犯の邱晋●容疑者がようやく器物損壊の容疑で送検されたという。中央通信社が伝えている。
●=草冠に尹
記事では「インターネット上では、近日、八田像を再び壊そうと呼びかける投稿が確認されてい
る」とも伝え、未だに不穏な動きがあることを伝えている。
5月8日の八田技師墓前祭の当日、「捍衛中華道統文化工作隊(正統な中華文化を死守する作業
隊)」と名乗る団体がFacebook上で、八田技師の銅像を切断した李承龍の犯行直後の動画を公開
し、「この八田與一という日本人は、日本統治時代に嘉南平原の農民を搾取し、日本の天皇が進め
た植民地支配を助けた」などと書き、また「台湾独立に反対する、日本の奴隷どもを排除する」
「我々は正々堂々たる中国人だ。日本人に媚びることは断固拒否する。第2、第3の李承龍が現れる
ことを私たちは信じている」と書き込んでいるのが確認されていた。
また、当日は墓前祭がはじまる直前、反日団体のメンバー約40名が警察側と衝突する事態も起き
ていた。
頼清徳・台南市長は月刊「歴史街道」6月号のインタビューで、「八田さんは、今も昔も台南で
『恩人』として語り継がれています」と述べ、また「八田さんは日本人ですが、市長の立場とし
て、もはや我々と同じ『市民』であり、『家族』だと感じている」と述べている。
八田技師を台南市民や家族とさえ思う考え方は、第2、第3の李承龍が現れることを望む「正々
堂々たる中国人」の考え方とは真逆であり、多くの台湾の人々も頼市長と思いを共有しているようだ。
しかし、蒋介石が戦後、毛沢東に敗れて台湾に逃げ込み、白色テロの恐怖政治を背景に台湾を中
華民国として占領してきた残滓、つまり台湾版「戦後レジーム」がこういう場面に顔を出すのがい
まの台湾でもあるのだ。
日本も台湾も、憲法問題や歴史問題など「戦後レジーム」から脱却すべき問題をかかえている点
では実によく似ている。日本も台湾も、克服すべきは「戦後レジーム」であり、この八田技師を通
じた交流のように、姉妹都市や鉄道提携などで絆を深めつつ、台湾が台湾としての地位を確立でき
るようつとめるのが日本の責務でもある。
八田与一像を壊した元台北市議、送検
【中央通信社:2017年5月12日】
http://japan.cna.com.tw/news/asoc/201705120003.aspx
(台南 12日 中央社)台湾南部・台南市烏山頭ダムに設置されている日本統治時代の水利技師、
八田与一氏の銅像が破壊された事件で、地元警察は11日、犯行を認めた元台北市議会議員ら2名を
器物損壊の容疑で送検した。
八田氏の銅像は、烏山頭ダムやかんがい施設の建設に尽力した功績が称えられて設置されたも
の。先月中旬、頭部が切り取られているのが発見された。緊急に修復作業が進められ、八田氏の命
日であり、慰霊祭が行われた5月8日前には元どおりの状態に戻っている。
犯行に及んだ元台北市議会議員は、中国大陸と台湾の統一を主張する団体の一員。これまでにも
暴力行為を繰り返していた。
これとは別に、インターネット上では、近日、八田像を再び壊そうと呼びかける投稿が確認され
ている。警察は、法律に反する行為は許されないとして、ネットユーザーらに理性的になるよう呼
びかけている。
(楊思瑞/編集:塚越西穂)