日本と韓国のみビザ発給停止したことで自ら首を締めた中国 黄 文雄(文明史家)

【黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」:2023年1月11日】https://www.mag2.com/m/0001617134*読みやすさを考慮し、小見出しは本誌編集部が付けたことをお断りします。

◆日本と韓国のみビザ発給停止という報復措置

 またもやチャイナ・リスクを思い知らされる事態となりました。中国政府は、日本と韓国の入国時の水際対策強化に対し、ビザ発給を停止するという報復措置に出ました。

 中国で感染爆発し、多くの死者が出ていることは周知のことです。しかし、中国政府はPCR検査を行わず、また、死者については新型コロナに感染して呼吸不全または肺炎で死亡した人のみをコロナの死者としてカウントしており、基礎疾患の悪化によって亡くなった人は含めていません。

 そのため、現在でも1日の死者は3〜5人しか出ていないことになっているのです。イギリスの医師会誌「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル」では、現在の中国の死者数を1日あたり1万1000人ほどと推定しています。

 さすがにWHOも、中国のコロナ死者の定義が「狭すぎる」と批判しています。WHOのテドロス事務局長は、「中国に対し、入院者数と死者数に関するより迅速で定期的かつ信頼できるデータ、およびより包括的でリアルタイムのウイルス配列の公表を続き求める」と表明しましたが、中国はこれに応じていません。

 それは当然で、習近平政権はコロナ対策に「成功」したと発表している手前、ゼロコロナ政策を緩和させたことで感染爆発が起こり、死者数が激増したとなると、政府のコロナ対策が間違っていたことになるからです。

 だから感染者数も死者数も少なく発表しているわけです。確信犯ですから、これを改めることはありません。それで、「中国では感染者も死者も少ないのに、日本や韓国は中国人への水際対策を強化している」と難癖をつけ、ビザ発給停止という報復手段に出たわけです。

 もちろん、国内向けに「中国に対して不当な規制を行っている日本や韓国に報復した」とアピールする目的もあるでしょう。

 すべては習近平のコロナ対策を正当化するためのものであり、本メルマガでも述べたように、自国の矛盾を海外に向けるという中国のいつものやり口に他なりません。

◆自縄自縛に陥る報復措置

 なお、中国のビザ発給停止ですが、韓国に対しては短期ビザの発給停止ですが、日本については通常のビザの発給停止であり、日本に対する措置のほうが厳しい内容になっています。

 韓国政府は、中国本土からの入国者を対象に、2月末まで入国の前後にPCR検査を義務づけるほか、1月末までは短期ビザの発給も制限するなどの水際措置をとっています。

 一方日本は1月8日から、中国本土からの直行便で入国する人には72時間以内の陰性証明の提出を求め、12日からはマカオからの直行便で入国する人にも72時間以内に受けた検査の陰性証明の提出を求めるとともに、入国時にPCR検査等などを実施することになっています。

 こうした違いが、日本への報復措置のほうが厳しくなっている理由とされていますが、 欧米でも中国からの渡航者に陰性証明を義務付けており、日韓のみに対してビザ発給停止するのは、日本と韓国なら叩いても大丈夫だという思惑からでしょう。一方、欧米とは対立を高めたくないため、報復措置には出ていないわけです。

 ところが、欧州航空安全機関(EASA)と欧州疾病対策予防センター(ECDC)は1月2日、共同声明を発表し、中国からEUに到着するすべての乗客に対し、出国前のスクリーニングの証明を提出し、機内で新型コロナウイルス検査を受けるよう勧告しました。

 これが実現すれば、欧州でも日本と同等の水際対策強化ということになり、公平さの観点からすれば、中国は欧州にもビザ発給停止を行わなくてはなりません。少なくとも、中国政府が正しい感染者数や死者数を発表しなければ、他国は入国審査を厳格化せざるをえませんが、それが不可能なのは前述したとおりです。

 そうなると、各国は入国審査を厳しくせざるを得ませんから、中国もどんどん報復措置を出さなくてはならなくなります。結局、中国の今回の日韓に対する報復措置は、自分で自分の首を締める行為にほかならないのです。

 各国にとって、もっとも怖いのは中国で変異株が発生し、再びパンデミックが世界に拡散することです。現在の中国は新型コロナのゲノム解析を禁止しているため、変異株の存在を見つけることができません。各国の検査強化は、そうした変異株を見つける意味もあるのです。

 いずれにせよ、中国という自己中心主義の中華思想国家の特異性が、新型コロナを世界に拡散させるのみならず、他国との政治的な軋轢を生んでいるのです。このような国と友好関係を結ぶのは不可能に近いのです。ましてやビジネスをこの国と行うのはリスクが大きすぎます。

 昨年9月、経団連は李克強首相とオンライン対話を開催し、日本側は両国間の交流や意思疎通が重要だと強調しました。中国とのビジネスを重視する経済界のなかには、中国のご機嫌取りや中国寄りの発言をする経営者も少なくありません。日本では媚中派の政治家も少なくありません。

 しかし、そのような弱腰が、かえって中国を増長させてしまうのです。韓国に対する嫌がらせも、宗主国意識からです。そして、いくら迎合したところで、友好関係を築けるどころか、むしろ迎合すればするほど弱みを突いてくるのが中国なのです。

 日本人は改めてそのことを理解すべきです。

※この記事はメルマガ「日台共栄」のバックナンバーです。


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