NHKの解説委員でアメリカ・東南アジア・国際テロを担当する高橋祐介氏が、台湾の世界保険機関(WHO)年次総会への参加について「政治的な駆け引きよりも人命と安全を最優先に、台湾を排除しないよう求めたい」と解説している。
今般の武漢肺炎が流行りはじめた2月下旬、NHKは「NEWS WEB」の特設サイト「新型コロナウイルス」のメニューバーに台湾を中国と併記し「中国・台湾の状況」と表記していた。中国の主張する「一つの中国」原則をしっかり守っているように見えた。
ところが、台湾の外交部や全日本台湾連合会などがNHKに「不当な表記」だとして改善を求めた。台湾の選挙分析で定評のある東京外語大准教授の小笠原欣幸氏も不適切な表記との見方を示していた。
本会も、1月20日に掲載が始まった記事のすべて検索し、約300本の記事のうち台湾は9本にすぎず、多くが中国の記事であるにもかかわらず台湾を中国と併記して掲示することは不適切であるとして、NHKに修正を求めた。
するとNHKは抗議の翌日、メニューバーから「中国・台湾の状況」を削除し、また「世界では」も削除し、新たに「世界の状況」というメニューバーを設けるという早業で応じたことがあった。
このNHKが、台湾のWHOの年次総会への参加問題に対し「台湾を排除しないよう求めたい」と表明したのだ。驚いた。しかし、一解説委員の見解と言えど、これはNHKとしての見解として捉えていいだろう。変われば変わるものだが、まっとうに変わるなら大いに評価したい。
—————————————————————————————–「WHO総会 台湾オブザーバー参加は?」(ここに注目!)高橋祐介 解説委員【NHK「解説委員室 解説アーカイブス」:2020年5月11日】https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/300/428870.html
WHO=世界保健機関が来週開く年次総会に、台湾がオブザーバーの資格で参加を認められるかどうかに注目が集まっています。?橋解説委員です。
Q1)けさのイラストはテレビ会議?
A1)世界194の国と地域が加盟するWHOは、来週18日から「世界保健総会」と呼ばれる年次会合をテレビ会議の形式で開きます。主な議題はもちろん新型コロナウイルス対策です。台湾は正式な加盟を認められていませんが、「感染対策に空白を作ってはならない」として、オブザーバーの資格で参加を目指しています。ところが、WHOは、台湾の参加は「加盟国が決める問題だ」との理由で、今のところ会合に招待していません。
Q2)WHOのテドロス事務局長が困り切った表情なのはなぜですか?
A2)中国が、いわゆる「ひとつの中国」の原則を楯に反対しているからです。現に台湾は、中国との関係が良好だった2009年から8年連続でオブザーバー参加を認められましたが、現在の蔡英文総統が就任した翌年の2017年以降、会合から締め出されてきました。
そんな現状を今こそ見直して、テドロス事務局長が台湾を招待するよう求めているのが、アメリカのトランプ大統領です。トランプ大統領は「今のWHOはあまりに中国寄りだ」として、資金拠出の凍結を表明するなど、圧力を強めています。日本も台湾のオブザーバー参加を支持する立場です。ただ、加盟国の過半数から支持を得られるかどうか、まだわかりません。
Q3)どうしてですか?
A3)一部の国々は中国の意向を忖度し、あるいは対立や嫌がらせを恐れているのかも知れません。しかし、この会合で台湾に発言の場があれば、国際社会はその知見から学ぶ貴重な機会を得るでしょう。台湾は中国・武漢で感染者が見つかって以来いち早く対策を徹底し、被害や影響を比較的軽微なものにくい止めているからです。
そもそもWHOは、人種や宗教、政治信条などで差別されることなく、「すべての人々の健康増進」を目的に設立された組織です。政治的な駆け引きよりも人命と安全を最優先に、台湾を排除しないよう求めたいと思います。
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