年の統一地方選挙での国民党惨敗やら台南市議会の議長選挙買収事件など一連の騒ぎを指してい
る。少し大げさと思ったが、2月に入って相次ぐ「事件」はまさに友人の言う通り「乱七八槽」
(滅茶苦茶)だ。馬英九政権のレームダック化は予想されていたことだが、ここまでとは…。
◆司法の意地? ヒマワリ起訴
2月11日の台湾主要紙の一面トップは2つに分かれた。中国時報と蘋果日報は太陽花(ヒマワリ)
学生運動の一連の事件のリーダー118人の起訴。自由時報と聨合報は大陸委員会(陸委会)の主任
委員(閣僚)、王郁琦の辞任表明と前副主任委員の張顕耀の不起訴。ともに司法関連の大きな
ニュースだ。
ヒマワリでは昨年3月18日、中国と結んだサービス貿易協定に反対して学生たちが立法院(国
会)に乱入、24日間占拠した。立法院長(国会議長)王金平の調停で学生は占拠を解いた。総統・
馬英九は何度も協定の早期審議を呼びかけたが、いまだに審議も、発効もできない。中国は切歯扼
腕だろう。中国寄りといわれる中国時報は5人のリーダーに強盗や侵略者を意味する「寇」の字を
付けて報じた。
運動は脱政党の市民を巻き込んだ新しい政治潮流を生んだともいえ、その流れが年末の地方選挙
で国民党を惨敗させた。それでも違法は違法と起訴。ここは司法の意地をみせたともいえるが、騒
ぎで多くの学生たちが怪我をしたのになぜ過剰警備の警察官を罰しないか、学生だけになく一般市
民も不満。占拠一周年の3月18日には新たな活動を計画、政権与党の国民党には逆風が強くなるの
は必死だ。
◆通敵叛国がなぜ不起訴?
ヒマワリには罪は罪とした司法だが、陸委会の事件では誰もが「?」を付ける処分だ。副主任委
員の張は昨年8月、「通敵叛国」、つまりスパイ容疑の解任なのに不起訴、王はそれを不満として
辞任。王・張不仲説もある。それでは子供の喧嘩だ。王は閣僚。それがいくらなんでも仲が悪いか
らといって「外患罪」まで持ち出して解任するなんてことはないだろう。
実際、王は捜査に全面協力、張は中国との交渉で台湾側のボトムラインまで教えていたとしてい
た。それが不起訴。本来なら復職が筋だろうが、それはない。張は解任の際、涙で身の潔白を訴え
たが、命の危険があることも匂わせ、真相は「遺書に書いた」としかいわなかった。
そこから張の背後には米国との説も出た。中国と常に接触していた張から米国は中国情報を得よ
うとしていた? しかし不起訴ですべては闇に。不起訴に合わせるように日本の交流協会に相当す
る窓口機関、米国在台湾協会(AIT)の新任執行理事が訪台している。
◆司法判断揺れて保釈金高騰
昨年来、偽食用油の問題でマスコミから滅多打ちにされている頂新製油前董事長・魏應充の身柄
拘束では司法の判断は右に左に揺れた。事件発覚直後は、責任者である魏がなぜ拘束されないの
か、世論は騒いだ。一つの推測は「魏は、総統選の時、馬英九の後援会副会長だったから、馬が魏
をかばっている」だった。その後、馬への二億元の政治献金問題も発覚した。
世論の批判に馬が指示したのか、司法当局の独自判断なのか、事件発覚から10日ほどして魏を身
柄拘束したが、2ヵ月後の年末、台北法院は保釈金1000万元で保釈。すると「金持ちは入牢せず、
金のない者が入獄する」と批判され、以後、再三の身柄拘束、保釈を繰り返し、結局、現金の保釈
金合計は6億1000万元(約23億円)まで釣り上がった。
これは過去最高の東森集団前総裁・王令麒の3億5000万元を大きく上回る新記録だ。しかも書面
の保証金10億元がプラスされ、合計すれば16億1000万元(約58億円)。ここまで来ると、魏にはな
んの義理もないが、魏が可哀想にみえてくる。司法は世論を見ながら保釈金を上げた?
高雄の監獄で起きた人質事件では暴力団幹部の犯人は「仮病の陳水扁の自宅療養を認めたが、獄
内には陳よりもっと重病の受刑者がいるのに出られない」など司法の不公平を訴えて自決したが、
思わず頷いてしまう。馬政権が唱えてきた司法改革の結果がこの惨状だ。矯正署長がメディアの前
で自決した犯人の訴えを代読している姿は今の無政府状態を如実に表している。
【「透視台湾」(EconoTaiwan 速報掲載)2月号より】