世界保険機関(WHO)の最高意思決定機関である年次総会(WHA)は、来る5月18日にオンラインで開催される。
米国は日本やオーストラリア、英国、フランス、ドイツと6カ国連名で、テドロス事務局長宛てに台湾をWHAにオブザーバー参加を要請する書簡を送付した。また、台湾と国交を持つ中米のホンジュラスなど複数国も4月29日、テドロス事務局長とのテレビ会議でWHAに台湾を招くよう求めたと伝えられている。
当の台湾も、衛生福利部が陳時中・衛生福利部長名義の書簡をテドロス事務局長宛てに送ったというが、5月3日時点で台湾への招請状は届いていないという。
下記の日本経済新聞は、WHOで法務を担当するスティーブン・ソロモン氏は4日の記者会見で、加盟国が決める問題だとして、WHO事務局には参加の可否を決める権限はないと述べたことを伝えている。以前、テドロス事務局長も同じ発言をしていた。
しかし、すでに台湾にはWHAにオブザーバー参加した実績がある。加えて、WHOはすでに今年2月11日にWHO本部で開いた緊急会合に、台湾からの専門家の参加を認めている。さらに、米国、日本、オーストラリア、英国、フランス、ドイツが要請しているのだ。中国が大口の資金提供国といっても、この6カ国の合計額はそれをはるかに上回っている。
WHOは憲章前文において「人種、宗教、政治信条や経済的・社会的条件によって差別されることなく、最高水準の健康に恵まれることは、あらゆる人々にとっての基本的人権のひとつ」と謳っている。
日本がこれまで主張してきたように、「政治的な立場において、『この地域は排除する』ということを行っていては、地域全体を含めた健康維持や感染の防止は難しい」(安倍晋三総理の1月30日の参議院予算委員会答弁)のである。
WHOのテドロス事務局長はWHO憲章を遵守し、「医療の地理的空白を生じさせないためには、台湾が年次総会にオブザーバーとして参加することは必要であり、妥当だと考える」旨を表明すべきだ。WHO事務局にはWHA参加の可否を決める権限はなくとも、台湾の参加が必要だという声明くらいは発表できるだろう。 —————————————————————————————–WHO総会、台湾参加は「加盟国が決める」【日本経済新聞:2020年5月5日】
【ジュネーブ=細川倫太郎】世界保健機関(WHO)で法務を担当するスティーブン・ソロモン氏は4日の記者会見で、18日から予定されているWHO総会への台湾の参加可否について「加盟国が決める問題だ」と指摘した。台湾の参加問題について、加盟2カ国から総会で議論するよう正式に提案があったことも明らかにした。
国連は台湾を加盟国と認めておらず、台湾はWHOにも加盟できていない。中国政府は台湾を国家として認めない「一つの中国」の原則を掲げ、台湾のWHO総会への参加に反対している。蔡英文(ツァイ・インウェン)政権発足後、台湾はオブザーバー参加も認められていない状況だ。
新型コロナウイルスの影響で、WHOは今年の総会をテレビ電話形式で開く。台湾は参加を目指す方針だが、ソロモン氏はWHO事務局には参加の可否を決める権限はないと述べた。米国や日本は、感染症対策に地理的空白を生じさせてはならないとして、オブザーバー参加を支持している。
トランプ米政権は、2019年12月31日に台湾がWHOに対し、新型コロナについて警告していたのに無視したと批判している。これに対し、WHOは台湾から届いたメールを公表した上で、中国湖北省武漢市で肺炎が報告されており、情報共有してほしいとの内容だったと反論。あくまで「問い合わせ」で、人から人への感染を警告したものではないと強調した。
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