和田有一朗議員が衆院外務委員会で「日中共同声明の解釈を変えるべき」と主張

 本誌では、和田有一朗・衆議院議員(維新)が予算委員会や外務委員会において日台関係について舌鋒鋭く迫る質疑に注目し、これまで日中共同声明の解釈問題や台北駐日経済文化代表処の職員の外交官としての処遇問題、外務省の内規問題、日台の要人往来や政府間対話問題など、日台関係の深化を妨げている様々な問題を取り上げていることを、その都度紹介してきた。

 5月31日の外務委員会では、先般の広島で開かれた先進7カ国首脳会議(G7サミット)の「G7広島首脳コミュニケ」における政府の中国認識や日台間の要人往来、外務省の内規問題などについて、約30分の質疑に立った。

 本誌が注目したのは、林芳正外務大臣をはじめ政府答弁では、台湾のことを質疑すると必ず枕詞として「1972年の日中共同声明を踏まえ、台湾との関係を非政府間の実務関係として維持していくという従来からの立場」を持ち出すことについて、和田議員は業を煮やしたように「台湾のことをずっと聞いてきて、絶えずもっとも大切な友人だとか大事なパートナーだとか言いますけれど、もし台湾を失ったら日本はどうなるのか」と迫ったことだ。

 これに対して、林外務大臣は「仮定の状況につきまして政府としてお答えすることは適切ではなく、差し控えたい」と答弁を拒否し、「日本にとっては基本的価値観を共有し、緊密な経済関係と人的往来を有する極めて重要なパートナーであり、大切な友人」が日本政府の従来とってきた立場だと述べ「両岸関係を注視しながら、日台間の協力と交流のさらなる深化を図ってまいりたい」と答弁したのだった。

 これでは和田議員の質問に答えたことにはならない。そこで和田議員は「我々にとっては生命線ですよ、台湾は。国益をまったく共有するお互いの存在ですよ。我々が台湾を失うことがあったら、日本は立ち行かないと思いますよ」と反駁し「(日本は)日中共同声明の解釈を変えないと次に進めない。中華人民共和国の主張していることを尊重しているけれども、必要に応じた対応をしてゆかないと進まない」と釘を刺し、次の質問に移った。

 今回の質疑では、台湾とは日本台湾交流協会を通じた対応を取っているが、規模が小さい出先機関で十分な情報共有や協力関係ができるのかと、防衛担当主任(防衛駐在官)の例を挙げて質してもいる。

 これに対して、林外相は「政府としても、日本台湾交流協会と常日頃から緊密に情報共有等を行って、必要な対応を取ってきている」と答弁、防衛担当主任の増員も含め、現状で間に合っているから必要ないとの認識を示している。

 和田議員は、すでに外務省にも防衛省にも、台湾との安全保障を含む対話を禁ずる法令はないことを政府側に確認している。結局、それを阻害しているのは「台湾との関係を非政府間の実務関係として維持していくという従来からの立場」を規定しているという日中共同声明となる。

 そこで、和田議員は日中共同声明の解釈変更を訴え、「台湾とは日本にとって何なのか」「日本にとっての核心的利益とは何なのか(台湾ではないのか)」とも迫ったのだが、林外相には「仮定のことについては答えられない」という得意の常套句で逃げられてしまった。

 珍しく共同通信が和田議員の「台湾は日本の生命線」という発言に食いつき、戦前の「満蒙はわが国の生命線」を持ち出し、いささか揶揄するようなニュアンスを感ずる記事を掲載した。

 台湾が日本の生命線であるという認識は、日台関係にたずさわっている者なら、ほぼ共通して持つ認識だろう。李登輝元総統の「日本と台湾は運命共同体」という指摘はつとに知られるが、その最たるものだ。台湾あっての日本であり、日本あっての台湾だ。安倍晋三元総理の「台湾有事は日本有事」と同義で、揶揄されるような事柄ではない。

◆和田有一朗・議員:衆議院外務委員会[2023年5月31日11:37〜12:06] https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=54641&media_type=*和田議員の質疑応答=2:57:20〜3:25:35/6:26:54

—————————————————————————————–維新議員「台湾は生命線」と質問 林外相は答弁控える、衆院外務委【共同通信:2023年5月31日】https://nordot.app/1036569352939520237?c=302675738515047521

 31日の衆院外務委員会で、日本維新の会の和田有一朗氏が、中国による台湾武力統一の可能性を踏まえ「われわれにとって台湾は生命線だ。互いに国益を共有する存在だ」と発言した。これに先立ち、林芳正外相に「台湾を失ったら、どうなるか」と質問。林氏は「仮定の状況に答えるのは適切でなく、差し控えたい」と述べた。

 海外の地を、日本の国益に絡めて「生命線」と表現した例として、戦前の「満蒙はわが国の生命線」がある。

 台湾を中国から守る決意を示すべきだと主張する和田氏に対し、林氏は「両岸関係を注視しながら、日台間の協力と交流のさらなる深化を図りたい」と説明した。

 中国への対応を巡り、日本は先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)で「建設的で安定的な関係を構築する用意がある」とした共同声明を発表。対話重視を強調している。

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