外務省が台湾訪問に関する内規を撤廃! 和田有一朗議員の質疑で明らかに

 5月10日の衆議院外務委員会において林芳正外務大臣は、和田有一朗・衆議院議員(日本維新の会)による日台間の要人往来の質疑に対し「課長級までに制限されている台湾渡航というお尋ねでございますが、台湾出張者を原則課長級未満とするなどを定めた内規、これは現在存在しておりません」と答弁し、現在、外務省の内規はすでに存在していないことを明らかにした。

 林外務大臣はまた、和田議員から台湾要人の訪日について「台湾から、総統を始め副総統、外交部長、国防部長、行政院長の、トランジットでもしたいと言ってきたときにどうしているのか。日本は認めていないというのは事実なのか」との質疑に対しても「こうした立場(編集部註:台湾との関係を非政府間の実務関係として維持していくという従来からの立場)を踏まえまして個別具体的な状況に応じて対応するということにしておりまして、いわゆるハイレベルの訪日やトランジットを全面的に認めないというようなことはしておらない」と答弁、台湾の総統や副総統などのハイレベルの訪日であっても、個別具体的な状況に応じて認めていると明言した。

 これにはビックリした。一大方針転換だ。

 まず外務省の内規についてだが、この内規は外務省が1980年(昭和55年)に制定し、国家公務員の課長クラス以上の訪台は認めず、他省庁も拘束するものだった。

 しかし、2002年(平成14年)8月、第一次小泉内閣当時、外務大臣政務官だった水野賢一(みずの・けんいち)衆議院議員が政務官としての台湾訪問を希望したところ、当時の川口順子(かわぐち・よりこ)外務大臣は「政府の方針に照らして認められない」と受け入れず、水野議員は8月下旬に政務官を辞任した。政府の方針とは外務省の内規だった。

 そこで、水野議員はその年の11月22日、衆議院外務委員会でこの外務省内規について質すと、外務省は答弁で内規改定を約束し、11月25日に改定する。

 当時の産経新聞によると、改定の内容は、これまで「課長級未満」に限って出張を認めていたものを「課長級以下」と改め、「課長級」より上位の職員の出張は、世界貿易機関(WTO)など日台双方が正式メンバーとして加盟する国際的枠組みに関する要務である場合は柔軟に対応と改めたという。

 ところが、その後、2011年5月4日には、衛藤征士郎(えとう・せいしろう)衆議院副議長が訪台し、8月12日には溝畑宏(みぞはた・ひろし)観光庁長官が訪台した。衆院副議長も観光庁長官の訪台も初めてのことで、当時、国会議員などに当ってみたところ、外務省はこの内規を撤廃したようだということだった。

 今回の林外務大臣の答弁により、現在、外務省内規は存在していないことが明白になり、10年来の疑問が解けた。

 一方、これまで台湾からは総統はじめ副総統、外交部長、国防部長、行政院長の日本への訪問はトランジットでも日本は認めていないと言われてきた。しかし、これについても林外務大臣は「個別具体的な状況に応じて対応」し「ハイレベルの訪日やトランジットを全面的に認めないというようなことはしておらない」と、日本政府の方針が変わったことを明らかにした。

 すでに外務省も防衛省も、台湾との安全保障対話であっても禁止する法令がないことを明らかにしている。

 かくて現在の日台間では、たとえ安全保障に関する対話であっても、法令的に問題はなく、日台双方の政府要人によるハイレベル訪問も、「個別具体的な状況に応じて」という留保はつくものの、原則として問題がないことが明らかになった。

 これは大きな一歩であり、前進だ。

 台湾有事は日本有事となる可能性がある中、台湾との直接の政府間対話には問題がないと明らかになったのだから、今後の政府の対応におおいに期待したい。

 これまで日台間のことは、日本側は日本台湾交流協会、台湾側は台湾日本関係協会が窓口として協議してきたが、今後は実務の「個別具体的な状況に応じ」、外務省や防衛省などから訪台し、台湾からも訪日して、実務関係がいっそうスムーズにかつ短時間で済むよう積極的に進めてもらいたいものだ。

◆和田有一朗・衆院議員:衆議院インターネット審議中継[2023年5月10日] https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=54593&media_type= *10時41分〜11時22分(2:01:00〜2:41:25) *台湾関係の質疑応答は2:24:58〜2:41:25

──────────────────────────────────────

※この記事はメルマガ「日台共栄」のバックナンバーです。