台湾、WHOの年次総会参加が不可欠  謝 長廷(台北駐日経済文化代表処代表)

 世界保険機関(WHO)の年次総会(WHA)が5月18日と19日にオンラインのテレビ会議を開催する。WHAはWHOにおける最高意思決定機関で、蔡英文政権になってからの台湾は招待されていない。

 日本は米国とともに2002年から台湾のオブザーバー参加を支持してきた。武漢肺炎が起こった今年に入ってからは安倍総理も菅官房長官も「地理的空白を生じさせるべきではないと」何度も繰り返して主張してきた。米国、オーストラリア、英国、フランス、ドイツと6カ国連名で、テドロス事務局長宛てに台湾をWHAにオブザーバー参加を要請する書簡を送ってもいる。

 米国の連邦議員は5月8日、下院外交委員会のエリオット・エンゲル委員長(民主党)、マイケル・マッコール筆頭委員(共和党)、上院外交委員会のジム・リッシュ委員長(共和党)、ロバート・メネンデス筆頭委員(民主党)の4氏による連名で、世界約60ヵ国に台湾の参加支持を呼び掛ける書簡を送っている。

 台湾と国交をもつニカラグア、パラオ、エスワティニ、セントルシア、マーシャル諸島の5ヵ国も、はそれぞれテドロス事務局長に正式な書簡を送って、台湾をオブザーバーとしてWHAに招請するよう求めたと伝えられている。

 当の台湾も、WHAへの参加実現に向け、衛生福利部(保健省)が陳時中・衛生福利部長(厚労大臣に相当)がテドロス事務局長宛に書簡を送っている。

 また、陳時中部長は5月3日、毎日新聞に「地球規模の健康安全保障を 台湾がWHOの枠組みの外にあってはならない」という一文を寄稿している。

 さらに、駐日大使に相当する謝長廷・台北駐日経済文化代表処代表は、本日(5月11日)付の日本経済新聞に寄稿し、「情報の隠蔽や政治的差別こそが防疫の致命的な『漏れ穴』になる」と訴えている。下記にその全文をご紹介したい。

 WHOは台湾の参加は加盟国が決める問題だとして突っぱねているが、逃げている印象が強い。果たしてそうなのだろうか。WHO自身の考え方は表明できないとでも言うのだろうか。WHO自身が「台湾の参加は必要だ」と言えば、中国のご機嫌をそこねるからではないのか。WHAは来週に迫っている。WHO自身の考えを表明すべきだ。

—————————————————————————————–台湾、WHOの年次総会参加が不可欠 駐日代表が寄稿【日本経済新聞:2020年5月11日】

 駐日大使に相当する台北駐日経済文化代表処の謝長廷代表が、18日から開かれる世界保健機関(WHO)の年次総会への参加の意義について、日本経済新聞に寄稿した。

 新型コロナウイルスに対し世界各国が効果的な対策を模索している。国際感染症の防疫は一国の単独の力でできるものではない。台湾は米国やチェコ、豪州などと協力しワクチン開発や医療物資の生産協力を進めているが、完全な国際防疫網を構築するには台湾のWHO参加が不可欠である。

 台湾は2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)で84人の死者が出た教訓から国際感染症の防疫を極めて重視し、4月末の時点で新型コロナによる死者数は6人に抑え成果を上げている。

 台湾は昨年末、中国武漢でSARSのような肺炎の症例がいくつか発症したという情報を把握し、この時点で「人から人への感染」の可能性を前提に考え、検疫強化を開始した。自由、民主主義社会の防疫は強制手段がとれる独裁国家より効率が悪いという見方がある。だが台湾の事例は自由民主国家でも国民の協力と理解を得ながら十分に封じ込めることができることを証明している。

 国際防疫で最も重要なのは透明な情報の公開と共有であり、それが世界の団結の力になる。台湾は以前、WHOから情報がもらえないことで防疫の「漏れ穴」になることを恐れたが、情報の隠蔽や政治的差別こそが防疫の致命的な「漏れ穴」になることを強く訴えたい。世界が有意義な情報を共有するためにも今年のWHO年次総会には、台湾の参加が認められることを期待する。

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