2011年3月11日に襲った東日本大震災による京電力福島第1原発事故を受け、当時、50ヵ国以上の国や地域が福島周辺地域の食品に対する輸入規制を緊急実施。
台湾も同年3月25日に福島、茨城、栃木、群馬、千葉の5県からすべての食品の輸入を禁止する措置を取る。
その後、各国が次第に規制を緩和し、また解除していく。
しかし、台湾の場合は2022年2月8日まで待たなければならなかった。
この日、台湾の蔡英文政権は5県産品に対する輸入停止措置を緩和する予定である旨を発表した。
2年後の2024年9月25日には、さらなる緩和として、5県の野生鳥獣肉、キノコ類及びコシアブラについて、放射性物質検査報告書及び産地証明書の添付を条件に輸入停止を解除するとともに、これら5県産以外の食品については放射性物質検査報告書の添付義務を撤廃した。
しかし、5県産の食品については産地証明書の添付を義務付けたままだった。
それからまた2年後の去る8月29日、周知のように産地証明書や放射性物質検査報告書証明書の提出を求めている現在の措置を廃止する条文の草案を公告し、年内にも規制を全廃する方針を公表した。
中央通信社は「5県から台湾に輸入され水際検査を受けた食品は14年間で延べ26万3000件余りに達したが、不合格率は0だった」と伝えている。
49ヵ国・地域は完全に制限を解除していることから、台湾が規制を全面廃止すれば50ヵ国・地域となり、残るは中国(香港・マカオを含む)、ロシア、韓国の3ヵ国となる。
詳しくは、農水省の「原発事故及びALPS処理水の海洋放出に伴う諸外国・地域の規制措置(2025年6月29日現在)」を参照していただきたい。
中国は、9都県(宮城、福島、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、長野)の全ての食品と飼料、また新潟の米を除く食品と飼料の輸入も禁止しており、10都県からの輸入を禁止。
ロシアは、47 都道府県の魚並びに甲殻類、軟体動物及びその他の水棲無脊椎動物の輸入を禁止。
韓国は、8県(青森、岩手、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、千葉)の全ての水産物の輸入を禁止。
この8県はまた、ほうれんそうなどの野菜類やきのこ類など、神奈川は茶、長野はきのこ類とこしあぶら、山梨と静岡はきのこ類、新潟はこしあぶらと細かく輸入を禁止している。
この3ヵ国は、科学的根拠というよりも政治的なものや国民感情など別の根拠がありそうにも思えるが、それはさて置き、科学的根拠に基づいて年内にも規制を全廃するようになる台湾にならい、一日でも早く輸入規制を緩和し全廃して欲しいものだ。
◆農林水産省: 原発事故及びALPS処理水の海洋放出に伴う諸外国・地域の規制措置(2025年6月29日現在) https://www.maff.go.jp/j/export/e_info/attach/pdf/hukushima_kakukokukensa-86.pdf
台湾、福島など5県産食品の輸入時の措置撤廃へ 早ければ年内にも【中央通信社:2025年9月1日】https://japan.focustaiwan.tw/society/202509010005
(台北中央社)台湾が日本から輸入する福島、茨城、栃木、群馬、千葉の5県産の食品について、現在義務付けられている証明書の提出などが、早ければ年内にも全て廃止される。
衛生福利部(保健省)が8月29日に関連措置を廃止する条文の草案を公告した。
台湾は2011年の東京電力福島第1原発事故を受け、5県産食品の輸入を禁止していたが、22年に大幅に規制を緩和。
24年9月には禁輸が継続されていたキノコ類なども解禁され、日本で流通する全ての食品の輸入が可能になったが、5県産の食品については引き続き放射性物質検査の報告書と産地証明書の提出、水際での全ロット検査を行っていた。
石崇良(せきすうりょう)衛生福利部長(保健相)は、世界では53カ国・地域が日本の食品に対する規制措置を採っていたものの、昨年までに台湾や中国(香港とマカオを含む)、韓国、ロシア以外の49カ国・地域は完全に制限を解除したと説明。
各国と足並みがそろうこととなる。
同部食品薬物管理署(食薬署)の統計によれば、5県から台湾に輸入され水際検査を受けた食品は14年間で延べ26万3000件余りに達したが、不合格率は0だった。
同署の姜至剛署長は、台湾から日本を訪れた旅客は昨年1年間で600万人以上で、台湾人の旅行先として最も人気であり、台湾の人々は日本の食品に慣れ親しんでいると言及。
条文の草案について、各国の規制の状況を参考にしたと述べた。
同部は草案に関するパブリックコメント(意見公募)を受け付けている。
期間は公告から60日間。
。
※この記事はメルマガ「日台共栄」のバックナンバーです。