台湾船衝突事件で付き付けられた日本の課題は外務省内規の渡航制限解除

台湾で「尖閣諸島問題」が再燃、馬英九総統が声明

 10日に尖閣諸島の魚釣島付近で台湾漁船が日本の巡視船と接触し沈没したことを受け、
昨日の本誌で「懼れていたことが起こった」と書き、アメリカが空母を派遣した真意に
ついて書いた。

 案の定、馬英九総統は予想した通りの行動を示した。一方、中国・香港の民間団体
「保釣行動委員会」が抗議船を尖閣海域に派遣する方針を明らかにした。これもまた想
定内の反応だった。

 この衝突事件が総統選挙中に起こらなくてよかったというのが、正直な感想だ。政権
発足後のいまなら、台湾側が世論や中国国民党の急進的な立法委員を背景に、賠償要求
を含む声明を表明しても、十分に話し合いの余地がある。

 すでにこの段階で台湾側は「最も厳正な立場」(夏立言・外交部次長)を表明したの
だから、手は出し尽くした。もちろん、日本交流協会の池田代表は「領有権に関して解
決すべき問題は存在せず、要求は受け入れられない」とはねつけ、形としてはこれで済
んだと言ってよいだろう。

 中国の抗議船も、アメリカの空母が留まったままでは尖閣諸島まで行くことはできな
い。「早ければ8月か9月」と言わざるを得なかった。船を修理に出しているというのは
言い訳だろう。

 さて、馬英九総統は新政権下で初めて起こった日台摩擦に、国内処理を含めてどのよ
うに対処するか、昨日の本誌で「振り上げた拳をどこに降ろすのかを十分に考えた上で
応対すべきだろう」と書いたように、今後を注視したい。

 だが、これは日本が軽々に反応すべきでないことは当然のことで、ましてや福田康夫
首相が発言すべき場面ではない。

 日本の問題は、国家公務員としては課長までしか台湾に派遣できない規約を外務省が
設けていることだ。日台間でこのようなレベルの問題が持ち上がったとき、課長が乗り
出しても、決断する立場にないのだから、台湾側の言い分を持ち帰るだけで何も解決は
できない。

 日本は台湾との関係を「非政府間の実務関係」としているが、それであればなおさら
のこと国家公務員の渡航制限を早急に解除し、決断できる立場にある局長や事務次官が
訪台して実務レベルで話し合いができるよう外務省内規を改めるべきが、今回の衝突事
件で改めて突きつけられた日本の課題なのである。

 媚中外交と批判されても当り前のこの根本原因を、早急に解決することが日本の独立
と国益を守ることになるのである。

                   (メルマガ「日台共栄」編集長 柚原 正敬)


馬総統が尖閣の領有権主張 船舶衝突、沈没めぐり
【6月12日 MSN産経ニュース】

 【台北支局】尖閣諸島・魚釣島近海の日本領海内で日本の巡視船と台湾の遊漁船が接
触し遊漁船が沈没した事故で、台湾の馬英九総統は12日、「釣魚台(尖閣の中国語名)
は中華民国の領土である」と述べ、総統として日本に賠償などを要求する声明を発表し
た。

 声明は、(1)釣魚台は台湾に帰属する島嶼である(2)釣魚台の主権を維持する決
心に変わりない(3)日本政府の船艦がわが国(台湾)領海で、わが国の漁船を沈没さ
せ、わが国の船長を拘留したことに抗議し、船長の釈放と賠償を要求する(4)海巡署
(海上保安庁に相当)の編成と装備の強化を行い、主権と漁業権を守る機能を高める−
とした。

 馬総統はかつて尖閣の「中華民国帰属」に関する論文を書き、「日本と一戦も辞さな
い」と強硬姿勢を示したこともある。ただ、総統就任後は「実利を求める指導者は取り
扱い方を知っている」と述べ、尖閣問題は棚上げとして経済関係の強化を優先する考え
に軌道修正していた。

 だが、声明は領有権が絡む原則論では日本に妥協はしないという方針を鮮明にしたも
ので、今後の日台関係にも影響を与えそうだ。

 台湾の欧鴻錬外交部長(外相)もこの日、日本の在台代表機関・交流協会台北事務所
の池田維代表(日本大使に相当)を呼び、尖閣の帰属権を主張し、今回の日本の対応に
遺憾の意を表明した。しかし、池田代表は「尖閣が日本の領土であることは歴史的にも
国際法上も疑いがない」と反論、台湾側の主張に「領有権に関して解決すべき問題は存
在せず、要求は受け入れられない」と抗議した。


「尖閣問題」台湾で再燃 海保巡視船の接触事故を機に
【6月13日 中日新聞】

 【台北=野崎雅敏】尖閣諸島近くで10日、海上保安庁の巡視船と台湾・台北県の遊漁
船が接触し、遊漁船が沈没した事故で、尖閣諸島の領有権問題が台湾側で再燃。総統府
は12日夕、「中華民国の領土」とあらためて主張する声明を出した。

 声明は「日本の艦船がわが国の領海でわが国の漁船を沈没させ、船長を拘置したこと
に厳正に抗議し、船長の釈放と賠償を要求する」などとしている。

 外交部は夏立言次長が同日、記者会見し、領有権の主張を堅持すると強調。欧鴻錬部
長は同日、日本側の窓口機関、日本交流協会台北事務所の池田維代表を外交部に呼び、
台湾側の「最も厳正な立場」(夏次長)をあらためて伝えた。

 外交部は事故当日の発表では領有権問題に触れなかったが、国民党の立法委員(国会
議員)らが11日、政府の対応を“弱腰”などと批判していた。

 12日には国民党系の周錫●・台北県長(知事)が同事務所を訪れ、謝罪や賠償などを
要求、周辺では漁業関係者らが日本側への抗議活動を行った。
(注)●は「偉」のヘンが「王」



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