今回の武漢肺炎(COVID-19)問題で、本誌は「なぜ武漢だったのか」をテーマに何度かお伝えしてきた。
産経新聞は、香港紙の「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」が「最初の感染者は、湖北省で昨年11月17日に発症した」「最初の感染者とみられるのは湖北省の55歳で、11月には少なくとも39〜79歳の男女9人が感染。感染者は12月31日に266人、1月1日には381人に達した」と報じていると伝えている。下記にその記事を紹介したい。
ところが、中国は武漢の海鮮市場が発生地であることは当初から認めているものの、最近では「発生源は中国とは限らない」と言いはじめ、武漢肺炎(COVID-19)を持ち込んだのは米軍ではないのかと踏み込んでいる。産経新聞の伝えるところによれば、その発言の根拠は中国のSNSに載った「昨年10月に武漢で開かれた各国の軍人が参加したスポーツの国際競技大会で、米国からの参加者が新型コロナウイルスに感染していたという憶測」だと伝えている。
また、習近平・国家主席も16日発行の共産党理論誌「求是」に、武漢肺炎の「病原がどこから来て、どこに向かったのか明らかにしなければいけない」とする論文を寄稿したという。
しかし、中国における最初の感染者が「湖北省で昨年11月17日に発症した」とするなら、産経新聞が指摘するように「初動の遅れや情報公開の不透明さを裏付けるデータ」となり、これを不都合とした中国側が発生源を米国に転嫁することで「初動の遅れや情報公開の不透明さ」を隠蔽する感染拡大の責任回避策ともみられ、また、あわよくば米国との経済戦争における敗北挽回の材料にしたいとする底意も否定できない。
米国は、発生源を中国としたくない中国側の「見え透いた、世界規模の情報操作」だと反発している。
—————————————————————————————–中国の情報隠蔽裏付け、香港紙「最初の患者は11月」【産経新聞:2020年3月14日】
【北京=西見由章】香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP、電子版)は13日、現段階で確認されている新型コロナウイルスの最初の感染者は、湖北省で昨年11月17日に発症したと伝えた。中国政府の非公表資料に基づくとしている。中国政府は最初の感染者が12月8日に発症したと説明しており、報道が事実であれば、当局側の初動の遅れや情報公開の不透明さを裏付けるデータといえそうだ。
中国当局は12月31日、「原因不明のウイルス性肺炎」を27人が発症していると初公表。専門家が「人から人」への感染を認めたのは1月20日だった。
一方、SCMPによると、最初の感染者とみられるのは湖北省の55歳で、11月には少なくとも39〜79歳の男女9人が感染。感染者は12月31日に266人、1月1日には381人に達したという。感染者数には後からさかのぼって確認した人も含まれるもようだ。ただ、昨年末には「人から人」感染を裏付ける爆発的な増加が起きていたことを示すデータといえる。
実際に武漢では当時、多くの医師が強力な感染力を持つウイルスへの警戒を呼びかけていた。中国誌・人物(電子版)が11日に公表した記事によると、武漢中心病院の艾芬医師は12月30日、肺炎の原因を「重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルス」と判断した検査報告書をみて危機感を抱き、その写真を知人の医師に送信。医師8人がグループチャットに転送し、情報が拡散した。このうちの一人が2月7日に死去した同病院の眼科医、李文亮氏(33)だった。
警察当局は「デマを流した」として李氏ら8人を処分。艾氏も病院幹部から強い叱責を受け、肺炎については自分の夫にすら何も話すなと口止めされた。「まるで武漢市の発展を私一人が破壊しているように」指弾されたという。
この記事は公表直後に削除された。同様に削除された財新(電子版)の記事によると、武漢中心病院に送られた報告書は北京の民間機関が遺伝子情報を分析したものだった。検査の一部に誤りがあり、新型コロナウイルスに似た遺伝子構造を持つSARSと判断されたという。
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