【黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」:2022年7月13日】https://www.mag2.com/m/0001617134*読みやすさを考慮し、小見出しは本誌編集部が付けたことをお断りします。
◆国民から親しまれていた安倍晋三元総理の非業の死
2022年7月8日、参議院議員選挙の期間中、奈良県で遊説していた安倍晋三元首相が凶弾に倒れました。多くの人の願いも虚しく、帰らぬ人となってしまいました。改めてご冥福をお祈り申し上げます。
増上寺で告別式が行われた後に荼毘に付されましたが、沿道では非常に多くの方が集まり、安倍さんとのお別れを惜しみました。増上寺や自民党本部へは、献花に訪れる人が列をなし、いかに安倍元首相が国民から親しまれていたのか、そのことに改めて気付かされました。
私も安倍元首相とはずいぶん以前から交流があり、これまで出版記念会で祝辞をいただいたこともあります。安倍さんは、「政治家である自分が言いにくいことを、黄さんが言ってくださっている」とおっしゃってくれましたが、じつに中国の本質を理解している稀有な政治家だったと思います。
そのことは、首相時代に中国包囲網である「自由で開かれたインド太平洋」戦略を提唱し、実現させたことからも明らかでしょう。
また、日本にとっての台湾の重要性も力説されていました。首相退任後、「台湾有事は日本有事だ」と発言し、日台関係の強化を訴えていました。こうした態度は中国から猛批判されましたが、圧力に屈しない芯の太さは、まさに日本と台湾にとって、かけがえのない存在でした。
◆台湾「安倍晋三友の会」設立矢先の悲報
日本には日台交流を促進するために設立された「日本李登輝友の会」という団体があります。私も副会長として名を連ねていますが、言うまでもなくこの会の名称は、日本への理解が深く、松尾芭蕉の『奥の細道』を愛し、日台運命共同体理念を主張されてきた李登輝元総統に敬愛の意を表して付けられたものです。
そして台湾でも、この「日本李登輝友の会」にならって、知日派の元政治家、企業経営者、学者らが中心となり、日台交流を促進するための「安倍晋三友の会」が設立されようとしていました。すでに安倍元首相からも了承を得ていたそうです。その矢先の悲報でした。
李登輝元総統と安倍元首相は親交が深く、李登輝氏の訪日ビザ取得に尽力した政治家でもありました。李登輝氏の次女である李安[女尼]さんも、李登輝氏と安倍氏は「師弟関係であり、友人関係であり、父子のような関係だった」と述べ、安倍氏の死を悼んでいます。
2020年7月に李登輝氏が逝去されてから、安倍元首相は新型コロナ終息後、墓参のために訪台したいという意欲を示していたそうですが、それもかなわないこととなってしまいました。
◆台湾は最大の理解者を失った
台湾にとって、安倍元首相ほど親しみがある、また、重要な政治家はいませんでした。2011年に台湾独立建国聯盟主席の黄昭堂氏が逝去した際、安倍元首相は「黄昭堂先生に誓う」という弔辞を送っています。
そこで安倍元首相は、「私は先生の友人として、また台湾の友人として、今後、台湾の人たちが世界の孤児ではなく、世界の国々から全体として権利を勝ち取ることができるように全力を尽くして参ります」と決意を述べられていました。
安倍元首相がその言葉を最後まで守り続けてくださったことは、ここ数年の言動が物語っているでしょう。中国から台湾産パイナップルが輸入禁止となった際には、日本人に対してSNSで積極的に宣伝してくださいました。
台湾では、安倍氏の逝去が伝わると、台湾のランドマークにもなっている高層ビル「台北101」に「台湾の永遠の友」というメッセージを映し、日本語の「ありがとう」という言葉を掲げて感謝と哀悼の意を表しました。
蔡英文総統も追悼メッセージを出すとともに、台湾全土の政府機関や公立学校で半旗を掲げて「もっとも深い哀悼と感謝」を表明することを発表しました。加えて、台北市に設置された追悼のメッセージボードは、市民からの寄せ書きでいっぱいになったそうです。
7月11日には、台湾から頼清徳副総統が弔問のために訪日しました。台湾と日本が国交を断ってから、最高位の訪日になります。
台湾でもいかに衝撃と悲しみが大きいか、理解していただけると思います。それと同時に、台湾最大の理解者を失ったことの影響の大きさについての懸念も強まっています。
7月13日、大安の国策研究院は「安倍首相と日本政局」という座談会を開催し、今後の日本の対中政策の変化などについて論じました。そのなかで、参院選の自民党大勝は安倍路線の継承を求める国民の声であり、岸田政権もその方向へ進むだろうと予測しました。
安倍元首相の国際社会への影響力の大きさは、台湾のみならず、各国からの続々の弔意からもわかります。アメリカのホワイトハウスは半旗を掲げ、ブラジルやインドは国として喪に服すことを表明、世界中から安倍元首相の功績を称えるメッセージが送られたことは、メディアでもさかんに報じられています。
日本人にとってはもちろん、台湾人にとっても、失ったものはあまりにも大きい。
しかし、われわれは前を向いて進まなくてはなりません。
ご葬儀で安倍昭恵さんは「政治家としてやり残したことはたくさんあったと思うが、本人なりの春夏秋冬を過ごし種をいっぱいまいた。それが芽吹くことでしょう」とおっしゃったそうです。
◆「安倍精神は台湾人の心の中に生き続ける」
現在、台湾各地では安倍氏への哀悼の意を示す輪が広がっています。高雄市の副市長・史哲氏は、「抽象高雄」という芸術展覧会の挨拶で、「安倍精神は台湾人の心の中に生き続ける」と述べました。
台湾で「日本精神」といえば、勤勉、誠実、真面目を意味する言葉ですが、これに加えて台湾人の心には、安倍元首相から教わった、日台の絆を大事にする「安倍精神」があり、これを守り育んでいくと宣言したのです。
安倍氏の精神は日本人にも台湾人にも、しっかり受け継がれ、いずれ大きな花を咲かせると、私は確信しています。
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