双十国慶節は台湾の人々が挙って祝うナショナル・デーにはふさわしくない

双十国慶節の記念式典廃止を検討と陳水扁総統が遅すぎる表明!

 報道によれば、去る10日に台湾で開かれた双十国慶節の記念式典において、陳水扁総統
が「『国民党政権時代の遺物』として、来年以降の記念式典の廃止を検討する必要がある
と表明した」という。

 台湾の民主化を願う日本人としては、綱領に独立掲げる民進党の出身でその主席をもつ
とめた陳水扁総統が総統就任時から双十国慶節を祝ってきたのか、よく分からない。蒋介
石・蒋経国独裁政権下で台湾人が辛酸を舐めた記憶を失ったのかと訝しく思ってきた。

 あまりにも遅すぎる表明だ。双十国慶節はいわば「ナショナル・デー」である。国を挙
げてお祝いする建国記念日だが、果たして台湾にとってこの10月10日がそのような国民挙
ってお祝いできる日なのか。

 もし中国国民党時代に決別するに象徴的なこのような表明が就任早々に行われていたら
、陳政権の今のような体たらくはなかったかもしれない。世界は台湾が民主化、自立化へ
向かうなによりのメッセージとして受け取っていただろう。

 アメリカは独立記念日を、ドイツは東西ドイツ統一記念日を、そして日本は天皇誕生日
を「ナショナル・デー」としているが、中国政府や外務省内の反対を押し切って平成15年
(2003年)12月12日、台北の国賓飯店において天皇誕生日祝賀会レセプションを挙行した
。シンガポールやカナダ大使を歴任した内田勝久・交流協会台北事務所長(駐台湾大使に
相当)の英断による。中華人民共和国でも行われている天皇誕生日祝賀会を、台湾でも行
ったのである。その意味は自ずと明らかであろう。

 その経緯については、内田勝久大使の『大丈夫か、日台関係』に詳述しているので、そ
ちらをお読みいただきたいが、その後も毎年続けられ、台北事務所長が池田維氏に替わっ
ても続けられている。

 ナショナル・デーを祝うのは、国民挙ってでなければならない。双十国慶節が台湾にふ
さわしいその日だとは言えない。それ故、陳水扁総統の決断の遅さがもたらした混沌の責
任は決して小さくない。しかしながら、来年、双十国慶節が開かれなくなれば、それはそ
れでよい。台湾にとって世界にアピールできる自立化の一歩である。うやむやにされない
ことを願うばかりだ。下記に該当記事を紹介したい。
                    (メルマガ「日台共栄」編集長 柚原 正敬)


台湾総統、建国式典の廃止検討を表明
【10月11日付 読売新聞】

 【台北=石井利尚】台湾の陳水扁総統は10日、双十節(清朝を倒した辛亥革命記念日)
式典で演説し、「国民党政権時代の遺物」として、来年以降の記念式典の廃止を検討する
必要があると表明した。
 台湾では、蒋介石政権が大陸から移って以降、「中華民国」の建国を祝うための盛大な
式典が行われてきた。
 台湾出身で、独立志向が強い民進党の陳総統は政権掌握後、「中華民国」体制からの脱
却を目指し、諸改革を進めている。
 今年の式典では、陳総統退陣を求める野党政治家や支持者が会場内外でデモを起こし混
乱。「外国賓客の前で台湾のイメージが傷ついた」(総統府)こともあり、陳総統は式典
廃止の考えを強めたとみられる。国民党は反発している。


台湾、陳総統辞任求め12万人デモ・「建国記念日」大荒れ
【10月11日付 日経新聞】

 【台北=山田周平】台湾の台北市で10日、「建国記念日」に相当する双十節の記念式典
が開かれた。身辺で金銭スキャンダルが続く陳水扁総統の退陣を求める約12万4000人(警
察発表)の市民が会場の総統府前を包囲する形でデモ行進。会場内では、複数の野党政治
家が総統の演説時に退陣要求の横断幕を掲げ、警備陣らに制止される大荒れの式典となった。
 陳総統は演説の最後に「皆さんがそんなに嫌々参加する式典なら、来年から開催しない
ことを検討する」と怒気を込めて表明。参列した日米など海外からの代表者もデモ隊の間
を縫って会場を離れる事態となった。