コロナの経験 役立てたい  謝 長廷(台北駐日経済文化代表処代表)

【産経新聞:2020年11月14日】https://www.sankei.com/article/20201113-TST3OGSKBNOL3PEEFUP2RK2HIM/*本誌では11月13日のネット掲載原稿ではなく、14日の紙面掲載原稿をご紹介します。

 台湾の台北駐日経済文化代表処の謝長廷(しゃ・ちょうてい)代表(駐日大使に相当)が産経新聞に寄稿し、14日まで開催の世界保健機関(WHO)の年次総会に台湾が参加できなかったのは「不当」だと批判、台湾の参加は新型コロナウイルス対策で世界にとって有益だと訴えた。

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 今年は新型コロナウイルス感染症が世界の全ての人々の脅威となり、各国は防疫対策に追われた。台湾は2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)の経験と教訓を踏まえ、早い段階から効果的な対策を実施したことにより、10月末までの時点で感染者数を600人以下に抑え、市中感染はすでに半年近くゼ続いている。この台湾の経験を世界に役立てたい。

 台湾は厳格な水際検査と隔離、早期診断と患者の発見、マスク着用とソーシャルディスタンス(社会的距離)などに加え、実名制マスク管理システムによる販売在庫のリアルタイム確認、健康保険ビッグデータによる濃厚接触者や渡航歴の分析、健康状況の追跡など、デジタル技術を用いて感染拡散防止に取り組んだことも奏功し、早期の感染封じ込めに成功した。

 台湾では、官民一体でマスクなどの医療物資の増産に取り組み、台湾での供給量を確保できるようになった後、医療物資が切迫している国々に支援している。

 現時点で台湾による対外支援はマスク5400万枚、非接触型体温計3万5000本、防護服22万7000着、医療用ガウン60万着、ならびにウイルス検出キット、迅速検査試薬、医療用手袋などの医療用品を80カ国余りに提供している。

 台日間には助け合いの「善の循環」が形成されており、日本で緊急事態宣言が出されていた今年4月、台湾は日本へ200万枚のマスク、5万着の医療用ガウンを寄贈し、これらの支援物資は医療機関や特別支援学校などに届けられた。

 当代表処にも台湾からのマスクを受け取った子供たちからお礼のビデオメッセージが寄せられ、私も温かい気持ちになった。

 インド太平洋地域の地理的中心に位置している台湾は、防疫の分野においても積極的に貢献していくことを望んでいる。

 デジタル技術の医療への応用は台湾の得意分野であり、台湾が国際社会と防疫分野の協力を強化していくことは、今後世界が新型コロナ対策で団結して取り組む上でもメリットがあると確信している。

 しかし、中国の政治的圧力により、WHOは台湾を不当に排除しており、台湾が関連会議に完全な形で参加できず、各国とのリアルタイムの情報共有に支障が出ている。

 10月26日に石川県加賀市で開催された台日の地方議員らの交流イベント「日台交流サミット」では、台湾のWHO参加支持を含む「加賀宣言」が採択された。日本からの力強い声援に深く感謝している。

 今後も、日本各界や共通の理念を持つ国々の支持を得ながら、台湾は引き続きWHOへの参加を求めていくと同時に、「Taiwan Can Help(台湾は助けることができる)」の精神で国際社会に貢献していきたい。

※この記事はメルマガ「日台共栄」のバックナンバーです。


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