台湾協会(AIT)は建設中の新施設に警備の米海兵隊を常駐させる予定で、他国の大使
館と同格の施設となる」とあった。
確認してみると、米国在台協会(AIT)は2009年から台北市内湖に新しいオフィスを
建設中で、やはり海兵隊宿舎が含まれている。ここに米国海兵隊が常駐するのは間違いな
さそうだ。米国は世界各国にある大使館に海兵隊を派遣しており、毎日が伝えるように
「他国の大使館と同格」となり、AIT事務所の格上げとなる。
建設中の米国在台湾協会(AIT)を見に行った人によれば、新オフィスの規模はかな
り大きく、100メートル四方はあるという。いったいここを何人の海兵隊員で警備しようと
しているのか、その規模が気になる。
台湾の報道によれば、アメリカは1979年に台湾と断交後、海兵隊を台湾から引き揚げて
いる。しかし、2005年からは軍服を着ていない武官が駐在するようになっていたという。
アメリカが海兵隊を常駐させると、台湾は互恵原則により、駐米代表処に憲兵を派遣する
ことになるという。
アメリカの「アジア回帰」は既定の路線だが、これでますます本腰を入れてきているこ
とが判明した。問われているのは、日米同盟を結ぶ日本の姿勢だ。日本はアメリカととも
に台湾を護る気があるのか、と。下記にご参考まで毎日新聞の記事を紹介したい。
台湾は米中融和を望んでいる 林 正義
【毎日新聞:2012年2月4日「Viewpoint」】
◇Cheng−Yi Lin(台湾・中央研究院欧米研究所研究員)
米国が安全保障の軸足をアジア太平洋地域に移す目的は、海洋進出を加速する中国に対
応するためだ。中国との関係改善を進める台湾は米国の動きの影響を受けている。
米国は台湾と外交関係がないが、対台湾窓口機関の米国在台湾協会(AIT)は建設中
の新施設に警備の米海兵隊を常駐させる予定で、他国の大使館と同格の施設となる。
ブルネイにも新しい米大使館が建設された。米国がこの地域を重視している表れだ。こ
うした動きをフィリピンやベトナムは歓迎するが、台湾は難しい問題も抱えている。
中国、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイ、台湾は南シナ海の一部または全
部の領有権を主張している。中国は南シナ海を囲んだ九段線(南シナ海のほぼ全域を覆う9
本の破線)の内側を中国の領土であり、海域だと主張し、米国は反対している。
そもそも中華民国(台湾)が11段線を引き、それを中華人民共和国(中国)が2本減らし
て引き継いだ。中台は南シナ海の領有権を巡る基本的な立場を同じくする。米国は台湾の
主張にも反対だが、台湾と外交関係がないため公式に反対する必要がない。
南シナ海を巡り、中国は台湾に具体的な協力を求めているが、台湾の馬英九政権は中国
との協力は現時点ではあり得ないと明言している。しかし、中台間の学術協力は既に動き
出している。
中国・海南省の「中国南シナ海研究院」と台湾の「政治大学国際関係研究センター」は
01年から共同研究を始めた。中国側は中国外務省が賛助する研究機関で100%「官」だ。台
湾側は政府から予算は出ているが、必ずしも「官」ではなく、政府を代表していない。
両機関は昨年、共同研究論文を発表した。中国側は「(南シナ海を巡る中台の)立場が
一致した」と宣伝した。台湾側は「政府間協力はしないが、学術機関が討論するのは悪い
ことでない」との考えだ。だが、米国は学術協力の重要性を拡大解釈し、「(中台の)政
府系機関が共同研究するとは大変だ」と騒いだ。
台湾は米国のアジア太平洋への回帰に反対はしないが、公に支持することもない。米国
と中国の両方から恨みを買いたくないため、立場を鮮明にしたくはないのだ。馬政権は米
中が平和的な方法で紛争を解決することを希望している。【聞き手・大谷麻由美】
◇中台の南シナ海領有権の主張
旧日本軍は第二次世界大戦後に南沙諸島の領有権を放棄。中華民国(台湾)は歴史的な
経緯から領有権を主張し、1946年に海軍を南シナ海の島しょに派遣し、命名した。内政部
(内務省)は「南海諸島位置図」を作製し、南シナ海の東沙、西沙、中沙、南沙の各諸島
に印をつけ、周囲に11本の破線(十一段線)を引いて領有権を主張した。49年に成立した
中華人民共和国(中国)も9本の破線(九段線)にして同じ範囲を採用した。