よると、台湾から日本へは約146万6700人と過去最高となり(過去最高は2008年の139万228
人)、日本から台湾へも約135万人と過去最高となっている(過去最高は2011年の129万4758
人)。
日台のこのような緊密ぶりは経済にも現れだした。台湾の経済部によると、対中投資は11年
の575件、131億ドル(1兆1610億円)だったが、12年は454件、109億ドル(9663億円)に減少し
たという。3年ぶりの減少だという。
一方、対日投資は尖閣問題をものともせず、2011年の21件、2億5230万ドル(約224億円)か
ら、12年には35件、10億8900万ドル(約966億円)に伸び、日本の対台湾投資も円安にもかかわ
らず順調に伸びていると産経新聞が報じている。
記事では触れていないが、日台間で自由貿易協定(FTA)あるいは経済連携協定(E
PA)が締結されれば、さらにこの投資状況は緊密になり、台湾の対中投資は減少してゆくだ
ろう。
「尖閣買う日本」を買い始めた台湾
【産経新聞:平成25(2013)年1月26日「国際情勢分析:吉村剛史の目】
日台間の経済協力といえば、これまでは日本から台湾への投資が主体だった。しかし協議の
行方が注目される鴻海(ホンハイ)精密工業とシャープの資本提携をはじめ、台湾の大手銀
行、中国信託商業銀行(台北市)による、首都圏を地盤とする第二地方銀行の東京スター銀行
(東京都港区)の買収の動きも表面化したように、最近は台湾から日本への投資も注目を集め
始めている。台湾を中国市場進出の足がかりとしたい日本の思惑に対し、経済を軸に中国との
関係を改善し、中国市場で成功した企業が増える一方で、対日関係強化でリスク分散し、バラ
ンスを保ちたい台湾。双方の思惑が絡みあっている。
◆経済に「尖閣」影響せず
沖縄県・尖閣諸島に関しては中国同様に台湾も主権を主張しており、日本政府による国有化
の動きを受け、活動家らの抗議デモなどが展開された。
昨年9月には台湾の抗議漁船が、親中派企業家の支援を受けて尖閣に押し寄せたが、台湾の総
合雑誌「遠見」の10月号は「日本(政府)が釣魚台(沖縄県・尖閣諸島)を買う今、台湾は日
本を買う」という刺激的な見出しで特集を組んだ。
遠見の世論調査では、尖閣騒動による日本への旅行や、日本製品の購買などへの影響に関
し、60・7%が「影響しない」と回答。また経済協力については48・7%が「現状を維持」、
21・2%は「むしろ増加する」と回答。「減少する」という17・1%を大きく上まわった。
抗議デモの暴徒化で日本車などが攻撃対象となった中国と違い、「政治は政治、経済は経
済」という台湾社会の冷静さが際立ったわけだが、遠見は台湾の企業が世界へ乗り出す上で、
日本企業のブランド力や技術力、また不動産資産などが有効と分析。ハイテク産業を中心とす
る「日本買い」への勢いを紹介した。
台湾の経済部(経産省に相当)によると、台湾の対日投資は2011年の21件、2億5230万ドル
(約224億円)から、12年には35件、10億8900万ドル(約966億円)に伸長した。
◆円安も「影響ない」
台湾の中央通信社は今月17日、台湾の不動産大手「信義房屋」の日本法人に、台湾からの不
動産購入に関する問い合わせが殺到している、と報じた。
円安で物件価格が台湾元換算で2カ月間に10%下落。問い合わせは2週間で200件以上と平時の
10倍以上を記録し、実際に日本を訪れる顧客も一カ月で50組と従来の40%増に。今後は70組程
度に増加が見込まれ、休日返上の状態という。
台湾から日本の不動産への投資は、台湾での不動産取得が制限されるようになった金融や保
険会社が、東日本大震災後に東京都心のオフィスの空室増を受け、一足先に日本の不動産に注
目していた矢先でもあった。
経済紙「工商時報」は21日、経済・金融などを担当する管中閔・行政院政務委員(閣僚級)
の訪日後の談話として、日台の産業連携は円安の影響は受けない、との見方を伝えている。
管政務委員は、尖閣問題で日中間の緊張がたかまる中、日台が連携して中国市場を開拓する
重要性は増す、と指摘。円安が日本から台湾への投資に与える影響にも楽観を示した。
◆対中投資から分散の傾向
事実、経済部のまとめでも日本の対台湾投資は11年に441件、4億5000万ドル(約392億円)、
12年は619件、4億1400万ドル(約367億円)と順調に推移している。
台湾は10年、中国と自由貿易協定に相当する経済協力枠組み協定(ECFA)を締結。一部
品目は対中輸出関税がゼロとなるため、対中輸出拠点として台湾の存在感が増大した。
最近ではシチズンのグループ会社など、工作機械メーカーが台湾の工作機械会社への生産委
託に乗り出している。
順調な日台連携とは逆に、台湾からの対中投資は経済部によると、11年は575件、131億ドル
(1兆1610億円)、12年は454件、109億ドル(9663億円)と3年ぶりに減少に転じている。
中国政府が、最低賃金を年13%以上引き上げる方針を打ち出していることや、契約上のトラ
ブルの多発などから、対中投資の魅力が減少したとみられており、ベトナム、マレーシアなど
東南アジアへ分散する傾向も浮上。こうした流れは、日台の経済面での補完関係の一層の強
化にもつながっていきそうだ。 (よしむら・たけし 台北支局)