変換キー:指導力回復、剣が峰 陳総統、見えぬ気迫[毎日新聞 庄司哲也]

【1月16日 毎日新聞】

 新年を迎え、1枚の年賀状が届いた。台湾の最高峰・玉山の写真がデザインされた年賀
状の送り主は、陳水扁総統と呉淑珍総統夫人だった。台湾ではありふれたスタイルの年賀
状で名前が書かれていなければ誰から来たものか分からなかった。

 昨年の年賀状は、体が不自由な呉夫人の車いすを押す陳総統の写真が印象的だった。陳
総統の姿がどこにもない今年の年賀状が総統をとりまく厳しい現状を示している。

 昨年は陳総統にとって散々な年だった。

 娘婿がインサイダー取引で実刑判決を受け、呉夫人は総統府の公費を横領したとして起
訴された。相次ぐスキャンダルが噴出してマスコミをにぎわせたが、総統の政治指導者と
しての存在感は希薄だった。

 昨年末の台北、高雄の両市長選は与党・民進党が地盤の高雄市を死守し、民進党の勝利
とも言えた選挙だった。だが、陳総統が果たした政治的役割はほとんどなかった。スキャ
ンダルで身動きが取れなかったからだ。

 陳総統の残る任期は1年4カ月あるが、その指導力に注目が集まるのはこれからの半年
だけかもしれない。今春には08年の次期総統選に向けた与野党の候補者選出が本格化する
。そうなれば、台湾の人々の関心は次期総統選の候補者たちへとシフトしていく。

 また、今年は台湾の現憲法が施行から60年を迎える。陳総統は国民党政府が中国大陸を
統治していた時代に制定された憲法は時代にそぐわないとし、2期目の総統就任時に台湾
の現状に即した新憲法の施行を公約した。この公約が守れるかどうかもあやしくなってき
た。

 陳総統は08年の任期終了までの施行を目指しており、年内にはめどをつけなければなら
ないが、改正には立法院(国会)で4分の3以上の賛成という高いハードルが待ち受ける
。立法院で与党は過半数割れの状態だ。総統は憲法改正問題でも身動きがとれなくなる可
能性がある。

 陳総統は、昨年の元旦の祝辞で「07年に新たな憲法制定に向けた住民投票の実施は不可
能ではない」と憲法改正に触れる発言を行っていた。だが、その年を迎えた今年の元旦の
祝辞には憲法改正の言葉は見当たらなかった。

 年賀状や新年の祝辞からは陳総統の政治指導者としての気迫は伝わってこない。

                                【台北・庄司哲也】


●メルマガのお申し込み・バックナンバーはホームページから
 http://www.ritouki.jp/
●投稿はこちらに
 ritouki-japan@jeans.ocn.ne.jp


日本の「生命線」台湾との交流活動や他では知りえない台湾情報を、日本李登輝友の会の
活動情報とともに配信するメールマガジン。
●マガジン名:メルマガ「日台共栄」
●発   行:日本李登輝友の会(小田村四郎会長)
●編集発行人:柚原正敬




投稿日

カテゴリー:

投稿者: