肩入れしていると思われる記事が少なくないことに気づいていた。行間から、学生たちへの思いが
にじみ出ている。本誌でよく紹介する中央通信社の記事の中にも散見された。
中央通信社のホームページには「中央通訊社(The Central News Agency、略称:中央社)は、
中華民国(台湾)の国営通信社です」と明確に記してある。国営にもかかわらず、政府寄りではな
く学生寄りの記事が散見されるのだ。
下記に紹介するのは、3月10日、学生たちが立法院を退去し、近くで集会を開いたことを伝える
中央通信社のニュース。写真もさることながら、記者の思い入れがこもる記事と感じたのは編集子
だけではあるまい。記者もまた台湾人の一人として台湾の行く末を真剣に考えているのだ。それが
伝わるだけに、短文だが感動さえ覚える記事となっている。
台湾“ひまわり学生運動” 携帯で夜空を照らし「この島の夜明け」大合唱
【中央通信社:2014年4月11日】
http://japan.cna.com.tw/news/apol/201404110003.aspx
(台北 11日 中央社)中国大陸との「サービス貿易取り決め」に抗議して立法院(国会)の議場
を占拠していた学生団体は、一部要求が認められたとして10日午後、議場を撤収した。付近ではそ
の後集会が行われ、1万人を超える人々が携帯をライト代わりに夜空にかざしながら「島嶼天光」
(この島の夜明け)を大合唱。取り決めの撤回や作業監視の法制化などを求めて24日間に及ん
だ“ひまわり学生運動”の議会占拠に終止符が打たれた。
学生らは警察の警護の下、午後6時7分より学生運動の象徴、ひまわりの花を片手に次々に議場を
退出。立法院南側の済南路はこの時すでに大勢の市民が詰めかけており、学生らを歓迎。立法院を
取り巻くように周辺の青島東路、中山南路、林森南路にも人々が続々と押しかけた。学生代表は付
近住民の24日間の忍耐に謝意を示すとともに、運動の仲間やNGO代表者などを壇上に招き、挨拶が
行われた。
夜の集会は午後8時から始まり、学生団体から発表された声明では、「議場は撤退したが運動に
終わりはなく、両岸協議の監視体制についての立法が約束通り行われるか見届ける必要がある」と
し、「もし為政者が再び国民を力で抑えつけるなら我々も抵抗の姿勢を崩すことはない」とした。
司会者は、以前は多くの人が「取り決め」問題についてよくわかっていなかったが、この運動を
通じて広く社会の議論を呼び、国際的な関心を集め、重要な一歩を踏み出すことができたとし、学
生らが議場から離れようとしなかったこの3週間余りのうちに「台湾のことが私たちの心を捉えて
離さなくなった」と語った。
午後8時30分、集会では最後に“ひまわり(太陽花)学生運動”のテーマ曲、「島嶼天光」(こ
の島の夜明け)を全員で大合唱。「夜が明けてきた 大きな声で歌おう 希望の光が島の皆を照らす
まで」―済南路に集まった1万人を超える学生や市民らが手に手に携帯を持って夜空に高くかざ
し、街中に青白い灯りがこぼれた。中には感極まって抱き合い涙する人たちの姿もあった。集会は
予定の時刻より早く終了した。
行政院は同日、学生団体が平和的に議場を退出したことは国会運営の正常化につながり、国民大
多数の期待に合致するとして一定の評価を示した。
(陳至中/編集:谷口一康)