◆テドロス事務局長が突如、台湾から脅迫や人種差別攻撃を受けていると非難
米国のトランプ大統領は4月7日に行った記者会見で、世界保健機関(WHO)に対し「極めて中国寄りだ」と非難し「拠出金を一時保留することも考えている」と強く牽制した。
これに対し、WHOのテドロス事務局長は4月8日の記者会見で「中国に限らず各国と協力して対応してきた。ウイルスを政治問題化するのはやめてほしい」などと弁明したが、突如として台湾に言及し「3カ月以上にわたり脅迫や人種差別攻撃を受けており、攻撃は台湾から来ている」と切り出し、なんと台湾をレイシスト(人種差別主義者)呼ばわりしたのだ。それも「会見では『攻撃』の具体的な内容や手段は明らかにしなかった」(4月9日付「日本経済新聞」)というのだ。
これが世界機関のトップを務める者の発言かと耳を疑った。下記のNHKニュースではテドロス事務局長が台湾に言及した場面を動画で確認できる。中立性を要求される国際機関のトップが根拠も示さず、いきなり台湾の名前を挙げて罵倒してきたのだ。前代未聞の出来事と言っていいだろう。
・NHK:WHO事務局長「台湾から人種的な中傷」に台湾が反論[4月11日] https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200411/k10012381581000.html?utm_int=news-ranking_access_list-items_020
台湾がこのテドロス事務局長の発言に猛反発し、厳重抗議したのは当然のことだ。
蔡英文総統は9日、フェイスブックで「台湾は如何なる形式の差別に対しても断固として反対し、我々台湾は長期に渡り国際社会より除外されてきた国として、誰よりもその差別と孤立の苦しみを理解している。……台湾人は決して肌の色や言語で他人を差別せず、全ての人類は我々の家族と同様であると考えている。……仮に、世界保健機関が外部の政治力の操作によって台湾を除外したとしても、我々台湾はそれでも国際社会の一員としてその責任を担い、己の意志によってマスク等の医療物資を、重度な疫病で困っている国々の医療従事者にこれを提供する」(4月10日付「台湾の声」)とつづった。
トランプ大統領は4月10日の記者会見で、WHOへの対応について「来週、WHOについて詳細を話す」と述べている。
◆中国が安倍総理の台湾への感謝リツイートに抗議
一方、日本が緊急事態宣言を発出した4月7日、ツイッターに日本語と英語で「日本の皆さんへ」と題し「手を携えてこの闘いに勝ちましょう! 地震も、台風も、台日の協力で乗り越えてきました。だからこそ、勝ってまた会いましょう! We can win again! We will meet again!」と激励した。
すると翌8日(23時52分)には安倍総理がツイッターに日本語と中国語(繁体字)で「台湾の皆さんへ」と題し「温かい声援に心より感謝いたします。ウイルスとの闘いに打ち勝ち、この試練を共に乗り越えていきましょう。日本と台湾、一緒に頑張りましょう」と感謝の意をリツイートした。日台間では地震や台風などの災害では何度も繰り返されている麗しい交流だ。
・安倍晋三総理ツイッター[4月8日] https://twitter.com/AbeShinzo
ところが、驚いたことに、日台間のツイッターでの交流に「中国外務省が北京の日本大使館に抗議した」(4月11日付「読売新聞」)というのだ。
これを伝えた読売新聞は「『一つの中国』原則を掲げる中国は、感染対策を巡り日台間で連帯感が強まることを警戒しているとみられる」とのみ記し、なぜ中国が日本へ抗議してきたのかその理由は明らかになっていないようだ。
この中国の日本への抗議もまた、テドロス事務局長の台湾レイシスト発言と同じように、根拠がさっぱりわからないのだ。
テドロス事務局長の台湾発言は4月8日、中国の日本への抗議も4月8日と見られ、WHOは台湾を名指しで非難し、中国は台湾ではなく日本へ抗議するという構図になっている。なんとも奇怪な現象だが、いずれも根拠は明らかになっていない。
テドロス事務局長の会見日と中国の抗議はたまたま日にちが重なったのかもしれないが、テドロス発言よりよく分からないのが中国の抗議だ。日台間ではこれまで地震や台風などの災害では何度も繰り返されている事柄にもかかわらず、中国はなぜ今回だけ抗議してきたのだろう。
なんとも不可思議で奇怪な現象なのだ。テドロス発言の根拠と真意が明らかにされ、中国が抗議した理由についても明らかになることを期待しつつ、今後の経過を見守りたい。
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