、外交では中国に気兼ねして台湾との表の交流を避けてきた。
●二つの神話に基づく日本の対台湾外交
日本はなぜ、かつて統治してきた台湾に対して冷淡な外交を行うのか。
その原因は戦後の日本の台湾に対する外交が、「二つの神話」に基づいて行われてきたからであろう。先ず1972年までは、台湾へ逃げ込んだ国民党政権を「中国を代表する唯一の合法政権」として承認していたこと。そして1972年以降は、共産党政権を「中国を代表する唯一の合法政権」として承認し、台湾を中国の一部と言い張る中国の主張を「理解して尊重」するとしたことである。
台湾の国民党政権が全中国を代表すると言うのは当然神話であるが、台湾を中国の一部とすることも同じく神話である。いずれも台湾人の存在を無視した外交姿勢だ。
それでも日台間の関係が比較的に円滑に保たれているのには二つの要因が考えられる。それは台湾人の強い親日感情とアメリカの存在だ。台湾人の親日感情が日台関係にプラスに働くことは当然のこととしても、アメリカの存在が日台関係にどのように影響しているのだろうか。
そのキーポイントはアメリカの国内法である「台湾関係法」だ。
アメリカは、台湾関係法を制定して台湾を中国とは別個の存在にし、台湾に対する外交を行う法的根拠を与えている。台湾関係法には「同地域の平和と安定は、合衆国の政治、安全保障および経済的利益に合致し、国際的な関心事でもあることを宣言する」(第二条B項2)と明文化するとともに、台湾有事の際にアメリカ政府がしかるべき行動をとるように義務付けている(第三条C項)。
台湾関係法によって台湾は実質的にアメリカの同盟国になり、日本とも間接的な同盟関係にある。こうしたアメリカの介在によって、日本の南西海域の安全が保障されており、日本もアメリカの台湾関係法の恩恵に与かっているのだ。しかしこの二つの要素のいずれにしても日本はイニシアチブをとっていない。日本のシーレーンを扼している台湾との関係維持を、日本はただ台湾人の親日感情やアメリカの台湾関係法に依存するばかりである。