【国民党名誉主席】中国大陸と台湾は「一国二地区」

【国民党名誉主席】中国大陸と台湾は「一国二地区」

       台湾の声

 中華人民共和国(中国)を訪問している台湾の呉伯雄・中国国民党名誉主席は3月22日に北京で胡錦濤・中国国家主席と会談し、「(台湾側の法律である)『両岸人民関係条例』によれば、両岸(中台)は同じ国であり、『一国二地区』の概念の法的基礎となるものである」と述べ、「両岸は同じ『一つの中国』に属する」「両岸は国と国の関係ではなく、特殊な関係である」などと強調した。

 これに関して、台湾行政院大陸委員会(陸委会)の頼幸媛・主任委員(対中担当大臣)は、「『一つの中国』は『中華民国』であり、その他の解釈はない」と述べ、陳冲・行政院長(首相)は「中華民国憲法追加条文第11条によると、中華民国は自由地区と大陸地区に分かれる。呉伯雄氏は憲法上の規定内容を改めて述べたに過ぎない」との見方を示した。また、総統府の范姜泰基・報道官は「両岸関係は中華民国台湾地区と中華民国大陸地区の関係を指すものであり、両者はいずれも中華民国に属している」と表明した。

 これに対して、野党の民主進歩党(民進党)の羅致政スポークスマンは「『一国二地区』の最も危険なところは、両岸を同じ国家と定義付けたことで、台湾の民意から完全にかけ離れている」と指摘。同党の林俊憲スポークスマンは、陸委会の頼幸媛・主任委員が「『一つの中国』は『中華民国』」と表明したことに対して「北京はそれを認めるのか?
呉伯雄は北京まで行って『一国二地区』と言ったが、その国はどの国を指すのか? 中華民国か? 北京側はそれに同意したのか?
(呉氏の発言は)自国民を騙すものであり、極めて無責任だ」と批判した。

 また、台湾団結連盟(台連)の黄昆輝主席は、「馬政権が両岸人民関係条例の『台湾地区と大陸地区』を根拠にするのは、鹿を馬だと言うようなものだ」と指摘し、両岸人民関係条例は出入国や司法管轄権などのルールを定めたもので李登輝総統が当時主張した「特殊な国と国の関係」を表したものだとの見方を示し、「馬英九は総統(大統領)から区長になっても構わないかもしれないが、台湾人は台湾区民にはならない」と批判した。

 そもそも中華民国憲法は中華人民共和国建国前の1946年に制定、翌47年に施行されたもので、当時は国共内戦で一度もまともに機能したことなく、中国国民党が1949年に台湾に逃れ、台湾に中華民国亡命政府を樹立した後も38年間にわたり戒厳令を敷いて事実上中華民国憲法を凍結してきた。民主化が進んだ李登輝総統の時代に、中華人民共和国の存在を認めてこなかった中国国民党政権が現実を踏まえ統治権を台湾に限定するために当時の時代状況の下で便宜的に定められたのが「両岸人民関係条例」である。(台湾の中華民国政権が主張する領土のうち、統治権が及ぶ領域を自由地区または台湾地区、統治権が及ばない領域を大陸地区とした)

 本来なら、民主化の進展とともに、より台湾に合った憲法へと改正または新憲法制定すべきであるが、馬政権は逆に現実からかけ離れた憲法のほうを重視している。中華民国大陸地区などは60年以上前から存在しないのであり、たとえば日本が「中華人民共和国」を「中国唯一の合法政府」と認めているように、中国が中華人民共和国を指すことは世界の常識である。台湾は「中華人民共和国とは別の国」であることを前提に、中華人民共和国の存在を認めた上で対等な国際関係を築いていくべきだ。