儒教の呪縛による急速な少子化が中国経済を破壊する  黄 文雄(文明史家)

【黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」:2024年2月14日号】 https://www.mag2.com/m/0001617134*読みやすさを考慮し、小見出しは本誌編集部が付けたことをお断りします。

◆出生率低下で「鉄飯碗」の教師職が大量解雇へ

 台湾の「自由時報」によれば、香港の「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」は、中国の出生率が低下する中、2035年までに約190万人の教師が余ると予測する記事を掲載したとのことです。

中国で現在、急速な少子高齢化が進んでいることは、以前にもメルマガで紹介しました。

2022年の中国の出生率は1.09で、日本の1.26を下回り、上海では0.7%まで低下しています。

出生率は2を超えないと人口を維持できないとされており、要するに、中国では日本以上に早く人口減少へと向かっているわけです。

2017年以降、中国の新生児数は一直線に減少しており、2023年には前年より54万人も激減し、出生数は902万人でした。

かつては、教師は中国では食いっぱぐれのない職業とされてきました。

中国語ではそのことを「鉄飯碗」といいます。

割れない鉄製の碗のように安定しているという意味です。

そのため、不景気な時代でも求職者の人気が高い職業でした。

しかし、加速する少子化で教師が余り、今後10年で百数十万人が職を失うと予想されていて、もはや教師の職はもはや安泰ではないと見られています。

冒頭の記事によれば、中国教育省は、2021年に幼稚園に通う子どもの数も2003年以来初めて減少し、2022年にはさらに3.7%減少すると指摘しました。

2022年の小学生の総数も2013年以来初めて減少し、前年比47万8800人減の1億700万人となったとのこと。

生徒の数が減れば、職員も解雇せざるをえません。

とりわけ、現在中国は不動産バブルが崩壊し、不動産開発で財政の大部分を賄っていた地方政府は、財政難が非常に悪化しています。

すでに地方都市の中には、半年間も公務員に給料を支払えていないところが多数あると報じられています。

このような状況で、さらに子どもの数が減れば、大量の教師が解雇されることになるでしょう。

そもそも、中国は人口増加による経済発展が可能となる「人口ボーナス」から、人口減少により経済が衰退していく「人口オーナス」へと転換していたと見られており、今後も不況が深刻化していくことは、ほぼ確実視されています。

冒頭の「自由時報」によれば、湖南省教育庁は2023年11月、今後5〜10年間の出生率、都市化率、学齢児童数に基づいて教育資源をより適切に配分するよう求める通達を発表し、山東省と四川省の地方政府は2023年、教員供給を抑制するため、特定の大学で教育関連の専門職学位プログラムの提供を打ち切る計画を発表したとのこと。

中国全土の初等・中等学校の数は2003年以降減少しており、この傾向は2020年から2035年まで続くと見られています。

過去数十年間、中国の初等・中等学校は子どもたちで過密状態にあり、都市部では1クラスに50人もの生徒がいる学校もある一方、農村部ではほとんどの学校が30人前後。

北京師範大学の喬進中教授(教育学)が率いる研究グループの調査によると、クラスの人数がこのままだと、2035年までに小学校の教師が150万人、中学校の教師が37万人余るという試算が出ているそうです。

◆共産主義国の中国が保守的な思想へ傾倒

 以前のメルマガでは、中国では上野千鶴子氏の著書がベストセラーになるなど、フェミニズムが流行しており、非婚化が進んだことで、さらなる少子化を招くのではないかと目されているとお伝えしました。

長い間、男尊女卑思想の儒教の影響下にあったこともあり、その反動としてフェミニズムが流行したのではないかということです。

メルマガでは、習近平政権が、女性的なイケメン男性のテレビ出演を禁じたり、「男は男らしく」と、現代の時代に反した、マッチョな教育を展開していることも紹介しました。

その理由として、ひとつには国防の観点で、雄々しい中国人男性を育成するという目的、そしてもうひとつには、「家庭を築き、妻と子供を守るのが男の役目」と、古き価値観を復活させることで、少子化を食い止めようとしているのではないか、と推測しました。

本来はリベラルである共産主義国で、保守的な思想へと傾倒するというのも、なかなかシュールな感があります。

◆「東方礼儀の国」「小中華」韓国で女性徴兵論が加速する理由

 そして、いま、少子化と国防の問題で、国論を二分している国があります。

それが韓国です。

韓国は、みずからを「東方礼儀の国」「小中華」と呼び、中国以上に儒教を遵奉してきた歴史があります。

それだけに、強固な男尊女卑思想が残っており、そのため、近年はフェミニズムが大ブームになっていました。

こちらもメルマガで紹介しましたが、2015年には1.24だった出生率が、7年連続で過去最低を更新し、2022年には0.78まで下落したのです。

このため、韓国はいずれ軍隊を維持できなくなると言われています。

良く知られているように、韓国は男性の徴兵があります。

現在の軍隊を維持するには毎年約22万2000人の新規徴兵が必要だそうですが、徴兵対象となる20歳の男性人口は、年々減少しており、2020年の33万4000人から2025年には23万6000人に減少し、2040年には13万人に激減すると目されているのです。

このため、現在の韓国では、女性の徴兵が議論の的となっています。

以前、男性は兵役に行くかわりに、除隊後の就職が有利になる「軍加算点制度」というものがありました。

しかしこれが「性差別だ」とされて廃止されたことで、今度は「男性だけが兵役に行くのは不平等だ」となったことも、女性の徴兵論を加速させているようです。

このような報道に触れるにつれ思うのは、やはり中国・韓国は、儒教の害毒に大きな影響を受けていたことで、その反動が非常に大きく出ているのではないか、ということです。

日本も儒教の影響はありましたが、中国や韓国ほど強くありませんでした。

中韓はいまだに儒教の呪いに縛られているわけです。

※この記事はメルマガ「日台共栄」のバックナンバーです。


投稿日

カテゴリー:

投稿者: