情報不足 住民の不安増幅 台湾の台風死者103人

【8月13日 東京新聞】

 【旗山(台湾南部高雄県)=栗田秀之】台風8号による記録的な豪雨に見舞われ、深刻
な被害が広がっている台湾南部では、台風上陸から五日たった十二日も多数の人々の消息
が不明のままだ。軍ヘリコプターによる救助活動の拠点、高雄県旗山の中学校では、安否
を気遣う家族らから情報不足と政府の対応の遅れを指摘する声が渦巻いている。

 当局によると十二日夜までに死者は百三人、行方不明者は六十一人。死者数には十一日
の救援活動中に墜落したヘリの乗務員三人が含まれている。

 九日朝に土石流が発生し、多数の住民らが生き埋めになった恐れがある小林村など高雄
県内の五つの集落には、陸路が完全に遮断されているため、十二日も早朝からヘリが飛ん
だ。中学校との間をピストン輸送し、約三百四十人を救助した。

 この日は馬英九総統が中学校を訪れ、家族らの帰還を待ち続ける人々を激励、「全力で
救援活動に当たっており、現地入りしている特殊部隊にさらに奥に入るよう指示している」
と理解を求めた。

 ただ、小林村の被害実態は依然はっきりしない。前夜には約二百人の生存を軍が確認し
たとされるが、七日以来、携帯電話もつながらない父母を中学校で待ち続ける女性(51)
は「生存者情報が減ったり増えたりする」と疲れ切った様子。小林村同様、被害が甚大な
建山村で妹が行方不明の陳永坤さん(40)も「情報がない。各村に情報拠点を設置すべき」
といらだちを隠さない。

 十一日になってから軍の本格的な救援活動が始まった点にも批判の声が上がっている。
宝来村の男性は「(一九九九年の)台湾大地震の時はすぐに軍が本格出動した」と話し、
初日から現場に入った(当時の)李登輝総統を引き合いに、この日初めて中学校を訪れた
馬総統を暗に批判した。



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