尖閣諸島問題─「棚上げ」合意存在せず  池田 維(元交流協会台北事務所代表)

日本の固有領土である尖閣諸島をめぐり、政府が、警告に従わない領空侵犯した無人機
に対し撃墜を含めた強制措置を取る方針を固めたことについて、中国は「一種の戦争行為
であり、われわれは果断な措置で反撃する」と反発している。

 また、10月26日に北京市内で開かれたシンポジウム「東京−北京フォーラム」でも、唐
家[王施]・中日友好協会会長は「中国側は自制を保っていた。領土主権維持のため対抗措
置を取らなければならなかった」などと日本批判を展開し、「尖閣をめぐる問題の棚上げ
と歴史の正視を日本側に要求した」(産経新聞)という。

 日本の中には、中国の主張する尖閣諸島棚上げ論を支持する向きもないではないが、外
務官僚として日中平和友好条約の締結にも携わった元外務省アジア局長で交流協会台北事
務所代表(駐台湾日本大使に相当)の池田維(いけだ・ただし)氏が、これまで日本は棚
上げ論に合意したことはなく、中国の一方的な言い分に過ぎないと駁論している。

 池田大使には同じテーマの論考が2本あり、1本は10月5日付けの読売新聞「論点」に寄稿
された「尖閣諸島問題─『棚上げ』合意存在せず」で、もう1本はそれをさらに詳細に論じ
た「霞関会」会報7月号に掲載された論考だ(2012年10月27日「アジア問題懇話会」におけ
る講演録「尖閣領有権に『棚上げ』はあったか?」)。

 外務官僚出身者には秘守義務がある。しかし、その義務をまっとうした上で正論を堂々
と述べる外務官僚出身者は少ない。池田大使の発言が貴重な所以である。

 特に後者の論考において池田大使は「歴史の生き証人」として、日中平和友好条約交渉
の最大の懸案事項だった「覇権反対条項」をめぐり、トウ小平が当時、「もし将来、中国
が覇権を求めるようなことがあれば、日本がそれに反対してほしい」という趣旨の発言を
したことなどを紹介している。

 いずれ本誌で「霞関会」会報7月号に掲載された論考全文を紹介するが、ここでは読売新
聞掲載された論考を紹介したい。下記のプロフィールは読売新聞に掲載されたもの。

池田維(いけだ・ただし)
立命館大客員教授。外務省アジア局長、官房長などを経て2005年から08年まで(財)交流
協会台北事務所代表。74歳。


尖閣諸島問題 「棚上げ」合意存在せず

                                   池田 維

【読売新聞:2013年10月5日「論点」】

 中国の公船が尖閣諸島沖の領海内に頻繁に侵入し、日中間の緊張が高まっている。かつ
て外務省で日中実務関係に長年携わってきたひとりとして、尖閣の領有権について事実関
係を明確にしておきたい。

 日本政府が約10年間にわたる現地調査を経て、国際法にかなった方法で同諸島を日本領
に編入したのは1895年1月である。それ以来、1971年までの76年間にわたり、中国も台湾も
日本の領土であることに異議を唱えたことはない。

 領有権の主張を始めたのは、この海域の石油資源埋蔵の可能性を国連機関の調査が明ら
かにしてからだ。

 尖閣は沖縄の一部として米国の占領下、および施政権下に置かれた一時期(1945〜72)
を除き、一貫して日本の有効な支配下に置かれている。戦前の一時期には200人以上の日本人が居住していた。

 いわゆる「棚上げ」論については、日中双方が何らかの問題の存在を共に認め、その解
決を先送りするということに合意したことはない。近年公開された外交文書の中の72年の
国交正常化交渉の際の田中首相・周恩来首相の会話、78年の福田首相・トウ小平副首相の
会談のいずれにも「棚上げ」の合意は存在しない。

 前者においては、田中首相が「尖閣のことをどう思うか」と水を向けたら、周首相は
「石油が出るから問題になった。今は話したくない」という短い会話に終わっている。後
者では、トウ副首相から「自分たちの世代には知恵がないから次の世代に任せたい」との
趣旨の発言があったが、福田首相は一切応答していない。トウ副首相は後の記者会見で
「こういう問題は一時的に、または10年間棚上げしても構わない」と発言している。巧み
な言い回しだが、あくまでも一方的な発言だ。

 この記者会見の14年後の92年に中国は国内法「領海及び隣接区域法」を突如制定し、尖
閣諸島を自国の領土に編入した。日本は直ちに抗議したが、これは「棚上げ」論と重大な
矛盾をはらむ。中国が「棚上げ」論を言うなら、まず国内法を改正ないし廃棄してからに
すべきだ。

 中国は「日本が戦争で尖閣諸島(中国名・釣魚島)を盗んだ」と主張することもある。
だが、日清戦争終結後の下関条約(1895年4月)で、日本が割譲を受けたのは台湾と澎湖諸
島のみで、尖閣諸島は交渉の対象とはなっていない。

 さらに、中国は最近、「カイロ宣言」「ポツダム宣言」を引用し、日本が両宣言を受け
入れた結果、第2次大戦後、尖閣は「台湾の付属島嶼(とうしょ)」として、台湾、澎湖諸
島とともに中国(中華民国)に返還された、という言い方もしている。しかし、もし仮に
当時、尖閣が「台湾の付属島嶼」と国際的に認識されていたならば、米国がこれを沖縄の
一部として自らの施政権下に置くことはありえなかったはずである。

 日中双方が利益を得ることが出来る「戦略的互恵関係」が発展すること自体は歓迎され
るべきだ。ただ、その場合にも、領土・主権を犠牲にしてまで安易な妥協をし、後日に禍
根を残してはならないだろう。


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