バイデン政権が台湾へ13度目の武器供与 直後に「米中戦略競争特別委員会」が訪台

バイデン政権は2月21日、台湾側の求めに応じ、総額7500万米ドル(約113億円)の武器供与を国務省が承認して議会に通知したと米国防安全保障協力局が発表した。

このプロジェクトには、軍の作戦情報の共有に用いるデータリンクというシステムの性能向上を目的としたクロス・ドメイン・シナジー(CDS)、全地球測位システム(GPS)受信機、通信機器などの費用や、エンジニアリングおよび技術サポートサービスを提供するため、おおよそ200人のアメリカの政府関係者と200人のアメリカの請負業者代表者の台湾への渡航費用などが含まれるという。

今回の武器供与はバイデン政権になって13回目となり、12回目が昨年の12月15日だったから総統選挙後では初めてのことになる。

折しも発表直後の2月22日から、米国連邦議会の下院で「米中戦略競争特別委員会」(米国と中国共産党間の戦略的競争に関する特別委員会)の委員長で、対中強硬派として知られるマイク・ギャラガー下院議員が率いる5議員による超党派の訪問団が24日まで訪台している。

同委員会メンバーによる訪台は昨年1月の発足以来初めてのことで、ギャラガー委員長一行は到着した22日に、蔡英文総統、次期総統の頼清徳・副総統と蕭美琴・次期副総統、韓國瑜・立法院長などと会談したという。

NHKは「ギャラガー氏は『習近平氏と中国共産党が愚かな決定をして台湾を侵攻しようとしても失敗するだろう。

あなたの総統就任後もアメリカは台湾とともにある』と応じ、頼氏の総統就任後もアメリカ議会は台湾を支持し続けると強調」したと伝え、韓國瑜・立法院長との非公開による会談では、立法院によればとして「台湾海峡情勢のほか、立法院の役割や与野党の攻防などについて、突っ込んだ意見交換を行った」と報じている。

ギャラガー委員長は韓國瑜・立法院長にも中国の台湾侵攻は失敗するという見解を伝えたのかは不明だが、親中派の韓院長にとっては米国の大物議員、それも対中強硬派の議員との会談は初めてだったはずだから、相当の緊張を強いられたことは想像に難くない。

いずれにしても、バイデン政権からの13回目の武器供与とあいまって、頼清徳・次期総統への「総統就任後もアメリカは台湾とともにある」ギャラガー委員長のメッセージは、台湾にとって心強いメッセージと受け止められたに違いない。


バイデン政権13度目の武器売却 総統府:台湾は引き続き自国防衛の決意を示していく【台湾国際放送:2024年2月22日】https://jp.rti.org.tw/news/view/id/98823

 アメリカ政府は東部時間2月21日、総額7,500万米ドルとなる台湾への武器売却案「リンク16システムアップグレード事前計画」について、議会への通知手続きを行ったと発表しました。

これについて、総統府の林聿禅・報道官は22日、総統府はアメリカが「台湾関係法」と「六つの保証」に基づいて台湾に防御兵器を提供し、台湾の安全保障に対する約束を守ることに感謝すると述べました。

また林・報道官は、今回の武器売却はバイデン政権で13度目となる。

アメリカが台湾の防衛の需要と、台湾とアメリカのゆるぎないパートナーシップを重視していることのあらわれである。

この武器売却によりデータリンクがアップグレードされ、既存の共同作戦の有効性が向上し、台湾の防衛能力が強化されると述べました。

林・報道官は、台湾は民主主義を守る最前線にあり、自国を防衛する決意を示し続け、国防の自主性を強化し、民主主義と自由の価値を守ると同時に、台湾とアメリカの緊密な安全保障パートナーシップを深化させ、理念を同じくする国々と協力して、ルールに基づいた国際秩序を守り、インド太平洋地域の平和、安定、繁栄と発展を維持していくと述べました。

国防部は、今回の武器売却案では、アメリカ側に国軍の指揮管理と情報収集システムのデータリンクのレベルアップについて、全体的な計画を立て、一部のグレードアップを先に完成するよう要請、それによって既存の共同作戦の有効性を向上させ、軍事の相互運用性を確立し、共同戦闘力を発揮できるようにすると指摘。

国防部は、台湾の防衛力強化を支援したアメリカ政府に感謝の意を表明しました。

外交部は、アメリカ政府から正式に通知を受け取り、これを大いに歓迎するとともに、アメリカ政府が近年、「台湾関係法」と「六つの保証」に基づき台湾への武器売却を常態化する政策を継続的に実施していることに感謝する。

アメリカ政府が台湾の防衛の需要を非常に重視しており、我が国の防衛能力と抑止力の強化に貢献していると述べました。

外交部はまた、中国の軍事的圧力の増大とグレーゾーンでの脅威に直面するなか、台湾は引き続き自衛能力と非対称戦力を向上させ、自らの力で国土、人民の自由や生活方式、安全を守り、同時にルールに基づいて国際秩序を共同で守り、台湾海峡とインド太平洋地域の平和、安定、繁栄を維持するために、台湾とアメリカの緊密な安全保障パートナーシップを引き続き深めていくと述べました。

アメリカ国防安全保障協力局(DSCA)はプレスリリースを発行し、アメリカの今回の武器売却は、プロジェクトにはクロス・ドメイン・シナジー(CDS)、全地球測位システム(GPS)受信機、通信機器、需要分析、エンジニアリング、技術サービスと兵站のプロジェクト支援などが含まれ、総額7,500万米ドルとなると指摘。

この武器売却では、エンジニアリングおよび技術サポートサービスを提供するため、およそ200人のアメリカの政府関係者と200人のアメリカの請負業者代表者が台湾に渡航する必要があるとされています。

(編集:岩口敬子/王淑卿/本村大資)


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