た感が強い。会談後の台湾外交部のコメントを見ても「今回の両氏の会談によって東アジア地域の
平和と安定によい影響がもたらされれば」と述べ、台湾とアメリカの関係において「予想外」はな
いとの見方も示し、どこにもあわてるような素振りはない。
つまり、中国は米国から台湾関係ではなにも有利なポイントを引き出せなかったと見ているよう
だ。
それどころか、トランプ政権の国務副長官入りが確実視されているマット・ポティンガー国家安
全保障会議(NSC)アジア上級部長が3度にわたって、米国の「一つの中国」政策とは「中国との
3つの共同コミュニケと台湾関係法」だと表明したことを高く評価している。
この「中国との3つの共同コミュニケ」とはなにかと言えば、1972年の上海コミュニケ、1979年
の国交樹立に関するコミュニケ、1982年の第2上海コミュニケのことを指し、いずれも中国が「台
湾は中国の一部分であると主張していることを認識(acknowledges)している」とし、外交上の用
語の「承認する(approve)」や「同意する(concur)」などを使っていない。
いわば、日本と中国が1972年9月に合意した「日中共同声明」の第3項「中華人民共和国政府は、
台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中
華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する」に
ある「理解し、尊重」とほぼ同じだ。けっして承認するとか同意すると合意したわけではない。
1)上海コミュニケ(ニクソン米大統領の訪中に関する米中共同声明)【1972年2月28日】
米国は、台湾海峡の両側のすべての中国人が、中国はただ一つであり、台湾は中国の一部分で
あると主張していることを認識(acknowledges)している。
2)国交樹立に関するコミュニケ(中華人民共和国とアメリカ合衆国の外交関係樹立に関する共同
コミュニケ)【1978 年12 月15 日(1979 年1 月1 日発効)】
アメリカ合衆国政府は,中国はただ一つであり,台湾は中国の一部であるとの中国の立場を認
識している。
3)第2上海コミュニケ(中華人民共和国とアメリカ合衆国の共同コミュニケ〔米国の対台湾武器
売却問題について〕)【1982年8月17日】
アメリカ合衆国は中華人民共和国政府を中国の唯一の合法政府であることを承認し、中国はた
だ一つであり、台湾は中国の一部であるとの中国の立場をアクノレッジした。
また、米国が「防御的な性格の兵器を台湾に供給する」と定めた台湾関係法は、1979 年3 月に
上下両院で可決し、4 月10 日にジミー・カーター大統領が署名、そして中国との国交を樹立した
同年1 月1 日に遡って発効させている米国の国内法だ。
米国が首脳会談前に記者会見で「米国の『一つの中国』政策」とは「中国との3つの共同コミュ
ニケと台湾関係法」だと繰り返して説明したことに、台湾への配慮が現れている。その上、米国と
台湾の意思疎通も十分なようだ。だから台湾は、米国とはこれまでどおり「予想外ゼロ」の関係を
維持していくと表明できたのだろう。
地域の安定に寄与するいかなる対話も歓迎=外交部 トランプ・習会談
【中央通信社:2017年4月9日】
(台北 9日 中央社)トランプ米大統領と中国大陸・習近平氏との会談閉幕を受け、外交部は8日
夜、地域の一員として、地域の安全・安定に寄与するいかなる対話も好意的に受け止めるとコメン
トした。
中国大陸の政府系メディアによれば、習氏は米国と中国大陸間の信頼醸成の強化を約束。これに
ついて外交部は、両者間の軍事交流と信頼醸成措置の構築は米政府が近年推進してきた政策であ
り、関連の情勢は台湾も理解しているとし、今回の両氏の会談によって東アジア地域の平和と安定
によい影響がもたらされればと述べた。
また外交部は9日、米ホワイトハウスと国務省の高官が会談前、トランプ氏が従来の米国の「一
つの中国」政策を尊重する姿勢を示していることを3度にわたって説明した点などに言及。これは
1979年の断交以来、米政府が保持してきた立場と台米関係の「ノーサプライズ」の原則に合致する
とし、歓迎の意を示した。
(テキ思嘉、顧セン/編集:名切千絵)